第30話 30

あなた、眠るって悩んだことがある?


私は今回初めて悩んだ。眠るって楽よね? 疲れたら寝て体力を回復させたいわよね? 出来る事ならずっと眠っていたいはずでしょ? それなのに誰かに強制的に眠らされると思うと素直に喜べないのはなぜ?


ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。


私は私を覚醒することがを持っている。まさか他にも自分を覚醒させることができる言葉を持っている人間がいるなんて・・・。言葉って・・・おもしろい。私の言葉に力が宿るなんて、なんだか素敵。


「な、なぜだ!? なぜ眠りにつかない!?」


なぜ私に道明寺アンの眠り攻撃が効かないのか? それは私が高校に入学してから2日連続で病院のベッドで熟睡していたからだ。気軽な眠れという言葉程度では睡眠が十分な私は深い眠りには落ちなかった。もちろんひょん教は熟睡してしまった。役立たず・・・。


「・・・。」


相手が動揺している。今の自分の状況が理解できていないんだ。正直なところ私も現状を理解できていない。それでも相手よりは冷静だ。相手は人を眠らせることができる言葉を持っていること。眠ってしまったら3日間も目覚めることができない。それともう一つ。私は自分を覚醒する言葉を使うことができるということだ。


「私がお稽古事地獄のパンパンのスケジュールで苦しんでいて、眠たい、眠りたい、寝させろや! というキレキレの想いが負けたというの!?」


悩め、悩め、悩め私。相手はまだ戸惑って冷静さを欠いている。悩むなら今だ。どうする? 私。いきなり覚醒の言葉を唱えて薄皮ヨモギにチェンジするか? でも薄皮ヨモギになったからといって、道明寺アンみたいに自分の言葉に眠りの効力を持たせるような特殊能力は私にはない・・・。


「・・・。」


殴りかかる? 蹴りまくる? それは違うか。製作委員会は議論や論戦する委員会。きっと私の言葉にも何らかの効果があるはず。神よ! 悩みの神! ダロンよ! 私の言葉にも命を吹き込みたまえ! ラーメン! 私は悩める人の像をイメージして神にお祈りを捧げた。そして相手が疑心暗鬼に陥っている今こそ勝負をかける時だと悩み抜いた。


ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。


今更だが私は思う。なぜ世界征服をするなどと調子にのったことを悩んでしまったのだろう。その第一歩で高校を制覇することになってしまった。落ち着いてみると恥ずかしいものである。汗・・・。


「道明寺アン子! 私の留守に校内を荒らしてくれるとはいい度胸じゃない! これから私の言葉で地獄を見せてあげるわ! 眠たいんでしょ? 永遠の眠りにつかせてあげるわ!」


快感! 言ってやったぞ! 私の思ったことを私の思うように私の言葉でしゃべれるって、なんて素敵なの! まるで便秘で詰まっていたものが全部出て体が軽くなったみたいだわ! ああ~! 気持ちいい! 私の大迫力にアン子は驚いている。ワッハッハー! 私は完全に浮かれていた。


つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る