36帖 白い奇蹟
『今は昔、広く
ミョンファと手をつなぎ、意気揚々と歩き出したんわええけど、いったい公園って何処やろ?
「ミョンファ、公園ってどこ?」
「えっと、この道をまっすぐ東に行って!」
「わかった。こっちでええよね」
「うん」
「それで、そこは何て言う公園なん?」
「
「そっか」
確かガイドブックの地図には載ってたけど、特に何も無かったな。ほんまに普通の人民が行く公園やな。
しばらく歩いて行くと
交差点の向こう側には、学校帰りかな、女子高生3人組がこっちを見てる。
するとその内の一人が、手を振ってきた。
「ミョンファ、あの子らは友達か。手を振ってるで」
と指差すと、ミョンファもあの女子高生たちに手を振った。
3人組はこっちを見てキャッキャと騒いでる。
信号が青になったんで、その子たちが待ってる所に向かって歩く。
ミョンファはその子たちの所へ走って行く。久しぶりに会うたんか飛び跳ねる様にして喜んでる。僕はその様子をじっと見てた。
話が一段落して、ミョンファはその子たちと別れて僕の方へ寄って来る。別れ際にミョンファはその子たちから、
「
とか、
「
と言われてる。何を言われてたかは分からんけど、ミョンファは嬉しそうや。ただ僕の方を向いた時は、顔は真っ赤やった。
「ミョンファの友達?」
「そう、
「楽しそうやったなぁ」
「うん、久しぶりに会いました」
「最後に『頑張れっ』て言うてたけど、その前は何を言われてたん?」
「えーと、それは……、秘密です」
「なんやまた秘密かいな。多いなあ」
「えへへ。でも悪いことと違うから、気にしないでください」
「そっかぁ。じゃあミョンファを信じとく」
「おおきに」
それから更に歩いて行くと左手に池が見えてくる。その池の奥には小高い丘がある。結構緑があって、静かでいい雰囲気。
やっと公園に着いたようや。
通りに面した入口から入って、北の方へ歩いて行く。木々が多いんで、暑さが多少和らいだ。
公園に入って500メートルぐらい進んだやろか、丘の頂きの
ぐるっと見渡しても特に何かあるわけでもなく、大小合わせて10個ほどの池が見えるだけや。
北にある一番大きい池には手漕ぎボートが2艘浮かんでるんが見えた。
「あっ、
「手漕ぎボートやな。漕げるでー。乗りに行こか」
「うん、乗りたい。シィェンタイ、乗せて」
「ええよ」
僕らは池に向かって走りながら丘を下った。
僕が通っていた高校は毎年、創立記念日に琵琶湖から
ボート乗り場のおじさん人民に1時間分の5元を払い、まず僕がボートに乗り込んむ。そしてミョンファの手を取り、ボートに導く。ミョンファは怖がってキャッキャ言いながら乗り込んだ。
座って落ち着いたところで、僕はオールで漕ぎ始める。初めはゆっくりで、徐々にスピードを上げていくとミョンファが歓声をあげた。
「すごいね、上手やね。風がめっちゃ気持ちいいよ」
「もっとスピード出せるで!」
力強く漕ぐ。ミョンファは風を浴びながら、気持ちよさそうにしてる。髪の毛が風に
ミョンファは気持ちええかも知れんけど、僕は結構辛かったわ。そやけどミョンファの笑顔を見ていると疲れも吹っ飛ぶ。
池の真ん中ぐらいまで来たら、漕ぐのを止めて慣性に任せる。
「ふーう、しんどかった」
「お疲れ様。漕ぐのめっちゃ上手やね」
「そやろ、おおきに」
そう言うと、僕は冗談でボートの縁を持って揺らしてみる。
キャっ!
と言うて慌てたミョンファの顔は面白かった。
「もうー、やめてよ」
「ごめんごめん」
「でも面白かった」
「もう1回やろか」
「それは駄目。もし池に落ちたらどうするのよ」
「ミョンファは泳げへんの?」
「私は泳げません!」
「そっか、じゃあボートの上では僕の言うことを聞いてもらおうか」
「えー、そんなのずるい」
「あはは、うそうそ」
「もう、嘘はあかんよ。あっ、シィェンタイ。あそこまで行って」
ミョンファが指差す方へ漕ぎ出す。その後もミョンファのリクエストに応える。
決して綺麗な水やなかったけど水中に微かに見える魚を追っかけてとか、水鳥のとこへ行ってとか、小島の周りを一周してとか、池のあらゆる場所へ行った。
かなり無理難題もあったけど、ミョンファが白い歯を輝かせて素敵な笑顔を見せてくれるんやったらと思て頑張ってしもた。お陰で背中の筋肉はかなり限界にきてる。
それに、キャッキャとはしゃぐ度に短めのスカートの裾からミョンファの白くて柔らかそうな太ももの奥がチラっと見える。
それがたまらなく刺激的で、僕の疲れを癒してくれてた。
つづく
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