見えない糸を引き寄せて

カゲトモ

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「そりゃぁまぁ、それなりにはね」

「ふふ、嘘でしょう? 随分おモテになったのでは?」

「いやいや、そんなことはないよ」

「何人女性を泣かせて来たんですか?」

「ふふふ、気持ちに答えられない子は何人もいたけどね」

 照れもせずさらりと言うところはさすが常盤さんだ。よ、色男。俺も一度くらいはそんなこと言ってみたいねぇ。まぁ無理だけど。

 窓から常盤さんの姿が見えていたのになかなか入ってこないから、何してたのか訊いたら『そこでナンパされちゃってね』と言ったのが会話の始まり。ハンサムでダンディだからモテるのは仕方ない。

「羨ましいですね。いくつになってもモテると言うのは」

「何を言うんだい、花菱君。君だってモテるだろうに」

 いやいや、あんたが何言ってんだい、こんな三十路に向かって。

「とんでもない。モテるのはシェイカーくらいですよ。仕事が恋人なので」

「もったいないなぁ。花菱君がモテないなんて、世の中の女性は何を見ているんだろうね」

「ふふふ、そう言って下さるのは常盤さんくらいですよ」

「私がもうちょっと若かったらお願いしていたのになぁ」

「ははは」

 おいおい、冗談に取られないからやめて。若いとかの問題じゃないから。

「これでもね、若い頃は恋とか愛とか興味が無かったんだよ」

「おや、そうなんですか。意外です」

「意外かい?」

 なんか無意識に恋愛スイッチをオンにし回ってるって感じのイメージだから。昔から女性の視線とか、恋愛とか意識して生きてそうなのに。

「心外だな。私はこれでも一途なんだよ」

「え」

「その反応。酷い男だね、花菱君は」

「すみません、意外過ぎて」

 年齢を重ねたから落ち着いただけかと思ってた。

「優しくしてくれなきゃ許さないよ」

「何を優しくするんですか何を」

「言わせるのかい?」

 うるせぇ。今すぐニヤニヤした顔をやめろ。

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