EP3 誤認逮捕というか間違っていないというか


 ハァーーーーハァーーーーー!

 

 あっぶね。置いて行かれるところだった。

 えー。こちら現場の雨宮です。現在なんと!スペースシャトルに乗っています!

 気分はすっかり宇宙旅行といったところでしょうか。

 煌く星々を眺めながらの、宇宙の旅はとても快適で・・・。快適で・・・。

 そうだよ!シャトルの『上』に!『上部』に乗っているんだよ!

 中に入りたいのは山々なんだけど、このシャトルはどうもかなり旧式のシャトルらしく。

 ドックの中でしか乗り降りができないという事らしい。

 何でも専用のタラップ?あのジャンボジェットとかに取り付ける階段みたいなやつが必要なんだと。

 まぁ、くどくど言っても仕方ない。せっかくだからナノマシン先生と語らうか。

 ナノマシンせんせーい。


ーーーーー


Q&Aプログラムを起動します。


 この世界は今どんな状況にあるのか、ざっくりで教えて。


A_不明な領域世界からの侵攻侵略を受けている。

 太陽系内に既に敵勢力が浸透している恐れあり。

 太陽系に存在する防衛戦力を検索したところ、存在しないことが判明。

 人類は現状連合体として一つにまとまっているが、内紛の恐れあり。

 女性のほうが個体数が多い。


 うむ。ざっくり過ぎてよくわからん。なんてね。

 最後のは何だよ有用な情報じゃないか・・・。

 今んとこ危機的な状況なんだなってのはなんとなくわかった。

 そうか・・・その辺に敵勢力がいてもおかしくないんだな。

 しかも異世界からの侵略に対しての防衛戦力はない。と。


 先生。防衛戦力がないって言うのは、防衛するという認識が存在しないの?

 それとも割り振られている部隊がいないだけで戦力はあるってこと?


A_前者のほうが近いかと。おそらく転生体、ロペ・キャッシュマン及び

 イント・ジャーマンスープレックスイオタ・レックス以外の人類が知りえない情報なのかもしれません。

 

 隠蔽されているのか?


A_その可能性もありますが不確定です。


 めんどくさいなぁ。しかし侵略者がいるーって、言うだけ言っても誰も信じちゃくれないかぁ。

 しかもロペってのは軍の大尉だったのに、その情報を周知させることが出来なかったんだろ?


A_ロペ・キャッシュマンにおいてはそういった情報拡散を行った形跡はありません。


 あぁイントちゃんはもうイントでいいよ。長い。


了解。イントは過去に情報の拡散を試みた形跡がありますが、誰にも信じてもらえず手痛いしっぺ返しを受けたようです。


 しっぺ返し?


 記録を参照する限りでは、いじめにあったとそういう記述があります。この情報の報告者は

 ロペ・キャッシュマン大尉となっています。


 軍の記録をハッキングしていたのかよ!いつの間に!


A_マスターが太陽系連合冥王星方面軍第三艦隊所属軽巡洋艦『ネタロー』にて収容されていた時にです。


 優秀だな全く・・・。


恐縮です。


 退屈しないよ・・・。


因みにイントの情報の拡散を遮ったのは、ロペ・キャッシュマンです。


 えぇ・・・?まぁなんか理由があるんだろうしそこは良いか。

 次。ドワーフっていたよな?他にもああいった種族はいるのか?


A_います。ドワーフの他に、エルフ、サハギン、メロウ、フェアリー、デーモン、人工人類、機人類、巨人、天使

 獣人などが確認されています。詳細は必要ですか?


 あー。長くなりそうだな。エルフとメロウ?だっけ?とりあえずその二つだけで。


A_エルフ

 太陽系外由来種の人類、もともと根付く大地を神から与えられず銀河を流離う旅人の様な種族であったが、

太陽系にて同じ人種に出会い火星周辺にコロニーを建設し火星をテラフォーミングした。

 また、非常に長命であり二千年から五千年ほど生きるものも存在する。旅をしている間に種の滅亡の危機に何度もさらされてきたが

 種としての生命力があまり強くなく、子供が非常に生まれにくい種族でもあり、女性エルフは種の存続欲求が非常に高い。

 逆に男性エルフは長命であることに誇りを持っているためかプライドが非常に高くイケメンのわりに非常に女性受けが悪く既婚率が極めて低い。

 また、サクランボをデザートに出されると激怒する。


 エルフメン・・・なんか・・・しっかりっ。

 それにしても、エルフの女性は種の存続欲求が強いか・・・。

 えろふ・・・・いや、何でもない。美男美女の種族かぁ。あってみたいやん。


A_メロウ

 太陽系由来種。女系種族。メロウは有史以前より地球に住んでいたとされる種族の一つ。

 地球が滅び脱出を余儀なくされた際に当時の地球人類に接触、政府高官を誑し込んで宇宙への脱出に成功した。

 いまだ原因は不明ではあるがどれほど子供が生まれようと、生まれる子供はすべてが女性であり、絶滅を避けるために古来より人類の男を捕獲し繁殖用に養殖していた。

 種として容姿端麗ではあるが、近親出産が多すぎたためDNAに異常があり、身体能力が徐々に衰え、人魚と呼ばれていたころの名残はほぼなく、金づちが多い。

 ごくまれに先祖返りとして下半身が魚の状態で生まれる子供がいる。宇宙進出を果たし他の人種と交わり始めたことにより、DNA異常は回復の方向に向かっているとのこと。


 ほほー!いわゆる人魚ってやつだな!あってみたいなぁ!ときめくなぁ!

 でもこの解説を見る限りだと、なんだかとっても虚弱そう。


世代を重ねて、メロウは種としての強さを取り戻しつつあるそうです。


 成程。じゃぁ。火星について教えて。


A_火星

 現在の帝国の前身である、火星方面移民船団によりテラフォーミングされたが、その際に使用された技術は明らかにされておらず、その後わずか百数十年で地球と同じような環境を手に入れた。


 ん?なんか情報が少ないな?


帝国の項目と重なる項目が多いため省略しました。


 じゃあ帝国を。


A_帝国

 正式名称大宇宙日本帝国。代々転移者もしくは転生者が皇帝として帝位を継ぐことが決められており、異世界から迷い来る者たちの受け皿として機能し続けている。

 テラフォーミングされた火星に帝都がおかれている。地球滅亡時に開拓者として火星に降り立った者たちが作り上げた、火星共和国が母体となっているが、共和国政府の圧政により耐えかねた民衆たちを率いた

 転移者集団『コレクトファンタジー』によって共和国政府は倒れ、その後転移者のリーダーである『イチロー・スズキ』が初代皇帝として即位した。初代皇帝は限りなく善人であり無能とされており

 「民の不満を全て解消したが、良い皇帝だったと言われると納得が何故かできない」と評価されている。初代皇帝の残した迷言に「パンがないなら水を飲めばおなか一杯になるよね。とりあえずそれで頑張ろう」と

 火星にある砂漠地帯の民に向けた一言がある「どっちもねーから困ってる」と言われたとかなんとか。


 おおぉ!日本!この世界にも日本があったのか!行って見たいなあ!にしても、俺『コレクトファンタジー』って聞いたことある気がするんだが・・・。

 何だったっけかな・・・?すずきいちろー?あーー何か思い出せそうな気がするんだが思い出せん!

 あっ!思い出した。ネトゲのクランの名前だ!思い出したからって何があるわけでもないんだが・・・。

 まぁ初代の皇帝があほっぽいことは分かった。


 あぁそうだ。この世界の国家について教えて。帝国は除いて。


A_共和国

 正式名称太陽系共和国。穴だらけの月を所有する共和制国家。過去数百数十年に亘り月の採掘を推し進め穴だらけの月にした。首都は月面に存在する『工業都市マッサマン』

 近年連合の他二国家から月の採掘を危険視する声があげられ、採掘を中断したが、まだ埋蔵しているものがあると信じていつか採掘を再開させようと考えている。

 しかし、帝国から「これ以上の採掘は月その物の崩壊に繋がるとの研究結果が出たため、月の採掘を再開するなら全面戦争も辞さない」と、帝国からメッセージが届き、当時の大統領が激怒。

 五年間続く採掘戦争を引き起こした。そして戦争に負け、太陽系連合に吸収されたが、国家としての自治権は残っているため、いまだに採掘をあきらめてはいないようで、常に太陽系連合軍から監視されるようになってしまった。

 現在の共和国大統領は「マキゾー・E・ゼンメツ」


 月が穴だらけなんだ。ちょっと見てみたいなぁ。工業都市かぁ。メカメカしいのかなぁ。

 サイバーパンクしてるのかなぁ。気になるなぁ。いつか行こう・・・。

 大統領の名前はネタなの?芸名?


A_本名です。


 まじか。他には?


A_商業連合国

 もとは小さなコロニーの集合体だったが、地球滅亡後、急速発展期とされている時代に、コロニー内で様々な食料や物が生産可能になった時から、多くの商売人が集まり始め、木星宙域に多くのコロニーが必要になった。

 このコロニーの集合体を儀礼的に商業連合と呼称し、その中で作り上げられた巨大組織商業ギルドを中心に、正式名称大銀河商業連合国が発足した。

 沢山コロニー作るなら一つ大きなものを作ればいいんじゃないかという一言により、太陽系内に存在する居住コロニーの中で最も大きなコロニー『首都巨大戦艦タイタン』が建設され、さらに多くの人々が集まった。

 だが、集まるにも限度がある、人大杉といわれるほどに膨れ上がった人口は、地球時代の総人口の十倍にも膨れ上がり、未だ増え続けているが、タイタンの改築は常時行われているため

 居住施設や商業施設が増え続けているとのことで、自立航行が出来るのかどうか不安視されている。


 は?

 すごくない?なにそれ!チョー気になるんですけど!

 総人口六百億人以上?ありえなくない?大丈夫なの?なんか心配になってきたんだけど?

 宇宙は広いなぁ。

 人間スゲーなーぁめっちゃ行って見たいんですけど。

 俺超田舎もんくせぇ!

 行ったら行ったでお上りさん確定だなぁこれは。


映像をご覧になりますか?


 いや、いい。見ない!自分で行く!

 その時に感動を取っておきたい!

 もう期待値が爆発寸前だぜ!うがーーってなるな!

 はぁぁぁぁ。マジで異世界なんだなぁ。なんかようやく実感出てきたぜ。

 そうだ!この世界にトラックってあるのか?


A_火星にのみ存在します。しかし地上専用の輸送車両は、使われなくなって久しく

 博物館に展示されているものがある程度だとされています。


 な・なんだってーー!

 まぁしょうがないかぁ。そもそも陸上輸送する意味がないんだもんなぁ。こんな優秀な宇宙セ・・・?

 そういえばこの世界の宇宙船って、大気圏下でも使用可能なの?


A_不可能ではありません。しかし宙空両用船ともなるとかなり高価なものしか存在しません。

 一般に出回っているものも存在はしますが、およそ個人で所有できる範囲を越えています。

 

 そうかぁ。木馬ってやっぱりスゲーんだなぁ。でもいつか個人でほしいなぁ!

 ドリームだなぁ!俺専用宇宙船!ロマンじゃね?

 そうだ。あれ。宇宙船ていくら位するもんなの?


A_ネットワーク経由で調べたところ最低金額。八百万クレジットでの出品が確認できましたが・・・。


 が?


保険適用外の違法改造のされた宇宙船の為、素人にはおすすめできません。

というより、製造名義が不明な船舶の為、所有すると、船舶製造法違反で逮捕されてしまうでしょう。


 ダメじゃん。オークションとかそういうのじゃなくって、メーカー品とかってないの?


A_あります。現在、宇宙船と呼ばれる80メートル級の小型船舶から、コロニークラスの百キロメートル級まで幅広い

 船舶が販売されています。メーカーもそれぞれクラス別、用途別など、様々なカテゴリーの船舶を販売するメーカーが存在し

 その数はおよそ大小合わせて二千社はくだらないとされています。ただしペーパカンパニーも多く、税金逃れのために存在するものも

 数多く確認されています。


 ほほぉおおおお!メーカーいっぱい夢いっぱい!

 ショールームとかあるのかな?!見に行きたいよワシ!


A_あります。ここから一番近いショールームは、ワイルドローズ社ですね。冥王星宙域にて個人所有船舶のシェアを70%

 占めている最大手のメーカーです。


 うほぉ!いいねいいね!超テンション上がってきた!近くまで行ったらぜひ寄ろう!

 てかそこ目的地に定めていいなじゃないか?

 もううれションしそうなぐらいテンション上がってきた!

 楽しみだなぁ!


楽しそうで何よりです。


 おうよ!


Q&Aプログラムを終了します


ーーーーーー


 うはーーー!なんか凄い色んな事いっぺんに勉強した気がするわぁ。

 めっちゃ楽しみだなぁ。

 観光気分もりもりだぜ!

 ん?なんだ?パトライト?回転灯つけた宇宙船とかあるんだ。


がごん


 おおぅ。接舷してくるのね?

 何だ何だ?

 というか、結局外からだから何が起こっているのかよくわからん。

 あれ?ああ、シャトル収納してくれるのか。

 ようやく降りられるかぁ。


しゅーーーー

ごうんごうんごうん


 ターンテーブルだぁ。子の宇宙船でっかいなぁ。ほかにもシャトルというか

 小型の宇宙船が三つもあるぞ?なんていうか。パトカー?

 パンダカラーじゃん?

 警察?


しゅーーーーー


シャトルの乗員に次ぐ君たちは完全に包囲されている諦めて投降しなさい。


 順番逆じゃね?

 てか逮捕される側なの?

 普通に助けに来てくれたのかと思ったんだが・・・。


ダダダダダッ

ダダダダダッ

ダダダダダッ


 うわっ凄いいっぱい出てきた。ぱっと見だけで50人以上いる・・・。

 あの上の方の階に居るのは狙撃犯かな?

 なんかちょっと趣は違うけど、日本の警察官の制服にちょっと似てるな・・・。

 というか普通に完全武装しているんですが何故ですか?

 なんかパワードスーツみたいなの着てる奴とかも居るんだが・・・?

 戦争ですか?


そこのシャトルの上でくつろいでいる奴おりて来い!抵抗する気か!


 いや・・・あの?くつろいでいるのに抵抗するように見えるのか?

 あぁ、命令に従えってことね?

 ハイハイ降りますよっと。


ざわっざわっ


 「と・飛び降りか?」

 「馬鹿な真似はよせっ!そんな高いところから飛び降りたら死ぬぞっ」

 「この船の中は1Gあるんだぞ!」

 「早まるなー!」

 「マットをだせ!」


 騒がしいなぁ。よっこらしょっと。


 「飛んだぞ!ネット!ねっとぉおぉお!」

 「マットぉぉぉ!」


すたっ


 華麗なYのポーズはどうよ。満点じゃね?


 「雨宮さん!大丈夫・・・みたいです・・・ね?」

 「おー、イントちゃん。やっと会話出来るところに辿り着いたねぇ。」

 「いやはや―どうにかなるもんだねぇ。」

 「ダーリン!心配してはいなかけど・・・あぶないですよ?あの高さから飛び降りるのは・・・?」


 先ほど自分が飛び降りた場所を見上げてみると、すげ-高かった。ぱっと見ビルの八階くらいはあるんじゃなかろうか?

 確かにこんなところから飛び降りたら正気を疑うわな。

 いやー。失敗失敗。


 「うははは・・・。ご心配をおかけしました。」


 ペコリペコリとごめんなさいのお辞儀を・・・?


 「かかか・・・確保――――!」

 「うわっ」


 なんか凄い人数がとびかかってきたぞ!何事!?

 逮捕されるの俺?

 ・・・・えーーー?


ーーーーー


警察組織の戦艦内部



 勘弁してくれよ――。

 何かもどこぞの警部に捕まった泥棒みたいになってるじゃん。

 ちょっと重いし。

 まぁ・・・ここで抵抗してもしょうがないか。

 自分の力はある程度把握したとこだしな・・・。


スンスン


 うっ・・・てか俺超臭くね・・・?

 体中カッピカピだし。って。そうだ。

 俺あいつに体当たりしてから、そのままだったっけか。

 まさかあんなに勢いが出るとは思わなかったなぁ。

 おいヤメロ。自分の制服に血が付いたからって俺の服に擦り付けるんじゃない・

 もっと汚くなるだけだろどう考えても。

 また手錠かぁ。


 「て・抵抗するなよ・・・?」

 「しませんよ。なんで捕まえられたのかもわからないのに。」

 「なに!あれだけの事をしておいてその言い草はなんだ!」


 あの海賊を爆散させたことか・・・?

 あれは・・・過剰防衛なのかな・・・?

 

 「よし歩け!」

 「あの・・・その前に。」

 「なんだ!」


 あ。一応聞いてくれるんだ。

 

 「体洗ったり洗濯したいんですけど・・・。」

 「・・・しかたないな・・・。」


 ふあーー!生き返る・・・ちゃんとしたシャワーだ。

 湯舟は入れられいないなぁ。まぁソコまで贅沢は言うまいて。

 先生ここはなんていう船だい?


ーーーーー


A_この戦艦の名称は、冥王星異窟監視大隊第1巡行艦隊所属巡洋艦『オナモミ』です。

 この船艇も内装こそリニューアルされて、居住性が上がっていますが、製造から十年ほどたったいわゆる

 型落ちの戦艦です。よく整備されているようで劣化などはあまり見受けられません。

 ハッキングしますか?


 いや・・・やめておこう。とりあえず成り行きに身を任せてみるよ。


了解。


ーーーーー


 「あーさっぱりしたぁ。おっここの服着てもいいのかい?」

 「さっさと着ろ!さっき来ていた服はもう処分した!

 「ありゃ。捨てちゃったのか。」

 「ほら行くぞ!」

 「ハイハイ。」


ーーーーー


取調室にて


カッ


 わっ!眩しっ。この世界でもこんなことやるんだ!刑事ドラマみたいだな・・・。

 妙に渋いおっさんと向かい合わせに座らせられると、俺がやりましたって言いたくなるなぁ。

 いや。ノリでさすがにここは乗り切れんだろうから、やりませんよ?ふ・フラグじゃないんだからねっ。


 「ではまず君の罪状について説明する。」

 「はい。」

 「まず一つ。殺人。二つ、海賊行為。三つ、誘拐。四つ、窃盗。五つ、強姦。六つ、傷害。以上六つの罪で君はここに居るわけだが。

何か反論はあるかね?」


 ・・・・・・・ほぇ?

 何それ。でも確かに・・・殺人は・・・やっちゃったし、海賊でも人間だ―とかいうならそれは仕方ない。調子に乗ったなぁとは思うし。

 でもなぁ。海賊行為と誘拐と窃盗・・・はあれか。強姦・・・?いやっあれは合意の上だった!傷害もあんまり覚えがないぞ…?


 「どーした?黙り込んで。心当たりがあるのか?」

 「というか、海賊に誘拐されたのは俺の方なんで、海賊行為と、誘拐と、強姦と、傷害はやってません。」

 「なにぃ?じゃあ後の殺人と、窃盗は覚えがあるんだな?」


 藪蛇だが・・・一応正直に言うか。


 「海賊は何人か殺しました。正直ちゃんと確認していないので。一人死んだのは確実ですが。

窃盗はこれですかね?」


 そういって俺はポケットから収納空間にアクセスし、あの箱を出した。


 「何だそれは?俺が聞いているのは、金の事だよ。」

 「はぁ。すみませんが、俺はここの金がどういうものか知らないので。わかりませんが。

少なくとも俺はこれしか持っていませんので。」

 「そうか。じゃあとりあえずそれは預かっとく。」

 「ダメです。」

 「何だと?おめがとったっていったんじゃねぇが!」


 あっ、なんかちょっとなまり方が可愛い。しまっとこ。


 「言ってません。持っているものを出しただけですから。」

 「ぐぬぬぬ。金って言うのはマネーカードのことだ!このぐれの!手のひらサイズの!

あっかいろのがーどだぁ!」

 「アッガイですか・・・・。」

 「そうだぁ!あっがい色のカードだぁ!」


 アッガイ色・・・。何色だったか・・・?

 いや違うか。赤か。


 「いや?知らないですね・・・。」


 もしかしたら服の中に入っていたかもしれんが。捨てちゃったらしいし。


 「あればレッドがーどど言っでぇ。1おぐくれじっど入ってんだぞ?つがっても

認証しでむで、すぐに足さつくかんな!」

 「えっ!電子マネーですか?んーーー。可能性があるとすれば、さっきまで俺が着ていた

服の中にあったのかもしれないですね?」

 「なんだそれは!そこに隠しだだ!」

 「いえ、さっき見張りしていた人が捨てたって・・・」


 刑事さんと思わしきおっさんが、勢い良く立ち上がったら座ってた椅子がぶっ飛んでた。

 パワーあるなおっさん。


 「今すぐさがしてけー!」

 「は!はいぃ!」


 見張りしてた人はダッシュで行ってしまった。

 そりゃ一億捨てたら恨まれるわなぁ。


 「ふーー。んでぇ。海賊だけか?やったのは。」

 「さっきも言いましたが、そのはずですが、確認はしていないのでわかりません。」

 「分からんで済んだら!警察いらねっど!」

 「怒鳴られてもわからないものは分からないですって。」

 「まぁ。それはともかく・・・おめがやったのはどいつだ?」


 そういって刑事さんは、数枚の写真を取り出して見せてくれた。

 その中には何枚か見覚えのある顔がある。


 「えっと、こいつですこいつ。このジンガラってやつ。」

 「なにい!おめ!賞金稼ぎかぁ!?」

 「いえ。まだ違いますけど?」

 「ほーか。他のはどうだぁ?」

 「見覚えはありますけど・・・あっ・こいつは近くにいたと思います。

もしかしたら巻き込んだかも・・・。」

 「ふむふむ。ハルキ・ナカメグロだな。こいつは転生者なのによくやっづけだなぁ。」

 「えっ?やっぱりそうなんですか?」

 「なんだしらんがったのが!」

 

 何か転生者って普通にいるんだなぁ。話安くていいかも。


 「全く。俺もついこの間転生してきたばっかりなんで。」

 「そうだったがぁ。そいつは大変だったなぁ。」


 何か雰囲気が柔らかくなったな。ちょっといいおっさんか?


 「いや、まぁ。」

 「そかぁそかぁ。俺も久しぶりに転生者に合えでうれしいなぁ。

実は俺も転生者なんだぁ。」

 「えっ!そうなんですか!?」


 今日一で驚いたわ。


 「うむ!秋田県出身、後藤祐作だぁ。よろしくなぁ。昔っから刑事やってるんで

頑張って軍警察入ったんだぁ。」

 「そうだったのかぁ。おっさんも苦労したんだなぁ。」

 「お!おっさんいうな!まだ30歳だ!」

 「年下かよ!超渋い顔してるから普通におっさんかと思ったわ!」

 「おめさいくつだ?」

 「34歳。」

 「ちょっと年上だなぁ。でも!この世界は俺が先輩だぁ。」

 「そうだな。俺は、雨宮銀河。サラリーマンやってた。」

 「商社勤めのエリートさんか!すげなー!」

 「いやいや。中小企業のしがないおっさんだったさ。公務員のほうがスゲーって。」

 「そがぁ?照れるなぁ!」


 がははと、大きな口を開けて笑いあう。


 「それはそうと。雨宮の兄貴、今回の逮捕はちょっときな臭いんだぁ。」

 「なんだぁ?どゆことだぁ?」


 イカンうつった。


 「うはは!うづっだかぁ。というのもな。この辺りは冥王星宙域なんだけんど

どうも、よその宙域のお偉いさんが関わってってきでるんだぁ。」

 「よそ?管轄外の奴が首突っ込んできてるってことか?それってどうなんだ?

なんか警察って縄張り意識が強いってイメージがあるんだが。」

 「そんとおりだょぅ。もうすっげ上司がカンカンに怒っててよ。」

 「ほぉー。聞いてもわからんけど因みにどこから口出されてるんだ?」

 「それがよ。海王星宙域方面警察からでよ。なんかわかんねことだらけだなって。」

 

 ちょ。そんな簡単に・・・。機密情報じゃないのかその辺。


 「海王星かぁ覚えとこ。」

 「んだ。あすこはちょっと危ないからあんまり行かね方がいい。」

 「あぶないって?なんかあるのか?」

 「んや。あすこ実はつい最近、ダンジョンからモンスターが出てくる

すたんぴーどっちゅうのがあって。モンスターがいっぺぇいるんだとよぉ!」

 「ダンジョン!モンスター!スタンピード!なんかときめく名前出てきた!」

 「いや、キラキラした目で言われでもなぁ。あぶねから。」

 「おっ、おう。そうだな。」

 「あっちの方のモンスターはおっかねぇんだ。何よりでっかい。」

 「ほうほう。そりゃドンぐらいだ?」

 「そだなぁ。この船よりでっかいかもしれんなぁ。」


 うあぁ。なんかカチッときたわぁ。ハマった。今まで気になっていた事

異世界からの侵略の事。忘れていたわけじゃないんよ。どう話していいかわからんかったけど。

そのデカいのはなんとなく想像がつく。たぶん俺も見たことがある。そんなデカいモンスター

俺の記憶の中にはあいつ等しかいない。


 「なぁそのモンスターってもしかして、目とか鼻とか口みたいなやつか?」

 「おおーそれだそれ。よく知っていたなぁ。」

 「目の前で見たことあるからな・・・。」

 「んぉ?海王星は行ったことあるんか?」

 「イヤ無い。だが、この世界に来る前に見た。」

 「ほー。とすっと、神様んとこでかい?」

 「神様?」

 「ほれ、なんつったっけ?べーろぺ?だっけか?」

 「ベロペか。」

 「んだぁ。」

 「あー。」

 「どしたぁ?」


 ああ・・・ここは言うべきなんだろうけど、むしろここで言わないでどこで言うんだっていう話でなぁ。

 あれは、伝わるはずなんだが・・・。


 「なぁごとぅー。」

 「何だい兄貴?」

 「そのベロペから伝言があるんだが。」

 「ほぅ!神様から伝言ってか?おれにかぃ?」

 「いや、お前にってか、警察ってか軍にな?」


 ほんとに伝えて大丈夫か・・・?イントのこともあるし

危険じゃないか…?どうする?俺!


 「えーっとな・・・。ちょっと言いにくい事なんだけど・・・。」


 ままよっ!


 「いいか。俺の話じゃない。あくまで、ベロペの伝言な?」

 「ゴクッ・・・。お、おぅ。」

 「この世界は、別の世界から侵略されている。」

 

 あぁ・・・。気まずい・・・。頼むから一回で信じてくれー。

こんな中二的な事二回も言いたくねぇ!


 「もうちょっと詳しくわかるのけ?」

 「俺自身はそこまで詳しくは分からない。あくまで伝言だからな。

実際に見たのは一回だけだし、目的とかもわからん。ベロペがどういう理由で

侵略と判断したのかもわからん。そして、お前の言う神様がベロペの事なら、神はもういない。」

 「ちゅ、ちょっと待ってくれ兄貴。その情報だけだと。俺はともかく、組織として信じることはできねぇよ。」

 「わかってる。みなまで言うな。俺だってお前の立場だったら信じられん。あるかもとは思うが、な。」

 「じゃぁあれか?あのでっかいモンスターは、異世界からここをぶっ潰すために送り付けられてきているってことか?」

 「そうなんじゃないかとは思う。」

 「兄貴、俺も資料映像でしか見たこったねぇけんど。ありゃ相当つえーぞ?映像が撮影されたのがもう二十年位前だけんど、当時最強と言われていた、冥王星方面軍の第一艦隊でも、二・三匹倒すのが精いっぱいだんだど?正直今どうなってんのかは殆どわからんけんど、そんなに状況が変わってると思えんぞぉ?」

 「むしろその話を聞いて俺は余計に納得している。そんなに前からその状況だったなら。

もしかしたらもう、海王星は陥落しているかもしれないな。」

 「そ・・・それは無いと思うけんどなぁ。一応戦艦も日々進歩しとるし、数もどんどん増やしとるはずだで。全滅っちゅー事は・・・。」

 「状況が分からないんだろ?ならちょっと悪いほうに考えてみろよ。スタンピード起こったんだろ?

モンスターいっぱい出たんだろ?外に。じゃあその道中に居たやつらは無事か?その出てきたモンスターは、どのくらい生きてるんだ?何匹倒せたんだ・・・?そもそも、そのダンジョンの奥には何があるんだ?」

 「ま・待ってくれ兄貴。わからないんだ。海王星から連絡が無いんだよ。」

 「それは何時からだ?」

 「・・・五年前くらいからだと思う・・・。」

 「そんなに前から!?何でほっといたの!?」

 「わかんねーんだょー!お偉いさんの方針だから・・・。俺等みたいな下っ端にゃーわからんのよぅ・・・。」

 「ふぅー。悪い。ちょっと熱くなっちまったな。」


 あー・・・。俺もちょっと自分の力を過信していたわぁ。

 何とか出来るかもしれないとかちょっとだけ思ってたわぁ。

 ちょっと無理じゃね?


 「・・・。そうだ。話は戻るが。俺は逮捕されんのか結局?」

 「あ・・・。いや多分大丈夫なはずだけんど・・・。普通の案件じゃないから何とも・・・。」

 「そかぁ。お前偉くなれよ。」

 「へ?」

 「俺も自分なりに頑張るからさぁ。お前はここで偉くなれよ。そんで手伝ってくれ。

多分俺一人じゃ何にもできないから・・・。」

 「お・・おぅ。」


 ん?誰か入ってきた。


 「お待たせしました!カード発見です!ありました!それと・・・。うわっ!」

 「どけっ愚図刑事が・・・。雨宮銀河だな。お前は被疑者不在の簡易裁判にて、S級犯罪者に認定された!」

 「はぁ?」

 「な・なにいてんだおめぇ!簡易裁判でS級は認定できねぇんだぞ!」

 「ふっ・・・これだから冥王星の田舎刑事は・・・。教えてやろう。

そこの雨宮銀河は、捕虜になっていたホテルのレストランのウェイター、イント・ロを殺した所を目撃されている!彼は一般人だ!海賊ではない。」

 「そもそもあの船の手配者は海賊じゃないんだけんどな。」

 「なんだと!海賊でなければ何だというのだ!」

 「ほんじゃちょっと説明させてもらうけ。あいつ等は、今一番軍の手薄な部分、海賊対策部門を狙って偽装している。

偽装海賊団っちゅ―テロリスト組織の一員だぁ。おめさんも名前くらい聞いた事あんだべ?」

 「馬鹿が!テロリストだろうが海賊だろうが関係ない!そこの雨宮銀河がイント・ロを殺したのは事実だ!」

 「馬鹿はあんただて。そのイントロってのが海賊やテロリストじゃないっちゅ―証拠でもあるんけ?」

 「fふ・・・ある!」

 「ほないうてみー。しょーもない事だったら。偽証罪と公務執行妨害がつくでな!」

 「ぐっ・・・。農場経営者の息子だ。メッサー氏が見ていたと証言した。」

 「あのとんちきボンボンがか!?そんなもん捜査もせんで信じるのか?」

 「・・・黙れ!もう決定したことだ!裁判は既に終わっている!そいつを連行しろ!」


 ドナドナが聞こえる・・・・。今度はどこに連れていかれるんだよ・・・。


 「分かったわかった・・・暴れないしついて行くから・・・。引っ張んなって。」

 「兄貴っ」

 「ごとぅー。偉くなれよー?」

 「わかった!俺てっぺんとるから!兄貴の手伝いすっから!」

 「またなー。」

 「訳の分からんことを・・・さっさと行けっ。」


ーーーーーーー


 「・・・・・。なぁ都会の刑事さんよぉ。」

 「なんだ田舎の刑事。」

 「おめさん、ちゃんと調べたんけ?」

 「だまれ!俺だって調べたさ!どう考えてもおかしい事だらけだった。」

 「やっぱりそうだろ。」

 「だが・・・!こんな明らかな無実の人間を・・・。」

 「ちょっとまった。俺その話初耳だ。」

 「なに?」

 「まぁすわれよ。」


 すっかり時間が経ってぬるくなったお茶を注ぎながら話し合う。

 

 「兄貴。雨宮が全くの無実だってのは聞いてないぞ?」

 「どういう事だ。お前も証人には話を聞いただろう。」

 「もちろんだども。捕虜になってた人たちに、奴隷にされていた人たち、退役軍人もいたな。」

 「ああそうだ。」

 「捕虜の話はあまり参考にならなかったが。奴隷と、退役軍人の話だ。」

 「なんて言ってたっけな・・・とあったあった。」


 パラパラとメモ帳を開いて記憶を手繰り寄せる。


 「奴隷は・・・トマト農場の妹、シンディー・トマトパンツ、兄のメッサ―・トマトパンツ、農耕エンジニアのグーディー・メンチ

シンディーの部下チャパリ・ナントラー、同じくシンディーの秘書リュン・チュン。」

 「退役軍人は、ロペ・キャッシュマン元大尉、アミィ・イルパラージュ元大尉、イント・ジャーマンスープレックスイオタ・レックス元中尉。」

 「お前さんはメッサー氏の発言であすこまでもってったんだな?」

 「ああそうだ。だがな。上司にそれを報告したとたん、略式裁判が決定した。」

 「強引にもほどがある。他の人の話は?」

 「もちろんしたさ!特にシャトルを操縦していたキャッシュマン女史には、決定的に相反する証言を得ている。」

 「俺はその人話聞けてないな。」

 「多分私が話を聞いていたからだろう。彼女はこういった。「海賊の親玉がつぶれたトマトになった頃には、全員シャトルの中に入っていた。

シャトルは構造上後ろを見ることはできない。見ることが出来たのは操縦席に居た私と、隣に座っていたイントだけだよ。モニターでね。

そしてシャトルは外に出るために、騒動のあった倉庫入り口に後ろを向けていた。すぐ出なきゃいけなかったんだ当たり前だろ?」と言っていた。

彼女の証言に不審な点は無い。私はそれが真実だと思う。」

 「つまりメッサー氏は嘘をついたと。」

 「そうだ。シャトルはここにきてすぐ見に行った。彼女の証言に間違いがない裏も取れている。」

 「はぁぁぁ・・・わし兄貴に恨まれちゃうかもしれんのか・・・。」

 「いや・・・今回の件は私に責任がある。彼の無実を・・・。捕まえさせた私が言うのもおかしな話だが。晴らすように動いてみようと思う。」

 「できんのかぁ?そんな・・・ってウチの上司も最近おかしいんだよなぁ。そっちのこと言えんな。」

 「なにっここでもか。」

 「ここでもって、他でもなんかあるんかい?」

 「あるなんてもんじゃない。まともに機能している警察のトップは今や、火星宙域だけだ。

あそこは帝国の息がかかっているから、クズは粛清される。」

 「という事は他はもう全滅か?」

 「ああ・・私の同期や先輩方にも話を聞いたが、ある時を境に豹変した人物もいる問うことだ。」

 「そりゃ穏やかじゃねぇな。その時期って言うのは。」

 「採掘戦争の間だそうだ。」

 「きな臭い・・・スッゲきな臭い臭いがプンプンするぜ。」

 「やはりそう思うか。物は相談なんだが君に紹介したい人がいるんだ。」

 「紹介?俺は偉くならんといかんのだぞ。妙なしがらみは・・・。」

 「大丈夫だ。君ならもしかしたうわさ位聞いたことがあるはずだと思うが・・・。」

 「なんだぁ?もったいぶって。」

 「君なら紹介できると思ったんだ。『猫耳保存委員会』に。」

 「まさか・・・・!実在したんか!都市伝説のたぐいかと思ってたわ・・・。」


 あまりの驚きにお机から茶碗が落ちそうになる。


 「来てくれるかい?」

 「伝説の組織に誘われるちゃ―。悪くない。いこうか。」


 そして取調室の外に出る二人。


 「「「「「ようこそ!至高の世界へ!」」」」」」 


 色とりどりの猫や犬を抱いた者たちに、後藤は大歓迎を受けた。


 「な・・・なんじゃこりゃーーーー。」

 「ようこそ。至高の世界へ」

 「わしはアレルギーなんじゃーーーーーー。」


 涙と鼻水でぐずぐずになった顔を一斉に舐められる後藤であった。

 

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