殺夢-サツム-
山下咲穂
第1話 夢
痛みが走った。
暗い部屋に私は1人ベッドに横たわっていた。
刺された。
右脇腹に鋭く長いナイフが何者かによって突き刺された。見えている、刺されている自分の姿が。変な夢を見ている様だ。
これは夢これは夢、私は頭の中でそう唱えていた。黒いパーカーのフードを被り黒縁メガネにマスク姿、細身であるが力が強く性別が特定できなかった。起き上がりたかったけれどすぐには起きれない。横たわっている私の後ろ姿と何者かの私を傷付けられる姿を見るだけだった。何者かは私の腕を強く掴み脇腹から長いナイフを抜いてはそれをまた勢い良く振りかざした。
でもそこで目が覚めた
「っ…」
夢だから傷など残っている訳ない。ただ夢の中の何者かに刺された部分が激しく傷んだ。
「えっ……」
刺された跡は無いが最後に何者かに掴まれた腕が濃い痣になっていた。
嘘でしょ、
というのが最初の思い。だって夢だし。痛みは今まで見てきたから反動として残るかもしれない、でも掴まれた痣なんて。
私は混乱しながらも腕を摩った。掴まれた部分は熱く今まで触れていたかの様だった。
AM7:00
あの夢を見てから2ヶ月が経とうとしていた。あれ以来あんな不思議な夢を見ることは無かった。というよりも夢というもの自体を見ていない。腕の痣もあれから3日目には消えていた。誰かに言おうとも信じてもらえるはずないと、私は誰にもこの事を話していない。
今日早く起きたのは私の職場が変わるからだ。
2ヶ月前は職を探していた。ずっと決まらなかったのにあの夢を見てから、その日に面接した職に採用され今日から務めることとなっていた。悪夢はいいことが起きる前触れとも言うし何か不思議な気持ちだけど出来るだけポジティブに考えるようにした。
「本日からお世話になります。筒井春香と申します。宜しくお願いします。」
挨拶は簡単に済ませ上司に言われた通り事務的内容の仕事をしばらくやっていた。その姿をじっと見つめる男の存在に私はまだ気付いていなかった。
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