単発もの(一番新しい作品はここの最下部です)

優しくない男

 俺には嫌いなものが多い。その幾つかを羅列してみる。


 相合傘、記念日、親切、愛する人


 およそ好ましいはずのものが特に嫌いだ。多分生まれて来

た時に、母の腹の中に全て忘れてきたのだろう。

 その分、母は凄く愛情の溢れた優しい母だった。


 相合傘、あれはダメだ。どうしても俺の肩が濡れてしまう。


 記念日、あれもダメだ。その日だけが特別になってしまう。


 親切、これだってダメだ。相手が俺に感謝してしまう。


 愛する人、これは最も酷い。もしも俺が先に死んでしまっ

たら…… そう考えると切なすぎる。


 まったく世の中は優しすぎる。

 俺くらい優しくない方が丁度いい。

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