その36 せらませら


 検索結果……中古車


 中古車販売の広告がヒット。どうやらマセラティというイタリアの車メーカーがあるようです。

 説明は特に要りませんね。『中古』と言われると印象が悪いですが、『リユース』なんて呼んであげるとカッコよく聞こえます。意見をオピニオンと言うのと同じです。言葉のイメージって大切ですね。


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 A案 中古UFO

 社会人になって初ボーナスを貰った私は、近所の中古車屋に来ていた。

 実家に居た頃は家の車を使わせてもらっていたけど、やっぱり『マイカー』という響きは憧れる。

「えっ。コレ……」

 売り場で一台一台ああでもないこうでもないと悩んでいた私の足が、ある一台の前で止まった。

「良いでしょう? こちら外車ですよ!」

 ニコニコと笑う店員さん。彼が紹介している“車”は銀色の鍋のフタのような……有り体に言うとUFOのように見える。外車は外車でも地球の外ですか。

「あの……コレゆーふぉ……」

「く・る・ま! ここは中古車屋なんですから、置いてある商品は車ですよ!」

「そ、そうですよね……」

 UFOっぽい外車25万円。それはちょうど予算内だったわけで……。


 B案 中古者

 私は中古だ。物心つく前に連れ子からの離婚で、戸籍上の親との血縁はない。処女は恋人でもない相手に捧げた。大学は中退して会社からは派遣切り。ついでに最近バツイチにもなった。

 色んなはじめてを最悪な形で失って、出来上がったのは買い手もつかないオンボロ中古者ちゅうこしゃ

 そんな私に残っている唯一のはじめて。それは“死”だ。最後のはじめてだから、これだけは大切にしてあげたい。

 最高の“はじめて”を求めた私の、最期のストーリー。


 C案 中古車の助手席

 俺には霊感がある。簡単に言うと。彼らは別に全員が血みどろでうらめしやーってわけでもなくて、大半は結構普通の人間みたいだったりする。しかもそこかしこでのんびりやってやがるんだ。

 そして先日中古車を買ったんだが、これにも一人憑いていた。まったく……事故車両を売るなよな。

 そいつの話によるとこうだ。旅のために車を買ったは良いが、病に倒れて結局運転できなかった。家族の生活のアテにしてほしくて車を売ったものの、どうにも未練が残ってこのザマ……と。

 しゃーねーな……俺も別に旅は嫌いじゃないんだ。幸い助手席は空いてる。気ままな1.5人旅と行こうや。



 以上、三本です。

 幽霊の存在はありえると思っていますが、認めたくはありません。……怖いですから。

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