chapter09 「作業くず・副産物」って何!?

 ある日の嶋尻家の食卓。


「さぁ、召し上がれ!」


「今日のデザートは…「ドーナツ」に「甘酒」!?」


「「ドーナツ」といっても、ただの「ドーナツ」じゃないんだなぁ」


「随分と軽い食感…これは「おからドーナツ」だね!」


「さすがあなた!今、おからはダイエット食品として注目されていて、ドーナツ以外にも、コロッケになったり、グラタンに入れたり、サラダにしたり…さまざまな料理に使われているみたいよ!」


「それにしても、昔はおからと言えば「卯の花」位にしかならなかったのに…今は色々な料理の「材料」になるんだなぁ」


「豆腐を作るときに発生する「」だなんて、バカにできない存在になったもんだ!」


「お父さん…もしかして、「工業簿記」やったことある人!?」


「ああ、学生時代に少しだけ、な。でも、今の真琴や美琴ほど、詳しくはないけどね…」


「美琴は、もう副産物について、戸山先生から教えてもらったの?」


「名前を聞いただけで、まだ詳しい内容はやってないんだ~」


「私の記憶が確かなら…副産物はで、主産物と比較して売価が低くなる物のことだったはず!」


「お父さん、大正解!!」


「それじゃあ…「」は?」


「「作業くず」か…確か、けど、製品の製造過程で発生する、だったような気が…」


「お父さん、正解よ!!」


「私の知識も、まだまだ錆びついてはいないようだな!」


「へぇ~そうなんだ!お姉!工業簿記上では、それぞれどんな処理になるの?」


「副産物の場合、多くはそのが多いわね」


「評価額?」


「副産物をから、それを売却するまでにかかるであろうのことだよ…違ったかな?」


「お父さんの言う通りよ。例えば、売却見込額が10,000円で、それを販売するために要する見積販売費が1,000円だったとすると…」


「評価額は、10,000円-1,000円=9,000円 になるから…」


「(借方(左側))副産物 9,000


 /


 (貸方(右側))仕掛品 9,000


って仕訳になるって訳だね!」


「そういうこと!「作業くず」も、原則同じように処理をするわ」


「でも、確かの仕方があったような、無かったような…」


「(お父さん…どんだけ記憶力がいいのかしら?)」


「どうした?真琴」


「いや~お父さんの記憶力、半端ないなぁ…と思って、ね」


「副産物も作業くずも、お父さんが言った通り金額的に少ない場合は、製造原価から差し引かないで、なの」


「例えば「作業くずが¥500分発生して、それを売却して現金で受け取った」なんて場合は…


(借方(左側))現金 500



(貸方(右側))雑益 500


って仕訳になるってこと?」


「そうね。工業簿記のルールを定めた「原価計算基準」の「28 副産物等の処理と評価 (4)」の中に『軽微な副産物は ~省略~ これを売却して得た収入を、原価計算外の収益とすることができる。作業くず、仕損品等の処理および評価は、副産物に準ずる』という表記があるから、発生したね」


「なるほどね。でも、きっとこの「おからドーナツ」は、こんな美味しい商品として販売されている位だから、その材料になった「おから」は、副産物としてちゃんと計算されたんだろうなぁ…」


「真琴!そのおからドーナツは私のよ!」


「お姉は、今ダイエットしてるんでしょ!だから、私がもらっといてあげる♪」


「もう、そんなこと言って!煉先輩に「太ったぞ」って言われるわよ!」


「そんなことないも~ん!」


「こらっ!私のドーナツ、返しなさい!!」


”バタバタバタ…”


「…「煉先輩」って、誰だ?母さん…」


「さっ…さぁ……」


「…」


chapter10 に続く

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