カモメのトフミと風船

アほリ

1#風船を見つけたカモメ

 みゃーあ!みゃーあ!みゃーあ!みゃーあ!みゃーあ!みゃーあ!みゃーあ!みゃーあ!みゃーあ!




 セグロカモメのトフミは、海風を大きく拡げた白い翼に受けて、海岸沿いを、


 ふうわり・・・


 ふうわり・・・


 と、飛んでいた。


 ふうわり・・・


 ふうわり・・・




 リーダーの争いに破れ、


 傷心のカモメのトフミ。


 プライドも何もかも、あの海に置いてきた。


 故郷の海に置いてきた・・・


 今は、悠々自適。


 気ままに飛んで、


 気ままに食べて、


 気ままに眠る。


 たまに、他のカモメやカラスと喧嘩して。


 


 ふうわり・・・


 ふうわり・・・




 カモメのトフミには飛んでいて、気になることがあった。




 「海岸汚れてるなあ・・・」



 

 そんなトフミは、海岸で打ち上げられたプラスチックゴミなど見かけると、嘴で拾いあげて、


 ポイッ!


 と、人間の公園のゴミ箱に棄てていくのが『日課』になった。




 ある日。




 「なんじゃこりや?」


 海のゴミを拾おうと、海岸に降りたって、嘴や鰭足でやたらとまさぐっていると・・・


 「ふう・・・せん・・・?」


 カモメのトフミは、すっかりヘリウムガスが無くなり、表面が醜くしわしわになっている、オレンジ色のゴム風船を拾った。


 「あれ?まだある。」


 トフミは更にまさぐると、上空で割れて本体は微塵切りの状態で、吹き口だけ残った風船や、やはり表面がしおしおに萎んだ風船を大量に見つけた。


 「そうだ・・・!ここは、海流の流れで漂泊ゴミがよく流れてくる場所なんだなあ。

 で、必然的に飛んで浮力が無くなって海に落着した風船も、流れ流れて、この海岸に集まると・・・。」


 そう思うと、トフミは漂泊してきた風船がいとおしく思えた。


 ・・・風船よ、お前たちはどこから飛んで来たんかい・・・?


 カモメのトフミは、嘴の鼻の孔を萎んでるゴム風船に近づけた。


 「うーん・・・潮の香りにほんのり、年季経ったゴムの匂いかなあ・・・」


 トフミはそう言うと、萎んているものも割れているものも、全部嘴にくわえてゴミ箱を探した。

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