chapter07 「有価証券」って何!? ※2016年度より日商簿記検定での内容改訂

「1・2・3・4・5…えっと、株券を5枚持ってゴールしたから、$1,000プラスっと」


「私は3枚もっていたら、$600プラスね。美琴みたいに、あの時もっと株券買っとけばよかったかなぁ…」


「私は1枚も買ってなかったから、ゴールしても何ももらえませんでした…」


「その代わり、紗代は豪邸を買っていたから、株よりも儲けが出ているじゃん!」


 今日は、私の部屋でお姉と紗代と一緒に、ボード版の人生ゲームを楽しんでいた。


「そう言えば、株券って、つい最近耳にしたような気が…」


「美琴ちゃん。それ、昨日の簿記の授業じゃない!?」


「そうだった!株は「値のる紙切れ」だから「証券」だって、戸山先生が言ってたっけ…」


「「株」以外にも、簿記で「有価証券」にするものがあるわよ」


「真琴先輩。それってどんなものですか?」


「国が発行する「国債」、都道府県や市町村が発行する「地方債」、会社が発行する「社債」といったものね。「額面¥100につき¥97円で購入し…」みたいに記入されているのが特徴ね」


「会社が「株」や「国債」「社債」を購入する目的って、何なんだろう?」


「第1に、証券会社を通して「売買」することで、こと。

第2に、他の会社を子会社にしたり、自社に吸収したりすること。

第3に、国債や社債を返済日まで売らずに持っていて、こと。かな…」


「株や社債に、会社を支配する力があるんですか?」


「社債は、会社が銀行以外の場所からお金を借りる手段だから、社債を購入しまくっても、会社を支配はできないわね。」


「ていうことは、「株」にはってこと?」


「そういうことになるわね。会社の最高意思決定機関である「株主総会」での議決は、で決まるの」


「例えば、ここにいる3人が株主って会社があったとして、全体の発行株式数が1,000株だったとする。私がそのうちの600株を持っていて、あなたたちがそれぞれ200株ずつ持っていたとすると…」


「お姉は発行株式総数の60%の株を持っているから、私と紗代がどんなに反対しても、お姉が賛成なら株主総会での議決は全て通るって訳か…」


「3級の対象になっている商店は、株を基本的には購入しない設定で、仮に購入したとしても「売買目的」を目的としているから、今の話はあまり関係ないんだけどね」


「社債や国債を返済日まで持っていることを前提に購入した場合「売買目的」で所有する訳じゃありませんよね…この場合、どう処理するんですか?」


「3級で仮に「売買目的」で株や社債を購入した場合は「有価証券」で処理するわよね。これに対し、日商簿記の2級以上で、返済日、これを「満期日」と言うんだけど、満期まで持っていることを前提に購入した社債や国債は「満期まで保有することを目的とした債券」すなわち「満期保有目的債券」という勘定科目で処理することになっているわ」


「前、煉先輩から簿記について教わった時、「簿記の勘定科目は、分解して考えれば暗記する必要ない」って言っていたけど、その通りね」


「まぁとりあえず、あなたたちは「株」「社債」を購入した時は「有価証券」で処理するって覚えておけば問題はずよ」


「なんだか、人生ゲームやっていたはずなのに、簿記の勉強会みたくなっちゃいましたね…」


「そう?さて、私の総資産は$520,300になったわよ!あなたたちは?」


「お姉!いつの間に数えていたの?」


「あなたたちに、株や社債の説明をしながらよ」


「話しながらお札を数えるなんて、先輩、きっと銀行員に向いてます」


「銀行員?だめだめ!お姉はこう見えて結構ガサツだから」


「誰がガサツですって!?雑談はいいから、2人とも、早くお札数えて!」


「は~い」


 この後、美琴と紗代が所持していたお札をカウントした結果、豪邸を3倍で売却した紗代が優勝したのでした…

 人生ゲームって、結局いいお家を購入できた人が一番有利だったりしますよね…


chapter 8 に続く

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