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「ふ」
バレンタイン限定は二月いっぱい販売していることを確認して胸を撫で下ろす。これで俺のチョコ計画は安泰だ。安心して一人で食べることが出来る。と、そんなおっさんの隣で女子高生はまじまじともう一枚のチラシを見入っていた。
てっきりケーキを買いに来たのかと思ったら、彼女もチラシを見に来たらしい。彼女が見ていたのはこの土日と祝日にある、店のイベントのチラシだった。そのチラシには大きく“手作りバレンタイン応援隊”と書かれてある。
あなたの気持ちをチョコレートに込めてみませんか? お菓子作りのプロであるパティシエがあなたのチョコレート作りをお手伝いします!
なるほど。たまにお菓子教室なんかを開いているみたいだったけど、こういうのもやっているのか。これなら作った事がなくても、苦手でも、手作りチョコが作れるってわけだ。乙女の味方だな。
「んん・・・」
それを眺めているのは悩める乙女だった。じぃっとチラシを見てソワソワしているところをみると、申し込もうかどうしようか悩んでいるようだ。まだ定員の余裕はあるみたいだ。
申し込まないのか?
ちらりと見た女子高生の表情は真剣なものだった。本気で作りたいと思っているのだろう。でも店の人に言うにはちょっと勇気がないって感じ。
大丈夫、きっと上手く出来るから行ってきな。ここで帰ったらきっと後悔するよ。なんて、さすがに見ず知らずの女子高生に声は掛けられないけど、心の中で言ってみる。
チョコが美味しいとか美味しくないとか、そう言うことじゃなくて、君から貰ったと言うことが相手からしたら嬉しいわけで。それが手間暇かけた手作りならもっと嬉しいと思うわけで。
がんばれよ、少女。青春は思っているよりずっと短いぞ。今を全力で楽しめ。いつかそれをいい思い出として語れる時がくるから。
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