capture01 資質-秘書の心構え-社会人としての自覚

 ある日の放課後。私と妹の美琴は学校を出て、最寄り駅の西九王子駅付近にいた。


”♪~~~♪~~~”


「…ここのゲームセンター、オープンしてもう1年になるんだね」


「オープンしたての時は、先生が入口で番をしてたっけ…」


「…ねぇ、お姉!あれ見てよ!!」


 店内に目をやると、ゲームの筐体に座るスーツ姿の若い男性の周囲に人だかりができている。


 すると…


「よっしゃ~!!これで全国暫定1位だ!!」


「おお!!!」


「仕事サボってきた甲斐があったぜ!!」




「ちょっとお姉!」


「今確かに、『』って、はっきり言ったわね…」


「『秘書・接遇』って授業を選択していない私でも分かる。あの人、よね…」


「この前の足達先生の授業で、『社会人の基本資質』『マナー』『自己管理と自己啓発』について習ったんだけど、あの人は、今言った3つを何一つできていない、ということになるわね…」



***



 一般的に秘書という仕事は『』と位置付けられますが、一般社員の仕事が『自らに与えられた仕事をこなしながら、ことから、秘書検定の学習を通して、会社常識や社会性を身につけられると言われ、就職活動を行う高校生や学生を中心に、幅広い層が秘書検定を受験しています。


 そんな秘書(広く言えば一般の社会人全般)に必要とされる資質の一つに『の理解』があります。


 その基本は『責任感と協調性』にあり、『責任感』『協調性』『正確性』『コスト意識(原価意識)』を持つことで、単独で行うことのできない『組織の仕事』を完結まで導くことが求められます。


 これを実現するためには、『礼儀正しく、挨拶やお辞儀を欠かさない』『正しい敬語表現』『上下関係を心得ている』といった基本的なマナーを守っていることや、『常にベストな状態で仕事をこなせるよう自己管理ができる』『現状に満足せず、自分の能力を高めていく自己啓発を心掛けている』といったことも必要不可欠となります。


 人を補佐する職業である秘書には、大前提として前述した『』が求められるのです。



***



「あの人の仕事の進捗は分からないけど、少なくとも『原価意識』に欠けていることは間違いないわね」


「簿記で『給料』が会社のコストの最上位に来ることが分かっていれば、『こんなことをしていて給料をもらっていいのか?』って自問自答できるんだけどね…」


「それに、『時間管理』や『金銭管理』などの『自己管理』もできていないし、ゲームにのめり込み過ぎている訳だから、もしかしたら『自己啓発』もできていないかも知れないよね…」


「ゲームをすることは悪いことじゃないけど、勤務時間中にやるのは間違いなく良くないわ!美琴も、授業中に先輩とメッセージ交換なんかするんじゃないわよ!」


「分かってるって!さぁお姉、買い物に行こう行こう!」



capture02 に続く



~検定問題にチャレンジ!~



<先輩から学ぶこと>

 新人のA子とU子は配属されたそれぞれの部署で、先輩に就いて秘書の見習いをしている。次は、早く秘書として一人前になるためにはどのようなことに気を付けたらよいか、二人で話し合ったことである。中から『不適当』と思われるものを一つ選びなさい。

(第110回 秘書技能検定 3級問題より)



「1.自分たちはお互いに遠慮のない話し方をしているが、先輩たちは違うようなので見習うようにしよう」



「2.先輩たちのような丁寧な態度振る舞いを身に付けるには、普段から気を付けないといけないのではないか」



「3.先輩たちは忙しい合間に職場の環境整備に気を配っているが、自分たちはまず仕事を覚えることに専念しようか」



「4.先輩たちは個人的な悩みがあったとしても、それを顔に出さず明るく生き生きと仕事をしているようなので見習うようにしよう」



「5.先輩たちは自分の仕事を行いながらも、上司を気遣うことを第一に考えているようなので、自分たちも同じにしないといけないのではないか」



 『不適当』な選択肢は…

























「3.先輩たちは忙しい合間に職場の環境整備に気を配っているが、自分たちはまず仕事を覚えることに専念しようか」



~解説~



「職場の環境整備は皆が働きやすいように、また、来客などによい印象を持ってもらうために必要なことで、特に新人が率先して気を配ることでもあります。従って、自分たちはまず仕事を覚えることに専念しようなどは不適当ということになります」

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