ファラオ珍道中 ~近ごろの若いものはとクフ王が言ったけれどツタンカーメンはてきとーに聞き流した~

ヤミヲミルメ

はじまり、はじまり

 古代エジプト。

 ピラミッドのそびえる、ギザの町。

 とあるお祭りの夜のことです。


 人ごみをかき分けて、よろよろと歩く男の人の姿に、お祭りで集まっているお客さんたちが振り返ります。

 その人は、まるで悪い冗談のように目立つ格好をしていました。

 その人は、一言で言えば、ミイラでした。

 全身をボロボロの包帯で包んでいるのです。


 古代エジプトの人々は、亡くなった人の魂が死後の世界の楽園で永遠に幸せに暮らせるようにと願いを込めて、遺体をミイラに加工します。

 だけどミイラが生き返って歩き出すなんて、本気で信じているわけではありません。

 誰もミイラが動くところを見たことなんてないのです。

 だから、お祭りの夜にさまようミイラが、本当に本物のミイラだなんて、誰も夢にも思っていません。


 それは今から三三〇〇年ほど前……紀元前一三〇〇年ごろの出来事でした。

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