悩み相談室
「先生、私の悩みを聞いてください。ある女性のことで、とても困っているんです」
悩み相談室を訪れたその男は、訴えるように話し始めた。
「彼女は、私にとても親切なんです」
「どんな風に?」
「たとえばですね、私がお金がなくて困っているとします。すると彼女、黙ってぽんとお金を貸してくれて、『返すのはあなたの都合のいいときでいいわ』って言うんです。別に、こちらから頼んだわけではないんですよ」
「ははあ。で、いざ別れる段になったときに、『あのときのお金を返して』と言われたとか?」
「そうじゃないんです。それから何年経っても、『返せ』のカの字も言わないんです」
「はあ」
「私が病気で寝込んでいると、私の住まいまでやってきて、料理を作ってくれます。これがまた美味しいんです」
「…………」
「こんなこともありました。私が仕事に失敗して、上司に叱られて落ち込んでいたときです。『大丈夫。次はきっと上手くいくわ。あなたならできるって、私は信じてる』と、励ましてくれたんですよ。にっこり笑って」
「……天使みたいな人ですねえ」
私は嘆息した。
「そうなんです。天使なんですよ、本当に」
男は頭を抱える。
「とにかくもう、親切にされることに耐えられなくて耐えられなくて。このままでは私、この世から消えてしまいそうです」
「でもどうして、親切にされると困るんです?」
私の問いに、男は絶望的な表情で答えた。
「だって、私、悪魔なんですよ」
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