第45話

 薄暗い中に浮かび上がる一つになりかけている二人のシルエットを瞬きをせず見つめる。


 鼓動は激しくなるが頭の中は意外に冷静だった。冷静なまま、今まで店の中で出会った知りうる限りの女性客と女性スタッフを思い返してみたが、彼と特別親しげにしていた女は記憶の中ではいなかった。


 私が知らない客だろうか、それとも知人か。私が頭をフル回転させている最中、目の前の二人のシルエットが完全に一つになった。黒くて丸い塊はその形のまま動くことなく道路の片隅で私に見つめられながら何かを確かめ合うかのように存在していた。


 全て一瞬のことだったと思う。しかし時の流れから逸れてしまった私には異様に長く長く感じられた。

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