アオハル短し恋せよ乙女
カゲトモ
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「そりゃ寒い筈だわ」
玄関の扉を開けると、空からハラハラと雪が舞い落ちていた。今朝起きた時から寒い寒いとは思っていたけど、そりゃそうだ。雪が降るくらいなんだもの。この調子なら積もらないだろうけど、寒いのは嫌だ。身体が固まってしまう。
「ふぅ」
白い吐息をすり抜けて小走りに駅へ向かう。普通に歩いていたはずなのに、無意識に小走りになってしまうのだ。耳が千切れそう。
店の傍に家があったらいいのに、なんて。これでも近くへ引っ越した方なんだけどな。家賃とか部屋とか考えると、今のところからまた引っ越すのは嫌だけど、移動距離があるのも嫌だ。もう早くひみつ道具発明してくれ。風呂は覗かないって約束するから。
最寄駅の近くには店がいくつか連なっていて、大手スーパーの超小型支店みたいなところから、理髪店、パン屋、喫茶店、ケーキ屋なんかが並んでいる。そしてそこのケーキ屋がまた美味いのだ。
若いオーナーさんってこともあってちょっと洒落たものが並んでいて、見た目から食感から新しくて美味いものばかりだ。もちろん定番は定番で美味いし、性別年齢問わず人気がある店だ。もちろん俺もその一人。
いつも新作はチェックするのだが、今年はバレンタイン限定でチョコの新作が発売されるらしいのだが、買えないのが残念過ぎる。いくらチョコ好きの俺だとしてもさすがにバレンタインに自分用のチョコを買うのは憚られるから。いや、むしろオープンに「彼氏に買うんです」くらいの気持ちで行けば大丈夫かも? ・・・でもご近所だしなぁ。勘違いされても困るし。ミケの家からの最寄駅もここだから。
諦めるしかないか・・・チラシに載っていた二色のチョコマカロン、食感の違う二層の生チョコ、地酒のトリュフ、ダークチョコの大人のビターチョコケーキ・・・食べたい。あぁ食べたい。ここはいっそ素知らぬ顔をして行くべきか。全部自分で食べますって顔をして。あ、待てよ。もしかしたらバレンタイン当日だけじゃないかもしれない。十三日に先行発売とか、二月いっぱい販売するとかあるかもしれない。それなら何も気にせず買えるかもしれない! もう一度チラシをちゃんと見ておかないと。
もしかしたらの可能性にふわふわした気持ちになって軒下のチラシへ近づくと、それと同時に駅の方から女子高生が赤い頬でこちらへ向かってきた。どうやら目的は同じケーキ屋のようだ。
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