人助け天使さんは今日も忙しい

夜月 朔

①私は忙しいですっ!

 様々な種族が住む<地上世界>の上にある天国。そのさらに上。そんな場所にこの世界はあります。


 私が住む世界は<神の世界>。美しい神々が住む世界なのです。神様はそれぞれの仕事を一生懸命、一心不乱に頑張っています!


 天使である私も頑張らなくっちゃ!


 ◇◆◇◆◇


 遠い昔。世界を司る<世界神>を治める<管理者>はこう言うのだった。


「世界はいつも危機が訪れるので大変ですね。」


 これは<管理者>の戯れ言であったが、これを聞いた<恋愛神>はを考えた。


 ……私が世界を救う存在を作れば、<管理者>様に気付いてもらえるのでは!?


 この<恋愛神>は<管理者>に一目惚れをしていた。やる気に満ち溢れた<恋愛神>は、同じ上級神である<世界神>に提案した。


「やあ、<世界神>。今日も世界は忙しいか?」


「あぁ、<恋愛神>か。勿論、世界はいつでも忙しい。」


「そう言うだろうと思ったよ。そこで提案なんだが、を作ってはどうだろうか?」


「それは亜神あじんを創り出すということか?」


「正解だ。人間に任せるのでは心許ないが、亜神あじんであれば良いのではないか?お前の仕事も少しは楽になると思うが。」


「良い案だな。では、早速創り出そうか。」


 そう言うと<世界神>は、目の前にある虚空に手を翳した。瞬く間に周囲に散らばっている光は集まり、一つの身体を創った。


「……素晴らしい。」


 この光景に<恋愛神>は見蕩れてしまった。光の集合体はやがて光を収めた。


「お前は<天使>だ。世界を救う勇者を救いなさい。」


「……分かりました。<世界神>様。」


 この<天使>には、世界を繋ぐ扉が置かれた部屋に住まわせた。


「勇者に危機が訪れた世界はドアノブが赤く光る。そうなったらお前が勇者を助けてやりなさい。」


「分かりました。」


 それを見届けた<恋愛神>は意気揚々と<管理者>の元へ向かった。


「<管理者>様!」


「お前は……<恋愛神>か。」


「はい!……事後報告ですが、<管理者>様が普段より世界にいつも危機が降り掛かって大変だ、と仰っておりましたので、私は亜神を生み出し、その神に<世界神>を救わせる仕事をさせることにしました。」


「ほぅ……素晴らしい事だ。だが、その報告には虚偽があるだろう?」


「……へ?」


 この<管理者>の質問に<恋愛神>は顔を真っ青に変化させる。<管理者>は神々を治める存在。どの神が何をしたかなど当然のように把握しているのだ。勿論<恋愛神>が嘘をついたことも。


「お前は切磋琢磨働いて良い神だったがな……。虚偽を吐くとは。もう良い。呆れたわ。」


 勿論<恋愛神>が<管理者>に一目惚れしている事も<管理者>は知っているが、<管理者>と神は結ばれない存在だ。そして、罪を犯した神は裁かなくてはならない。


 ◇◆◇◆◇


 そんなことは露ほども知らず。天使は切磋琢磨と働いているのだった。

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