第6食 サンマの焼き魚定食

ー横浜 みなとみらいー


「今日も平日の朝だからここらへんで待っていれば多分来ると思うんだけど…」

私は前に会った高校生の男の子にお礼が言いたくて前と同じところを歩いていた。だってあんなに美味しいオムレツを教えてくれたんだからね。ちょっとでもお礼がしたい…

「あっ、あなたは…」

お、見つけてくれたみたい。相変わらずきちっとした制服で登校してる…

「私のこと覚えててくれたんだね。あの…実は前のことでお礼が言いたくて…」

「いえいえ。お礼をしてもらうほどのことではないですよ。」

うぅ…それ言われたら余計したくなる…

「でもあのお店すっごく美味しかったし、登校中にわざわざ教えてくれたりして…私ね、食べることが大好きで色んなところのお店を巡って食べたりしてるんだ。今回もその傍らで…」

ここで堂々と「食べることが好き」って言っていいものなのかな?

「じゃ、じゃあ…」

「……?」

「こ、今度僕と一緒に食事に行ってくれませんか!?」

えぇーーーーーー!?ま、まさかのデートの誘いー!?いや、待て…落ち着けミルケ…食べに行くだけだ…別に何らおかしくはないぞ…それにお礼をするんだから。そこ重要だから。

「えっと…良いよ?私はいつでも空いてるから。」

言っちゃったーーー!!ヤバイ、こういう誘い来たの初めてだから…高熱出そうであぁ…


ー数時間後ー


行くのは次の土曜か…どうしよう…ここは1つアスタに相談でもしてみるか…というか一応連絡の取れるようにメールの登録もしたけど、恥ずかしくて早々に連絡取れるもんじゃないよぉ~!あの子の名前、「高城博人(たかぎひろと)」くんだったな…


『僕の名前「高城博人」って言います。あなたの名前も教えてくれたら…』

『私は「ミルケ・ザナドゥ」。ミルケって呼んでね…」


高校三年生って言ってた…何か色々と大変なんだろうなぁ…


ーアスタの家ー


「そんで…食事の誘いをオッケーしたと?」

「これはお礼をするんだから!決してデートとか何かじゃ…」

「いやもう顔とか赤くしてる時点でデートって認識してる。脳ミソが。てかこれあんた絶対恋愛フラグ立ってるからね!」

結局のところ私の頭がデートと認識して離れない…

「そういやアスタって高校時代に恋人いたよね?確か…ストラくんだっけ?」

「ちょ…何で今あの人のことを言うのよ!?確かに付き合ってはいたけど…」

「デートしてる時ってどんな感覚だった?」

「そんなの数年前だし長く付き合ってた訳じゃないから覚えてないわよ。」

アスタでも覚えてないのね……しょうがない。こればっかしは自分で味わえと言うのか…


ー土曜日ー


来てしまった…いや断らなかったから来なければいけないんだけども…

「待ちました?すみません、少し遅れてしまって…」

「ううん、全然大丈夫!」

もうこのやり取り恋人だよ…漫画とかでよくあるシチュエーションのやつ。


ー定食屋 清水ー


ほうほう。ここが博人くんの良く行く定食屋か…

「ここの定食屋、どれも凄く美味しいんですよ。ミルケさんのお口に合っていただけたらと…」

私、基本嫌いな食べ物ないからなんでもいけちゃうけど、今回の店も凄い合う予感しかしない。席に座ってメニュー表を見る…定食屋だけあってか様々なバリエーションがある。

「唐揚げ定食…アジフライ…」

とりあえずメニューに書いてあるものを片っ端から読んでいく。読んでいく内に目に焼き付いて離れないものがあった。

「サンマの焼き魚定食…」

焼き魚。最近全然食べてないからなぁ…特にサンマ。これは今に食べなきゃ後で損する気がして…もう迷わず注文だなこれは。


ー待ち時間ー


「博人くんは唐揚げ定食頼んだんだね。」

「はい!ここの唐揚げ定食は僕が小さい頃から食べていて美味しいんですよ!」

博人くんが小さい頃からあるってこの店は相当前からあるんだ…

「博人くんは何か夢とかあるの?」

あれ?何で私夢の話なんてしてるんだろう?

「僕は将来、医者になりたいんです。テレビとかで映る医者に憧れて人々の支えになりたいなと思って。」

「医者かぁ…なれるといいね。頑張って!」

今はこんな言葉しかかけられないけど、いつか彼の成功を祈ってる…そんな自分がいた。


ー数分後ー


細長い和風な皿に目を白くしたサンマが乗っかっている。その身はとても美味しそうだ。

「いただきます。」

サンマの腹をほぐして細かい骨を取り除き焼きたて熱々の身を頂く。

ごくっ…

焼き魚の香ばしさといい、この熱々の身といい、ついに焼き魚の真の姿が出たということなのか…醤油をかけなくても美味しい。いや、醤油がいらない焼き魚だ…これは白米が進む!!

「何だか料理を食べてる時のミルケさんが幸せそうで、嬉しいです。ここに来た回がありましたよ。」

「また美味しい店紹介してもらっちゃったね…また今度ここに来ようと思う!」

今度は焼き魚以外のやつも食べてみたいなぁ~♪





「美味しかった!ありがとう!」

「それは良かったです!せっかくなんで海の方に行きませんか?」

海か…海も見るのも久々だ…


ー海沿いの道ー


「ここは僕が良く家族と散歩したりしていた場所なんです。今となっては凄く懐かしい…」

「私も海を見るのは久々だけど、博人くんも久々なんだね。」

海が太陽に照らされてまるで真珠のように輝いている。ここにずっといてもおかしくないほどに…

「僕、ミルケさんと初めて会った時、この海のように「綺麗な人」だなって…」

「ーーっ///!?」

そ……そんな綺麗な人だなんて…もしかして私、口説かれてる!?

「こんなこと唐突に言うのもあれですが…」

「何…?」



「僕はミルケさんのことが好きです。ずっと側にいてほしいです。」


この言葉を聞いた時、私の中で何かが弾けた。彼は本気で私を好きでいてくれている。夢の話をした時、何でこんな話をしたんだろうって思ったけど、これは私が心の底から彼のことが好きで、彼を支えたいと思ったからなんじゃないかと感じた。私はいつの間にか博人くんに惚れていたんだ……


「ミルケさん…?」

彼を優しく抱き締め、ゆっくりと喋った。もう、この思いは誰にも止められない。

「ありがとう…すっごく嬉しいよ。こんな思いは初めてで、最初は戸惑ったけど…今の私は博人くんに惚れている…私も好きだよ。」

一通り言葉を交わした…でも私にはまだ言うことがある。そう、自分は人間ではないことを彼に伝えなければいけない。

「私…まだ博人くんに伝えてないことがあるの…」

「はい…?」

「私はね人間じゃないんだ…私は「天使」…信じてもらえないかもしれないけど、私は天使なんだよ…」

私の正体、人間ではない。人間と同じように暮らす別の種族…

「僕は信じます。ミルケさんが天使だってこと…絶対に他人には言いません。これは二人の秘密ということなんで…」

早々に二人だけの秘密が出来た。早すぎる気もするが、それでも良いだろう。私は博人くんの顔をまじまじと見つめて彼の頬の部分に両手を添える…そのままお互いの顔を近づけて…

ちゅっ。

「っ!?」

彼は予想もしてなかったのか赤面して戸惑っている。それもそのはず、私が自分から彼にキスをしたのだから。

「私からキスしちゃった…えーとっ…これからよろしくね博人くん!」

「は…はい!」

この日は私にとって忘れられない日となった。私の初めての恋人…彼は年下だけど、私も精一杯支えられるようにこれから頑張って行こう!!

続く。





「………へ?…」

あたし、とんでもないところを見ちゃった……(アスタ)



次回予告

次回はこの物語初!!実際にある店に行きます!!

「噂の焼き小籠包…」

中華街の有名店をいただきます!

「スープめっちゃ入ってる!」

次回「王府井の焼き小籠包」

あれ、次回も横浜じゃん!ま、いっか。(作者)

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