その3 まとすくに

 検索結果……髪をすく


 元は髪を櫛でといて整えることですが、現代では髪のボリュームを減らすって意味で使われることが多いですよね。


_____________________________________



 A案 恋結い

 遊女である『ねね』は、髪結いの男に恋をした。

 彼の優しい手、客とは違う温かい声、櫛を通されるたびにねねの恋慕は熱く燃え上がる。

 しかし自分は遊女だ。もしこの思いを伝えても、彼は困ってしまうだろう。

 今日も支度部屋では悲しそうな声がひとつ。

 「主さん、今日もわっちをすいておくれなんし――」


 B案 アフロで雪だるま

 朝起きたら、俺の友人のマイケル(本名:田中健二)のアフロが宇宙まで飛び出していた。

 いやな、俺もびっくりはしてるんだ。確かに昨日俺の彼女の未来も入れて三人で飲んで散々酔っぱらい、道端で買った怪しい育毛剤をマイケルのアフロ頭に塗りたくって「これで明日起きたらアフロ倍になってんべ!」とか言って笑ったよ。

 倍とかいうレベルじゃねえ! やべえよ……テレビで「毛髪に酷似した隕石衝突か!?」なんて言ってるよ……。

 ……アレ? 未来は!? 一緒に寝てただろ!? まさか……。

 俺はバリカンを手に取り、まだ目を覚まさないマイケルのアフロに乗り込んだ。

 アフロをすいて旅する現代ファンタジー。


 C案 俺は一休さんじゃねえ!

 俺は有名スタイリストKENJI。今まで男女問わず、何人ものお客様を新しい自分に変えてきた俺だが、今日はピンチに直面している。

 本日のお客様は少し強面のナイスミドル。俺はいつものように「今日はどうしますか?」と尋ねた。

「髪をすいてください」

 ……いやお前スキンヘッドじゃーん!?

 あっ! お客様にお前とか言っちゃダメだね! だから店の外にいる“若い衆”的な人たち動かないで! お願いします!

 ……これはミスったら海に沈む。コンクリに詰められて生きたまま海に沈む。

 考えろッ……俺のスタイリスト人生よ、今こそ我がトークスキルに宿れ!

「もみあげはどうなさいますか?」

「長めに残してください」

……いやおま、お客様スキンヘッドじゃないですかー!



 以上、三本です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る