それでも、僕らは探し続ける
すだちレモン
登場人物
code1 プロジェクトの始動
俺の部屋はベッドと勉強机しかなく、無機質だ。それが俺らにとって常識だ。ほかに何を置くのか、全く持って分からない。
人は勤勉で、食べ物を食い、寝るそれだけを教えられてきた。俺はこの無機質な部屋で数学を解き続けている。数学が好きだからというよりも、数字に触れているとなんとなく落ち着く。
数字は一つ一つ人間と同じような個性がある。それは言葉では言い表せないが、感覚的にあるのだ。
だから、なんだって訳ではない。ただ落ち着く…それだけだ。外に雄大な世界が広がっているのは、知識として教えられた。
だが、別に知りたいとは思わない。外に出たとしても俺を養ってくれる親はいないのだから…。
2085年夏 AM9時00分
俺ら子供は珍しく召集された。子供と言ってもここに召集されたのは16歳程度の子供だ。基本的に他人とは関わらない。だから、こんなことは滅多にない。
「うんっ!君たちは、我々の教育の元素晴らしい教養、能力を磨きあげた。しかし、君たちは天才であるが故の欠落者だ。
それを補うためあるプロジェクトを実行する。」
白衣の研究員は高々に語った。欠落しているもの、そんなのは分かるはずがない。普通の人間という基準を教えられていない。今の自分が正常と思っているのだから。
「その計画の内容を発表する。
君たちはある日本の孤島に住んでもらう。寮もあり、商業施設もある。そこで自由に住んで良い。君たちはそこで学校というものに通い、欠落したものを探してもらう。
しかし、学校と言ってもこの施設にいるものだけだ。
お互い顔しか知らないであろう。
ここらが本題だ。我々は、君たちに随時課題を出す。
その課題の内容は定かでは無いが、一人では出来ない。その才能を使い合って乗り切ってもらう。
教えられるのはそこまでだ。
質問はあるか?答えられる限り答える。」
そこで一人の女子が手をあげた。
「ご飯は食堂とかがあるんですか?」
「食事に関しては心配しなくても良い。他にはあるか?」
「課題がクリアできない場合は?」
「連帯責任として、各人にペナルティを貸す可能性がある。その内容は不透明だ。他にあるか?」
俺は静かにそっと手をあげた。
「欠落したものを見つけた場合はどうなる?」
「やっぱその質問は出るか…。見つけた場合は島から抜け出せる。そして、国のしがらみ無く自由に生活できる。仕事はリクエストに応じてこちらが対応しよう。」
「見つけられなかった場合もあるんだよな。」
「勿論だ。流石に神宮寺は鋭いな…。見つけられるまでずっと島に幽閉する。見つけられたら島から抜け出せるとは言ったが、君たち全員が見つけられなければ島からは出れない。」
「結局、連帯責任って訳か。」
「ああ、その通りだ。他に質問はないな。
では、話を終わらせてもらう。」
そして、俺らは飛行機に乗せられ、孤島へと向かうこととなった。
全員が見つけられるのか、それはかなり難しい。
数人ならまだしも、召集された者は40人程度いる。
皆正常を知らない。無理な話だ…。
そして、俺らは施設から外の世界へと足を踏み入れた。太陽というものはとても眩しかった。話に聞いているだけであったので、その数値上でしか測れない。
「暑い…。」
俺はぽろっとそう呟いた。暑さというものもあまり慣れたものではない。体から汗がぼたぼたと垂れていく。体の老廃物が一気に流れ出る、この感覚は気持ち悪かった。
そして、施設の飛行機に次々と子供が乗せられた。
周りの子供は一切誰とも話そうとしなかった。
厳密に言えば違う、話すじゃ無くて、あまり話し方を知らないのだ。
だが、一つ気になることがある。隣の女がこちらをチラチラと見てくる。非常に目障りだ。
そいつは飛行機でも俺の隣に座り、俺のことを眺めていた。その女は髪の毛が茶髪で目がぱっちりと開き、
ほかの女子と比べれば、俺の価値観を基準とすると高い方だった。
しかし、そんなのはどうでも良い。なぜ、俺を見てるのかそれに尽きる。
そして、俺は言葉を発した。これが初めて同年代の女子と喋るのかもしれない。
「おい、お前なんでこっちをチラチラ見る。非常に目障りだ。」
「そーう?なんか君を見ていると胸がドキドキするの?体が熱くなって、でも風邪がある訳じゃない。
何なのかな?」
「知るかそんなの…。俺を見るのはやめろ。」
「それは嫌だよ。別に見るも見ないも私の勝手よ。眺めてるだけなのにどこに見てはダメな理由があるのかしら。」
「じゃあ、勝手にしろ。目障りにならない程度に。」
女という生き物は分からない。なぜ俺を見るのかはっきり言って不可解だ。この俺の対応は間違ってないと信じたい。
飛行機は5時間くらいフライトを続け、高度を下げていった。俺達が、飛行機という未知のものに乗って好奇心がくすぐられたのはいうまでもない。
もっと乗っていたいという気持ちは少なからずあったが、眼下には海に囲まれた孤島がそこにはあった。
どのくらいの大きさかと言わられれば、比較対象が俺の知識の中に無いのでなんとも言えないが、小さく無いことは確かだと思う。
飛行機は、ゆっくりと高度を下げ着陸した。
俺たちは一人ずつ孤島に足を踏み入れた。そこには好奇心、不安感が入り混じっていた。
「プロジェクト開始!」
その合図と共に俺たちは島の中央の街へ向けて歩き始めた。
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