でもさそれは、ありふれた日

 朝起きたら、眼が碧色になっていた。


 発見者は私ではなくて母で、朝食をぶちまけかねない勢いで驚かれたおかげで、私は驚く機会を失った。何事も、やった者勝ちだ。


 仕方がないので、サングラスをかけていくことにした。何気なく買ったサングラスが、こんなところで役に立つとは思わなかった。

 制服とサングラスの組み合わせは、アニメのキャラクターを現実に照らし合わせたくらい情けなかったけれど、仕方ない。

 どのみち、自分では見えないからいいことにしておいた。


 母が病院に行けと騒いでいたけれど、そんなことをしていたら授業に遅れてしまう。一時間目は好きな生物で、午後には世界史もある。休むわけにはいかなかった。

 少ししたら元通りになるかもしれないし。

 案外、特別でもないかもしれないし。


 眼の色が変わったからといって、何が起こるわけでもなくて。

 ――突然未知の生命体が降りてきて、「あなたにしか地球は救えません!」とでも?

 そんなこと、あるわけがない。あったところで、断りたい。他の誰かに譲っておこう。私に託されたところで、地球も迷惑なだけだ。


 学校に着くと、授業間際だった。

 先生にサングラスをとがめられるよりも前にクラスメイトに騒がれるかと思ったのだけれど、意外にも、仲間がいた。

 ついでに言うと、いつも以上に欠席者が多かった。

 ひょっとすると、クラスの半分以上が似たような状況になっていたのかもしれない。


 その夜、テレビでアナウンサーが、目の色に異常の出た十代の少年少女、主に中高生が多発したと伝えていた。


 ほら、やっぱり特別なんかじゃなかった。

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