NoTITLE_FANTASY

晴野

No.001-魔法とは夢の無いものだ-

現代において、いきなり友人等に「実は魔法使いなんだ」と言っても「後発性の厨二病かよ」と笑い飛ばされるだろう。信じる人が居たとしてもほんのひと握り、いや、この世界の吹き溜まりの端の端にいる変哲者だけだ。だから私は、この夢のない世界で密かに生きているのだ。


魔法使いといっても、どんな魔法でも使い放題というわけではない。属性も無ければ、ひみつ道具のように便利な物でもない。ただ存在していて、人によっては幻想的な者に見えるだけの事象だ。便利な物であったら、何かしらの仕事には役に立つだろう。しかし、ただの幻想は仕事にできない。魔法のイメージとは違うと言われそうだが、だいたいの事が上手くいかないのがこの世の仕組みである。


自分が魔法使いであるという事に気づいたのは、高校2年の時だった。朝、目を覚ましたら頭上に3匹の光る青い金魚が浮かんでいたのだ。金魚が青くて金魚と呼べるのかはよく分からないが、それが空中を泳いでいたのだ。初めはお決まりの通り、夢か幻覚を見ているのかと目を疑った。しかし、またまたお決まりの通りそれが何日も続いた。次第に、私が「金魚」と思えばそれが浮かび、ほかの何かをしようと思った時にそれが消えるという法則を見つけた。なんとまあ、暇つぶしには持ってこいな魔法だ。その後しばらく、金魚を量産してみたり、メダカやザリガニ、果ては好物のラーメンなんかを量産したりしていた。


この現象を単に「魔法」といっても、その原理が不明なだけで「科学の一部」である可能性も十分に考えられた。しかし、「笑顔の魔法」と言われるように科学や心理も使い方によっては「魔法」に変わるのだ。私はこの魔法を出来るだけ有効に活用したい。しかしながら、ウォータースクリーンに映し出されたプロジェクトマッピングとほぼ同じようなこの魔法を一体どうやって活用出来るかが問題になった。金魚の量産試験の結果、金魚を作り出せる限界範囲は自分の周囲の約1.5メートル程という事が分かった。数的にはほぼ無限大。しかし、1つ1つが浮かぶ光に過ぎないので密集するとただの眩しい塊に見えてしまう。また、真っ暗な部屋でいきなり光の塊が現れては消えるというパフォーマンスは私自身の眼にも悪い。


ここ数日、どうにかいい方向に活用出来ないかとずっと考え続けていた。今秋の高校文化祭でパフォーマンスとして用いるか、路上でパフォーマンスするか。いや、そもそも原理のよく分からないモノを人前で見せることになれば不気味がられることは目に見えている。改めて「魔法」とは夢のないもとだと実感させられる。

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