第26話 26

あなた、自分の無力と感じたことはある?


私はある。ひょん教を懲らしめることができなかった時、友達のハーフさんを助けることができなかった時。でもこんなことは絶対的な無力じゃない。


ワードズ・オブ・アウェーケニング。私は薄皮ヨモギ。私は高校を支配する。


ほんとに私が無力だと感じているのは自分の能力について何も知らなかったこと。一日に何度使用できるのか、一度使用したら再利用するまでにどれぐらいの待機時間がかかるのか、まったく知らなかった。知っているのは変な女医が言っていた私の能力の効き目は3分しか持たないという正義のヒーロー使用だということだけだった・・・。


「・・・。」


声が出ない!? 勇気を振り絞って一声することもできない!? なんて私は無力なんだ・・・私は私が嫌いだ。私は薄皮ヨモギになりたい。自由の翼を持っている薄皮ヨモギになって生きたい! ひょん教からハーフさんを助けることができない私自身がもどかしかった。


「教師に歯向かったらどうなるか分かっているんだろうな? おまえたちの成績は俺の気分次第だぞ?」


卑怯者!? 見損なったぞ! ひょん教! いや! ひょん教は最低な教師に違いない! 生徒の通信簿を人質にハーフさんに交際を求めるとはパワハラとセクハラだ! 不純異性交遊で訴えて免職にしてやる!


「バン。」


なに!? なんの音!? キャアアア!? 黒板が!? ハーフさんが一言呟いた時だった。爆発音が起こり、そのまま黒板が倒れひょん教を襲った。私は倒れた黒板がそのままひょん教に命中し天罰が下ることを祈った。


「生徒に歯向かったらどうなるか分かっているんだろうな? 私が服を脱いで大声を出せば教師なんてクビだぞ?」


カ、カッコイイ! ハーフさんは教師相手に一歩も引かない。それどころかひょん教を圧倒している! 素敵! 素敵! 凛々しい横顔だ。まるで幾多の戦場を戦い抜いてきたような強さがあるわ。


「くううううう!? イスラ・安倍!? 確か中学校の内申書には「あう」しかしゃべれない帰国子女で少し科学が大好きなカワイイ女の子と書いていたはずだ!? 日本語もしゃべれるし、この爆発もこいつの仕業か!? ・・・ギャアアア! ・・・。」


そのまま消えてしまえひょん教! 倒れてきた黒板にぺっちゃんこに押しつぶされるひょん教。そうか、ハーフさんの本名も分かったし、がんばって日本語を勉強したのね。偉いわね! 帰国子女か、海外留学するってことは親はお金持ちなのかな? すごい。好きな科目が科学になると簡単に爆弾も作れるようになるのね。すごいな。


「・・・。」


お友達になりたい! 私は本能的にそう感じていた。それだけじゃ嫌! ハーフさんを薄皮ヨモギ製作委員会の委員にしたい! 口下手な私だけど心の中は炎のように燃えていた。悩んで、悩んで、悩んで絶対にハーフさんを仲間にするんだ!


「イスラ、黒板を壊した罰として、廊下に立っていろ!」

「薄皮さん、私の代わりに廊下に立ってきて。」

「・・・。」


私は黙って立ち上がり、喜んで廊下に立ちに行った。


つづく。

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