三種の神器

 数千年後の未来。かつてニホンという国があった地域で、考古学者の一団が発掘調査を行っていた。

「教授、出ました!」

 調査隊員の一人が、隊長である教授を呼んだ。

「〝三種の神器じんぎ〟です!」

「何!?」

 その言葉に、呼ばれた教授だけでなく他の調査隊員も、作業の手を止めて駆けつけた。

 深く掘られた穴の底、茶色い土の中から、錆びた金属と思しき物体が姿を現している。それを見つめる人々の顔には、発見の喜びではなく、当惑の色が浮かんでいた。

「また、〝三種の神器〟か……」

「いったい、これでいくつ目だ?」

 隊員たちは、小声でひそひそと会話を交わしている。

 遺物を発見した隊員が、思い切ったように教授に尋ねた。

「教授。〝三種の神器〟というのは、ニホンのエンペラー一族に代々伝わる宝物なんですよね?」

「うむ」

「そんな宝物が、こんなにいくつもいくつも出土するのはおかしくないですか?」

「う、うむ」

 教授も、難しい表情をして考え込んでいる。

「〝三種の神器〟についての我々の理解が、間違っているのか? 〝三種の神器〟には、まだまだ多くの謎が隠されている……」

 穴の底では、ひしゃげた電気洗濯機が、数千年ぶりの光を浴びていた。

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