第三世界トラブルツアー ~世界すくってほしいんだけど?~
もろよん
プロローグ
ピピピピッ ピピピピッ ピピピッ
鳴り響く目覚ましの音にゆっくりと頭が覚醒する。
「仕事行きたくねぇ・・・」
布団のそばに置いてある目覚まし時計を掴んだ。
渾身の力を込めようとしてやめた。
壊してもどうにもならないのは分かってる。
今日もきちんと寝られた気がしないなぁ。寝不足で頭が重い。
血の巡りが遅いのか体も重い。
汚い部屋の敷きっぱなしの布団から目を覚ましたのは、私、雨宮銀河です。
34歳独身、振られた彼女のことを何年も忘れられない34歳独身です。
「はぁ・・・飯食って仕事行くかぁ」
いつもの四枚切りの分厚い食パンを、電子レンジのに放り込んだ。
トーストモードにしてスイッチオン。
その間に軽くシャワーを浴びて出かける服装に着替える。
と言っても通勤の時はいつも同じ服装なんだけどね
ダークグレーのスーツにお気に入りの赤いマフラーをまくと、とても気合が満ちて…来ない。
くったくたのダウンジャケットを羽織って、すでに焼けているトーストに、マーガリンを塗りたくってかぶりつく
「時計よし、スマホよし、財布よしキーもよし」
指差確認よーし。さっさと行くかぁ。
原付のセルを回して出発・・・
きゅるるっ・・・・きゅるっ・・・かしゅーん
「ぐあっ調子悪いな」
冬も近づく十一月、俺とともに十年を超える月日を乗り越えてきた、愛車のチェスタ君も大分くたびれてきた。
一緒に何度もこけたっけなぁ・・・白線許すまじ。
ぶるるる・・・・
「おっ?かかったか」
会社の従業員寮に住む私の通勤時間は短い。原付なら十分もかからない距離だ。
いつもの砂利で滑りそうな農道を越え、いつもの視界不良で轢かれそうになったことの何度もある合流地点を越え・・・。
着くの早いわな会社。到着っと。
会社の駐輪所に原付を止めメットインにヘルメットを突っ込む。
「よっ。おはようさん」
「おっす」
アフロヘアの同僚、名取伸二。
チャラい雰囲気だがその実、内面はガチガチの営業マンだ。
お互い同期入社で、可もなく不可もなくのレベルを維持したい。
そんな同盟をやってきた。
その甲斐もあって、二人とも昇進はせずいられて
ずっと平社員のままでやってきたが・・・。
「俺結婚することにしたんだ。祝ってくれよ?」
「うん?おめでとう?」
「なんで首傾げてんだ」
「彼女いたのか?」
「いや。いない」
「そか」
いつものくだらないやり取りだ。このおかげで救われてきた。
今までは・・。
昼休みーーーー
言おうか言うまいか悩んでいたが、こいつには言っておくか
「名取」
「おー」
「俺会社辞めるわ」
「おー?」
「そんな感じ」
「マジかぁ」
「マジマジ。退職届もう出してある。門出を祝ってくれよな」
「あー。ギャグか?」
こいつ朝の突っ込みを根に持っていやがる。
目がもうこれ以上ないくらい気が抜けていやがる。
「ちがうガチでマジな奴だ」
アフロの上に手を置いて…頭を抱えて盛大な溜息をつきやがったこ奴
「マジかぁ。同期入社の奴はもうお前しかいなかったのに辞めちまうかぁ」
「おぅ。もういいかなって」
「転職でもすんのか?」
「そのつもりだけど何も決めてない」
「ニートか!マジうらやましい!」
ニートじゃねぇし!フリーターだし!・・・あんまり変わらんか。
「いやでも、見切り発車だなそりゃ。社員になるのってやっぱ今の年齢だと大変じゃね?」
まぁもっともなんだけどね
「そうなんだが、俺は別に社員に特別価値を感じてないから」
「あー。そう言えばなんかそんなこと言ってたっけなー」
飲み屋で飲んでた時に話したことあったっけな。たしか。
時計を見ると昼休み終わりにはちょっと早い時間だが、少し用事がある。
「悪い名取、この後お上に呼び出されてんだわ。ちょっと先行くな」
「おぅ」
名取はまた頭を抱えてマジかーと、ため息を漏らしていた。・・・悪いな。
応接室にてーーーー
「悪いな昼休み中に呼び出して。まぁ座ってくれ何か飲むか」
出たよこれ、テンプレかっ。でも奢られちゃう。
「あっ、すみません、じゃあコーヒーで」
ガタンッ・・・ガタンッ
「一応何の話か分かっているとは思うが、本当にやめるのか?」
めんどくさいな・・・
「はい、もう決めたことなんで。もう届けって受理されてるんですよね?」
「まぁ・・なぁ。でもな?今ならまだちょっと頭下げるだけで辞めるの止めました、っていうのもアリだぞ?」
あー・・・あー・・・
「いえ。しません」
ため息つくなよ・・・こっちの気も知らないで・・・
「まだ転職先見つけてないんだろ?こっちで働きながら探しても遅くないんだぞ?」
あぁー・・・あー・・・いや・・私は我慢する男。なるべく他人は傷付けない男。
以前彼女と別れた時に誓ったのだ。もう誰も傷つけまいと。実行に移せているかはさておき。
「そうなんですけどねぇ。もう決めたことですし」
何か考えてるけど…そろそろ折れないことに気付いてほしいもんだ。
大体こう言うのって言いだした時は既に心が固まった後なんだよ。
最初から説得の余地なんてないんだよ。
無駄に時間取らせたくないんだよ。
会社にも他の皆にも迷惑掛かるの判ってるけど、もう駄目なんだよ。
この場所に居たくないんだよ!
「そうかぁ、ここきて何年になる?」
「十二・三年ですかね?」
「そうかぁ、お前さんたちの世代としては長いほうだよな」
語り始めた…これまた長くなる奴か?
「そうですね、でもまだ名取もいますし」
「いやそれがな」
ん?なに?係長腹痛そうだな。ずっとさすってる。
「名取も今月で退職することになってるんだよ」
おーっとぉ?全滅ですかぁ?
「あーそうなんですかぁ、知らなかったです」
あの野郎、頭抱えてたのそっちの理由か。
「中堅どころがどんどん居なくなっていくのは痛いが、まぁ、それでいいならしょうがないか」
「なんかすみません」
「いや、謝るようなことじゃないさ」
そういって解散した。にしても、あいつも辞めるのか、そか。
終業後ーーーー
第一名取発見。くらえ水平チョップ。
「おーい」
「うぇっ」
決まったな。振り向きざまに喉元めがけてのチョップ。これは効いたろう。
「何すんだテメー!ビックリしたじゃねぇか!」
「なんか言う事あんだろ」
ホレホレと原付のキーで突っついてやる。
「やめろよ、悪かったって!おうっ!脇腹はやめろよ!弱いんだっておうっ!」
「まぁいいか」
いいならやるなよと、ジト目で見てくる名取を放置して駐輪所へ向かうと、走って名取が追いかけてきた。
「この後行くだろ?」
酒か・・・まぁいいかもう残すところ数週間だし行っとくか。
「原付置いてからな」
「俺も車置いてくるから。寮の前でな」
飲み屋にてーーー
通りに面した古い…古風な佇まいの、粋な老舗居酒屋。その名もヨモツヒラサカ。縁起でもない名前だな相変わらず。
なんでも此処の居酒屋は蔵元が経営しているらしく、その蔵元の作っている酒の名前からとったとかなんとか。
確かにここの日本酒はうまい。あまり酒の得意でない俺にも飲める酒だ。
個々の日本酒だけを飲んで悪酔いすることはなかったな。
いつもの如く会社帰りのサラリーマンやOLなど、たくさんの人がやってきて酒盛りを楽しんでいる。
この居酒屋独特の雰囲気は嫌いじゃない。
俺たち二人はいつものカウンター席に座り今日のお勧めに目を通した後、カウンター越しに店長に直接注文を通す。
ここに来たら頼むものは大体決まっているが・・・ここは焼き物がうまい店なんだが俺が好きなのは・・・。
「たこわさと生ください」
「あいよっ」
「おれは・・・そうだな。レバ串とムネモモ塩で二本ずつ。あととりあえず生!」
「あいよっ」
ここの店主のおっちゃんは気風が良いというか、元気というか、生き生きしてるよなぁ。
羨ましいぜ。その活力分けてほしい。
「「乾杯」」
ふぅ。やっぱ生はいいな。なんて別に思わないし、酒も別に好きでもないんだが、こういう店の喧騒に飲まれるのが好きなんだよなぁ。
そして俺は実は炭酸が苦手だったりするのでチビチビとジョッキに口をつける。
名取の奴はと言うと、がぶがぶ飲んでいる、あ、一気に行きやがった。
「はぁーーー!このいっぱいのために生きてるなー!マジで」
「お前ビール好きだなー」
「当たり前だろー!飲まなきゃやってられるかってんだよ!あ、おねーさん生お替りねー」
この飲み屋に来る理由のもう一つの理由は、バイトらしき美人さんの存在だ。きっと彼氏いるんだろうなー。
美人は大体他人のもの。はいこれ真理ね。テストに出ますよー。
「で?」
名取の奴急にマジな顔になりやがって・・・。
「お前が飲みに行くのについてくるってことは、何か聞いてほしいことがあるんだろー?愚痴れ愚痴れ―!」
こいつは全く・・・もう酔ってやがるのか?
「別に大したことじゃないよ。おまえさぁ。トラック好き?」
「トラックぅ?あのトラックかぁ?なんでまた?」
「俺今の会社入らなかったら、トラックの運転手になりたかったのよ。なんかさ長距離は大変だろうけど、あのいろんなところに
トラック飛ばしていくのがいいなーってさ。あ、でも分かってんだぜ?大変だってのは観光じゃ無いし
とんぼ返りが基本なのか知らんが、体にきつい仕事だってのはさ。」
「ほむ」
「デコトラとかも嫌いじゃないんだぜ。でもな、トラックはやっぱり大型のフォルムがな?」
あ、こいつもう飽きたな?レバ串かじりついてやがる。
「えい寄こせ。」
モモの焼き鳥をかっさらった。うまいな塩。
「あ、こら!たこわさ食えよ!」
「いいか?トラックってのはな?あの武骨なフォルムが素晴らしいんだよ。わかるか?」
「わかんねー」
ケラケラと笑いながら・・あっ俺のたこわさを・・・。
「おっちゃん砂肝!」
「あいよっ」
「トラックは?」
ああもう話が進まねー。てか、なんか外が騒がしいな?というか揺れてないか?地震か?
もう酔っちゃった?いやそんなあほな。まだ一杯しか・・・いや半分も飲んでねーよ。
「ああもう、俺の焼き鳥ばっか食うんじゃねーよ。お前廻ってねぇ?」
「昔から酔わないの知ってんだろ?ってか外うるさくね?」
「ん?」
なんかすごいバキバキ音がするんだが・・・?何の音だ?
「おたみちゃん!ちょっと外見てきてくれる―?」
「はーい」
おお、あの娘おたみちゃんってのか。じゃなくって。
「見に行ってみるか」
「だなー」
おたみちゃんの後ろについて、俺たち二人が店のスライドドアを開けたところに見えたのは・・・。
光。強烈な光だ。一瞬、おたみちゃんだったと思われる何かが俺の顔面を直撃したような気がする。
これもしかして、死ぬ?
すべてがスローになって見えたような気がした。
走馬燈かな?思考だけが正常に働いているような気がする。
すべてがあいまいになる。
名取がいない・・・?
ま っく らに なっ た
?????ーーーー
・・・・・んあぁー?なんだかすごくよく眠っていたような気がする。目を覚ましてあたりを見回してみると、やけにサイバーパンクなところだなこりゃ?
しかもなんかちょっと揺れているし。焦げ臭い臭いとか、嗅いだことのない臭いがする。遠くですごい爆発音とかするんですけど。何此処?
てかさっきから、ぐいぐい両腕を引っ張ってるのは誰だよって、あっ!
「名取じゃん。それに、おたみちゃん?だっけ」
「お前冷静だな!」
「はいぃぃ」
名取はすごい興奮してるし、おたみちゃんはめっちゃ泣いてるし、なんなんだよ一体これは・・・?
キョロキョロあたりを見渡すと、さっきからずっと気になっていた巨大モニターに、何かすごい数の謎の生物らしきものが移っている。
なにこれ?エイリアンでももうちょっと可愛げのあるフォルムしてるぞ?目ン球だけでふよふよ浮かんでる奴やら、唇に足が生えてるやつもいるな。
ん?なにこれキモイ。鼻?でかいな!っていうか、キモイな!超キモイ!なんだこれ?ようやく頭の中がはっきりしてきたぞ!
新鮮なトマトを叩き潰したらこんな感じになる。というのを見せつけられる感じだなこれ。
巨人がモニターに映りこんできた。おお!巨人つえー!ああぁでもグロい!鼻の化け物がけさぎりにされてブチャッて・・・飛び散った。
「お前何見てんの?ってうわぁ。グロ映像?」
「あ・あの・・なにが・・・ってぎゃぁ!」
二人ともモニターに気付いたのか、肉片が飛び散ってふよふよ浮ぶ映像を見てドン引きしている。
おたみちゃんに至っては、生まれ立ての子牛のようにプルプルしてる。顔面泣きはらして目が真っ赤だし、鼻水と涙でかっぴかぴやんけ。
確かにグロい。でもまだ大丈夫って、俺も混乱しているな。何が大丈夫か。
「これはどこの映像なんだろうな?」
うっ。また新しい化け物が出てきた・・・。何アレ耳?なんか耳から耳毛がワッサーってなってる。ワッサーって。全体的に。
しかもなんか赤黒い、穴の部分からなんか汁みたいなのが出てきたぞ?
「うわぁぁぁぁぁぁぁん!なにみてるんですかぁ!グロいのやだー!うわぁぁぁぁぁぁぁん」
おたみちゃん、ちょっと引くレベルで泣き始めたな・・・さすがに放置はよくないか。
「ごめんごめん、なんか映ってたから気になっちゃってさぁ」
「そうそう、こいつグロ映像に目がないからさー」
おいコラ名取、適当なこと言うなよ。嫌いじゃないけど好き好んで探したりしねーよ。
「おいなとr。ぐえっ!」
んななななんだ!?いきなり上からなんか降ってきたぞ!いてぇ!腰逝っちゃってないだろうなぁ。三十代なめんなよ…?
「おぉおお!なんだこの人!・・・すげ―カッコしてんな・・・エロい・・・」
「ひゃぁぁぁ。チラッ・・・チラッ」
なんだよ早く除けてくれよ、まったくもう・・・。くそっ、幸せな感覚するじゃねーか。若干思い出したくない過去を思い出しそうだ。
「あいたぁー・・・っと・・・あーごめんごめん。ここしか道がなくてさー」
悪びれずにへらと笑いながら、起き上がる…痴女?えらいカッコしてやがる。
写メ取りたい。
レオタードに鉄板を張り付けたような服装というか、もう服と形容していいのかどうかわかないなこれ。
ボディペイントですとか言われてもハイそうですか。で通りそうだな。
ともかく、胸は一部しか隠れてないし、股間も毛が見えないだけだ。
後ろは・・・見ないでも想像つくわ。
ヘルメット、みたいなものだけが妙に物々しいが、腰のホルスターのようなものに提げられているのは、多分銃だろう。
ハンドガンみたいなものが入っている。
彼女は俺に手を差し出して、起き上がるように促してくれるようだ。
「ぎっくり腰になったらどうしてくれんだか。」
「だからごめんってばさ!っとそれどころじゃないんだよ、今大変でね?
そこのモニター見ていたら分かるかもしれないけど、今ここは侵略を受けていてね?
戦争中なのよ!負けそうなんだけど!助けてぇ!」
自己完結してる?話しかけられてよな俺たち?
「なあ名取、もう帰ってもいいかな?グロ映像を見せられて乗っかられてけっこうしんどいんだが?」
「あ・あぁ俺も帰ろうかな・・・てどうやってどこに?ってかここどこだよ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁん」
おたみちゃん良くそこまで泣けるもんだ。からっからになりそうだな?
痴女が正気に戻ったらしく、何やらこめかみのあたりをぐりぐりしている。
「えーっと、時間がないので簡潔に説明します。あなたたちは試験用第二広域開拓世界において、肉体の消滅を確認しました。それに伴い高密度精神情報体である、あなた方の所属が私の管轄である第三超広域開拓世界に変更されました。そして今、この世界は他世界からの侵略を受けています。その世界の目的は私の管理する世界の権限の奪取。つまり私の破壊もしくは融合と思われる。そこで私はかねてより他世界からの転移・転生者を受け入れて防衛の準備を進めていましたがその防衛機構がほとんど機能していない実情を確認しています。故に直接あなた方をここへ呼び寄せその防衛機構を作動若しくは活動させてほしいと考えメッセージを伝えました。私の使者としてこの世界を守るために力を貸してくれますか?」
急に早口に捲し立ててきた!所々(早口過ぎて)分からないところがあったが…。うん。なんか困ってんだな。
「とりあえずなんか困ってることは分かった」
「それだけ!?」
「早口で聞き取れなかったし」
「あ、俺も」
「私もえーっとから先は全く・・・」
おたみちゃんそれはちょっと・・・。でも難しい単語の中に転生者ってのだけ聞き取れた。
「何か質問がありそうなんだけど、今すごく忙しいというか、危機的状況なんだな。ここが突破されると、奴らが私の管理世界に雪崩れ込んできてしまうんだよ。
あんな恐ろしいデカさのモンスターが、人類の繁栄エリアに入り込んできたら太刀打ちできないんだ。少なくとも今この時では。
正直奴らが攻め入ってきてからかなりの時間が経っていて、現状を全く把握できていないんだ。私の管理世界には、奴らに対抗するために
必要なものが、沢山散りばめられている筈なのに誰も助けに来てくれないんだよ!」
すごく興奮しているが、全くと言っていいほど話についていけんな。ん?後ろのドア?が開いたぞ?
「ここにいらっしゃいましたか上位管理者。いったい何をしているのですか。急いで前線に戻っていただかないと
これ以上我々では前線を抑えきれません。」
「おまっ!ここへ戻るルートは上からしかないと言っていなかったか!?今普通に扉から入ってきたよね!?」
「ええ嘘ですから」
「どういうことなのか説明してもらいたいものだねぇ!」
「ですから嘘ですから」
「ですからですからじゃわからないんだよ!ってそんな場合じゃない・・・。」
よくわからんが新しい人が来たな誰だか知らんがからかって遊んでるのかね?
「あのー?で、具体的に何をすればいいんですか?結局よく分からないままなんですけど、なんかしないと大変なんですよね?」
「わかってくれた!」
「イヤだからわかんねーって」
これはいったいどうするべきかね、とりあえず手伝わないことにはどうにもならないような気がしたので、あれだ。
ゲームなんかでいう無限ループの選択肢の先にあるものを見てみたいと思って、延々『いいえ』の選択肢を選んでいて何もなさそうだから『はい』にしましたって感じだな。
そう。とりあえず適当にでも進みそうなことしないと、どうしようもなさそうだし。とりあえず、だ。
「とりあえずこの世界が大変で、あの化け物が襲ってきそうだから助けてって伝えに行けばいいのか?」
「うん。だいたいあってる」
「いいんですかそれで?」
「じゃあ後は君に任せたよINTOE私は行く!」
「お任せください上位管理者」
今度は痴女がちゃんと扉から出ていったがこの男?なんだって?いんとえ?っていったか?
「で、いんとえさんだっけ?私たちは何をすればいいんですか?どっか行きます?」
こちらの目をじっと見てくる彼の眼は、人間のそれとは違って見えるな?俺の見たことのある目と違うなといっても、人と目を合わせるなんてそんなに無いんだから
比べるものも特にないが。
「リサーチ完了しました。あなた方が我々より高次元である、第二世界帯よりこちらに来られたことを歓迎いたします。私の尻ぬぐいに来てくださってありがとうございます。」
「おいなんだしりぬぐいって!」
思わず突っ込んでしまったじゃないか、いや尻にじゃなくてね?ツッコミね?
「言葉の通りです。この度の他世界からの侵攻はもとはと言えば私が、不用意にこの世界の座標データを他の管理者の目に届くように発信してしまったせいなのです。」
「なんかよくわからんが、お前の失敗か!」
「いいえ」
「どっちだよ!」
「すみません嘘です」
「だからどっちが!」
埒が明かないなぁこの野郎・・・。
「さっきの痴女みたいに簡潔に説明してくれよ。ゆっくりと」
「分かりました」
「嘘つくなよ」
「ッチッ」
こいつ舌打ちしやがった・・・!ちょっと殴ってやりたい。やらないけど・・・。
「分かりましたよく聞いてください。上位管理者があなた方をここに招いた理由の一つは、我々からのメッセージをこの世界に住まう者たちに届けること
そして、防衛に当たる準備が進んでいなければその準備を手伝うこと、最後にこの世界でのあなた方の地位を確立すること」
伝言、そんで準備、地位?何の話だ?
「他の二つは分かった。だが最後の地位ってなんだ?たけおか?」
「たけおに関してはよくわかりません」
そこだけ突っ込むのかよ。ボケるんじゃなかった。
「地位とは、あなた方の存在情報を確立するのに最もてっとり早い方法として手に入れるべきものだと判断したまでです
例えば組織の長になったり、国王のような民衆を率いる存在になったり、そんなところです。これが必要な理由は・・・」
!!
どごぉぉぉぉぉぉぉん!!
ななななな!
っかっかか壁がなくなった!
「93@@lkふぃいほ8884$$%”」
「いけませんね、説明している時間はないようです」
「きゃぁーーーー!キモイのイヤー―――――!」
うはぁ!おたみちゃんカットインしてきたよ!耳がキーンって・・・。目の前にさっきモニターで見た目ン球の、眼球の化け物がこっちを見てなんか言ってる!
頭ン中に直接響いてくるみたいだっ!気持ち悪いっ!
「私の今できることは多くない。あなた方を一時的に閉鎖空間に隔離します。そこには我々管理者の伝えたい事が置いてあります。」
いんとえさん?なんか声がかすれて・・・。
「そこでひつようなkとwまnあんでkだsい」
「もう何言ってんのかわからねー!」
名取が言うこともわかる分かるが!
「mおうしwあけnあい、dsうgあyおkえrえbあ、wあrえwあrえnおkおtおmおtあsうkえtえkうdあsあい」
なんだよ!なんて言ってるんだか全く聞き取れない!
「kおnおsえkあいnおmいrあいwお、おnえgあいsおmあsう」
うっ!また光が・・・体の芯がびりびりする!また死ぬのか!?何かに引きずり込まれる!
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「雨宮!おたみちゃん!待ってくれ!どこにいったんだ!こんなバケモンの前に置いて行かないでくれ!」
「はよいけ」
「おぅっ!」
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