第3話 3
こいつが悪の親玉ね! 教師なんて、ただの公務員。生徒が悩んでいたって助けてなんてくれない。生徒よりも自分の立場の方が大切なのよ。学校が荒れていたって、教育委員会の顔色ばかり見て、生徒の悩み事なんて、何も問題はないともみ消す連中よ。
悩むのよ! 悩んで悩んで、このピンチを脱出して、生きてお家に帰るんだ!
どうすれば誤解を解き、名字うの席から、本当の席の名字すに移動できるのかを考えるのよ。ああ!? 既に名字しとせが着席していて、私が座る席が無いじゃない!? どうする? どうする?
やはり陰謀だわ!? これは私をバカにして、クラス全員で面白い名字の奴がいるからからかってバカにして笑ってやろうってことね!? でも、それだといつ打ち合わせをしたの? まさか!? 入学式前の登校日? いや、受験の面接のときに違いない!?
く、苦しい!? 潰される!? もう私には周りの人間は敵にしか見えなかった。思春期特有の病気だとしても、私は悩み事という暗闇の中を出口も無いのに彷徨っていた。若い私の被害妄想は、私に大きくのしかかってきた。
「どうした? 早く席に着きなさい。」
キタ!? 教師からのキラーパス。予想はしていたわ。席に座らないで立っている生徒がいたら声をかけてくることぐらいは私にはお見通しよ。はあ・・・はあ・・・どうする? 私? 相手は私の成績を人質に取っている教師。大学進学を悩めば無視できない相手だわ。
「先生、私の席がありません。」
ダサい! これが私の記念すべき高校生活の第一声だなんて・・・。私が期待していたのは、もっとこう、素敵な男子が私の落としたハンカチを拾ってくれて・・・。
「落ちましたよ。」
「ありがとうございます。あら? 同じ一年生なんですね。」
「はい、仲良くなりましょう。お嬢さん。」
「はい。どこへでもついて行きます。」
と被害妄想ならぬ、恋愛妄想をしていたから睡眠不足になってしまったのね。通りで体がモヤモヤして眠れないはずよ。気が付いたらニワトリがコケコッコーと鳴いて朝日が昇っていたわ・・・。おっと、いけない。飛躍し過ぎ。悩み過ぎて、現実逃避してしまった。私のバカバカ。
「おまえ名前は?」
キターーーーーーー!? これぐらい伸ばせば、教師が私に名前を聞いてくることを私が予想していたことが分かってもらえるよね? やっぱり先生もクラスメートもグルなんだわ!? 私にどうしても名前を言わせたいのね。そして私をバカにして笑うんでしょう? 絶対に、そうはさせないんだから!!!
「薄(すすき)です。」
言ってやった! これが私が悩みに悩み抜いて出した結論よ! あくまでも薄(すすき)で押し通すのよ! 私が悩み事というラビリンスで迷子になっていた時に、暗雲を切り裂いて私をまばゆい神の光が照らしたのよ。自分が諦めなければ、夢は絶対に叶うって! 私は絶対に負けないんだから!!! 私の名前は薄(すすき)だっの!
つづく。
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