chapter15 「戻ってきた小切手・手形」の処理の仕方

 ある日の部活の放課後のこと…


「ねぇ煉先輩!これを見て下さいよ~」


 私は、財布の中から千円札を取り出すと、先輩に見せた。


「これは…種も仕掛けもない千円札のようだけど…」


「実は1週間前に、コンビニで電子マネーにこの千円札でチャージをしたんですけど、今日別のコンビニで五千円札を崩したら、この千円札が私の手元に戻ってきたんです♪」


「…その千円札が、一週間前の千円札だと何で言い切れるんだ?」


「このお札の通し番号が、私の和暦の生年月日になっているんですよ♪」


「なるほどな。それで気づけたという訳か」


「去年の3月に終了したお昼の番組が数年前に伝えた情報によると、1ケ月現金で20万円使う人が10年の間に自分のところに戻ってくる確率は、7000分の1の確率だそうです」


「そうなのか!意外に確率が高いような気もするな…っていうか、真琴、どこからその情報を…」


「美琴にそう言われて、ネットで調べてみた結果です。千円札の流通量は、一万円札よりも多いはずですから、確率はさらに低くなりそうですよね」


「確かに。美琴は、相当に運がいいということになるな!」


「はいっ!私の生年月日が通し番号のお札が、再び私の元に戻ってくるなんて、なんだか運命を感じます♪なので、このお札は大事にしまっておくことにしました!」


「私だったら、宝くじが当たった方がよほど嬉しいと思うけどね…」


「もぅ…お姉は夢がないなぁ…」


「「お札が戻ってきた」と言えば、簿記で「自分が発行した小切手や手形が戻ってきた」なんて仕訳は、もうやったか?」


「はい。私は去年やりました!」


「私はまだそこまでやってないですね…」


「例えば…「商品を売り渡し、代金のうち一部は当店が過去に振り出した小切手で受け取った」なんて仕訳だな」


「商品を売ったんだから「売上」が発生する。小切手は受け取っただけなら「現金」として処理する。残りについて、特に明記されていない場合、それが商品売買の場合は「掛」として扱われるから、残額は「売掛金」。でも、待てよ…「当店が過去の振り出した」ってことですよね…」


「普通に「一部は小切手で受け取った」だったら…


(借方(左側))現金

        売掛金



(貸方(右側))売上


になりますよね…」


「美琴の言う通り、ポイントは「」というところね」


「美琴、「小切手を振り出して支払った」とあった場合、どんな処理になる?」


「「当座預金」を右側に書いて減らしますよね」


「「小切手を振り出して支払った」とあった場合に当座預金を減らすのは、からだ。その、当座預金が減るはずだった小切手が、回りまわって自分の店に戻ってきた、ということだから…」


「そうか!このんですね♪ということは、さっきの先輩の例題の答えは…


(借方(左側))当座預金

        売掛金



(貸方(右側))売上


ということですね♪」


「正解!それじゃ、これがのことも考えてみよう。「商品を売り渡し、代金の一部を」。こんな問題だったら、どう仕訳する?」


「これも、さっきの小切手と同様に、「振り出した」時の状況を考えれば分かりそうですね」


「普通「手形を受け取った」とあった場合、それが約束だろうが為替だろうが「受取手形」って勘定科目を使いますよね。でも「約束手形」とあるから…」


「その手形を振り出した時は「支払手形」を右に書いて、「負債」を増やしているはずですよね」


「その「支払手形」として処理した手形が自分のところに戻ってきた、ということは…」


「その!なるほど!!つまり…


(借方(左側))支払手形

        売掛金



(貸方(右側))売上


という仕訳になるわけですね♪」


「ご名答!あまり検定試験に出て来ることはないみたいだけど、押さえておきたい部分だな!最近の検定は、と聞いたこともあるし…」


「自分が振り出した小切手や手形が回りまわって戻ってくることって、本当の社会でもありそうですしね」


「私の千円札も戻ってきた位だから、はずだし、大いにあり得そうな話ですね。」


「そうだな!」


「煉先輩、それにお姉!ありがとうございました!」


「そう言えば、戸山先生、この手の問題が好きだから、今度の期末試験、気をつけた方がいいかもよ…」


「え~そうなの…分かった。気をつける。」


「実は、俺が1年生のときも、戸山先生のテストで、この手の問題に引っかかったんだ…」


「うぅ…戸山先生、そんな問題出したら恨みます…」


「(…嶋尻に用事があったんだが、今はやめておこう…)」



 最近の簿記検定は、本当に「実務重視」の問題が出題されている傾向にあります。

 これから受検予定の方は、ありとあらゆる可能性を考え、分からない部分は先生等にお聞きし、受検に臨まれることをお勧め致します…



chapter 16 に続く

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