第3話 ジャンキーホワイト見参ッ! 聖夜に響く、因縁のジングル・ベル!

アバンタイトル

 クリスマスの近づく師走の夜空。

 年末進行の名の元に、24ブラックの活動がいよいよ激しくなる季節、オフクローは忙しい。

 それでも慣れたもので、毎晩確実に幹部たちを仕留めては、多くの構成員を帰路という名の正義の道に解き放つ日々が毎夜続いていた。


 しかし、この晩。

 予期せぬ邪魔の介入により、オフクローは敵を追い詰め損ねることとなった。


「『帰れない』? それはあなたの常識よ! 仕事に幸せを見出している人たちを、邪魔なんてさせやしない!」

「君はっ!? 悪いが、彼らを見過ごすわけにはいかない! 誰だか知らないが、そこをどいてもらおうか!」


 黒いツインテールを夜風になびかせ、小柄な仮面の女性は――左腕を彼の行く手を遮るように目一杯伸ばして、名乗りをあげた。

 彼女を侮り、走り抜けようとしていたオフクローがたたらを踏む。


「我が名は、ジャンキーホワイト! 縁あって24に助太刀いたす!!」


 掲げた右手の五つの指に、いつ現れたのか揚げたてのオニオンリングが鋭く回転して攻撃準備を始めている。 思わぬ反撃に、オフクローは息を飲む!


「……ッ!? やめろ! 君が誰かは知らないが、私は組織員でない人と争うつもりはない!」

「問答無用! オニオン・チャクラム!!」

「くっ……!」


 鋭い回転!

 間一髪で避け、飛びすさったオフクローの三角巾に切れ目と油染みができる!


「仕方ない! 信条には反するが、多少の痛みは我慢してもらう! 食らえ、ニック・ジャガー!!」


 基本にして無敵の必殺技だが――


「ふん。こんなものっ!」


 ジャンキーホワイトは、片手で難なく受け流した。


「何だとっ!?」


 ニック・ジャガーが一切通用しない!


 オフクローが呆然としたその隙に、24の構成員たちは、国道を越え、視界の向こうへ逃げ去ってしまう。事態に気づいた時にはもう手遅れだった。オフクローは白木の菜箸を持ったまま、最後のあがきに手を伸ばす。


「ま、待て!」

「もう無駄よ! 技の破れたあなたでは追いつけやしない! あっははははは!!」


 勝ち誇った笑い声が冬の夜空にこだまする。

 連日連戦の疲れに膝を折るオフクローをあざ笑うかのように彼女は高く後方に飛び上がり、街灯の上に片足で立つ。緑のリボンが灯に一瞬ひらめいた。


「くっ……!? 君は何者なんだ! なぜ私の技が効かない! どうして邪魔をするんだ!」

「質問の多い男は、嫌われる……」


 冬空に消えゆく数瞬前。くすりと。悪魔の笑みを赤い唇が形作った。


「誰もがおふくろの味にやられると思ったら大間違いよ。次もせいぜい負ける覚悟をしておくことね、オフクロー」

「ジャンキーホワイト……いったい何者なんだ……」


 初の敗北にただただ驚くばかりのオフクローは、彼女の去った天を仰いで立ち尽くしていた。

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