いくつかのはなし
武田修一
怪異に巻き込まれる男 -1-
動画サイトを漁っていると、急にスマホに着信があった。こんな夜も遅い時間にかけてくるということは、イタズラか緊急事態の連絡だろう。
表示は非通知だったので、イタズラの線が濃厚になった。
そのまま放置していたら、スマホは震えるのをやめて、静かになる。いつも通り動画サイトを巡回し、寝た。
寝ている時にも、着信はなかった。
朝まで快適に寝た僕は、だらだらと二度寝をしている。ほんとはそろそろ動いた方がいいのに、休日という二文字が僕をだらけさせるのだ。布団の中でうだうだと惰眠をむさぼる。なんて幸せな時間なんだろう。
ぴぴぴぴぴ!
水を差すように、スマホが鳴る。
「ふざけんなよ……」
布団から手を伸ばし、スマホを手に取るが、昨日と違い、番号が通知されていた。でも。登録されていない番号だ。出るか迷って、スマホをタップした。
「もしもし」
「もしもし、わたしメリーさん」
すぐさま通話を終了し、番号を着信拒否に設定する。スマホを放り投げて、もう一度寝た。
◇◇◇
不審なメリーさん電話から数日経過していた。
帰っていると、泣いている女の子を見つけた。女の子はずっと泣いて、座り込んでしまっている。これをスルーしても、声をかけても、批判はあっただろう。それなら、どちらを選んでも一緒だ。声をかけた。
「どうした?お母さんはいないのか?」
「おかあさん?……いないよ」
「えっ、じゃあお父さんは?」
「おとうさん?……お前だよ!!」
「童貞だよ!!」
恐ろしい形相でこちらを見上げてきた女の子に、瞬間的に叫んだ。
女の子はすっと真顔になり、「すみません、間違えました。」と言ってどこかへ去っていく。僕の心に傷を残したまま。
帰って泣いた。
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