chapter08 「商品」として取り扱うもの
「あ~やっとテスト終わった~~」
「美琴ちゃん、お疲れさま~」
1学期の中間テストが終わり、私と紗代は廊下で話をしていた。
「それにしても、戸山先生も意地悪だよね~「商品を仕入れて、代金は月末に支払うことにした」なんてさ~」
「美琴ちゃん。それ、ちゃんと仕訳できた?」
「商品を売ったり買ったりした時の「後で払います」「後で受け取ります」は、「掛」と同じ取引になるから…
(借方(左側))仕入
/
(貸方(右側))買掛金
でしょ?」
「はい!正解!!」
「でもさ、あれはどうなんだろう?「不動産業を営む当店は販売用の土地を購入し、代金は月末に支払うことにした…」」
「今年の1年生の簿記は、最初から随分と飛ばしているみたいだな…さすが、けやき商で「簿記を合格させる腕で右に出るものは居ない」と言われた戸山先生だ…」
「あっ!先輩!!」
「部長さん!こんにちは!!」
「煉先輩!「飛ばしてる」って、どういうことですか?」
「俺が今の美琴位の時期に、そんな難しい仕訳の問題は勉強していなかった、ってことさ」
「そうなんですか?」
「ああ。ちなみに、さっき美琴が言っていた仕訳の答えはどうなる?」
「商品以外のものを購入した時の月末払いは「未払金」、月末受け取りは「未収金」を使って処理するから
(借方(左側))土地
/
(貸方(右側))未払金
なんじゃないんですか?」
「確かに、土地を営業用の店舗を建てるために購入したんなら、そういう仕訳になるよな…でも、当店は何業を営んでいるって言ってた?」
「「不動産業を営んでいる」ってテストには書いてありましたし、「販売用の土地」とも書いてありました…ってことは、当店にとって、土地は「商品」!?」
「ご名答!!」
「そんなぁ…てことは、あの問題の答えは
(借方(左側))仕入
/
(貸方(右側))買掛金
ってことですか?」
「そういうことだな。簿記の仕訳の問題で注意しなきゃいけないのは、問題文の中にワンサカあるってことさ」
「問題文に「○○業を営む」なんて書いてあったら、特に注意を払う必要があるってことですね…」
「煉先輩。戸山先生のテストの問題以外に、注意しておいた方が良い業種とかってありますか?」
「そうだな…「不動産業を営んでいる商店の土地や建物の売買」以外には…
・家電販売業を営んでいる商店のパソコンの売買
・家具販売業を営んでいる商店の机や椅子の売買
・携帯電話販売業を営んでいる商店のタブレット端末の売買
・車両販売業を営んでいる商店の車両やトラックの売買
といったところかな…」
「何業を営んでいるにしても「販売用の○○」と書いてあったら、ほとんどの場合は「商品」のことだから、通常は備品として処理する「パソコン・机・椅子・タブレット端末」や、車両運搬具として処理する「乗用車・トラック」は、「販売用」と前置きがあったら「商品」として認識する必要があるだろうな」
「テストで減点されることは確定しちゃいましたけど、ここで間違えていたお陰で、来月の検定では絶対に間違えない自信がつきました!」
「美琴は来月簿記検定を受検するんだったな!」
「はいっ!紗代も一緒に受検するんですよ!」
「2人で合格できるよう、部活の合間に勉強するつもりです♪」
「そうか!分からないことがあれば、いつでも聞いてくれよ!」
「はいっ!煉先輩、頼りにしてます!!」
「おう!任せなさい!!」
この一ヵ月後に行われた簿記検定の仕訳問題で、「○○業を営む当店は…」という問題が出題され、美琴と紗代はこの問題に引っ掛かることなく、見事合格を果たすことができたのでした。
「土地」「車両」「机・椅子・パソコン(備品)」と書かれていても、その前に「販売用」とか「○○業を営む~」なんて記載があったら、皆さんも十分にご注意下さいませ…
chapter 9 に続く
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