第6話

サーバルが危ない。

私たちに出来ることは…考えろ。考えなきゃ。どうすれば…


「…アライさん」


隣で慌てふためくアライさんに声を掛ける。大丈夫、きっとこれが今の最善…


「かばんさんに、今の状況を伝えに行ける?私はここでセルリアンの気を引いて、サーバルから気をそらすから…」


「っ!!で、でもそれじゃフェネックも危ないのだ!他に…」


「アライさん!…大丈夫、きっと上手くいくから。アライさん、走って。」


しっかりアライさんの目を見て、強く言う。大丈夫だ。アライさんを信じてる。だから、アライさんも私を信じて。そういう意味を込めて。


「…分かったのだ!」


アライさんはそう言うと、セルリアンとは別方向に走っていった。いつもは明後日の方向に走っていっちゃうアライさんだけど、こういう時はしっかりまっすぐ走ってくれる。


「…さて」


私はセルリアンの方に目を向ける。早くしないと、サーバルが危ない。


「サーバル!!」


めったに出さない大きな声で彼女を呼ぶ。続いて近くに落ちていた小石をセルリアン目掛けて投げつける。標的が大きいため、その石はちゃんとセルリアンに当たってくれた。


ズズ……


セルリアンがこちらを向く。

その目は想像してたよりも大きくて…


「はは…サーバル、こんなのに向かっていくなんてー…流石だなぁー」


セルリアンは小石を投げられたことに腹がたったのか、こちらに向かってくる。


「っ…サーバル!石は!?」


サーバルに呼びかける。そう、攻撃なら私よりサーバルの方が長けている。今のうちに…


「なっ…ないよ!?石がない!!」


…血の気が引いた。


石がない、ということはつまり、倒せないということだ。その瞬間、私の頭は真っ白になってしまった。


どんどんセルリアンが近づいてくる。



「うぅ…うみゃみゃみゃみゃ!!」


サーバルがセルリアンの背中を攻撃する。


セルリアンはまた後ろを向く。今度は相当怒ってしまったらしい、大きな体から何本もの触手を出して、うねうねと動かしている。


「くっ…こっちだよ!」


私も負けじとセルリアンを攻撃する。サーバルほどつよくないが、効果は少しくらいあるはず。


セルリアンが触手を振り回す。サーバルなら避けられるスピード…の、はずだったが


「サーバル!?」


サーバルは触手をその体で受け止めた。その後ろには…


「ひまわりを傷つけちゃダメ!!」



サーバル…


しかしサーバルはそれほどパワーが強い訳では無い。私がフォローしなければ…!


すぐさまセルリアンの方へ走り出す。…が。


もう一本の触手が私の方へ伸びてくる。これはまずい。このままでは確実に…



諦めかけたその時だった。


「フェネぇええック!!!」


どこからか小さな体が触手に体当たりをくらわせた。


「アライさん!」


そう、それは、先程かばんさんの元へ走ったアライさんだった。


「フェネックさん、大丈夫ですか!?」


かばんさんもいる。予想より早かったじゃないか、アライさん。


「大丈夫…それよりサーバルが!!」


私はセルリアンの方に目を向ける。まずい。サーバルの力であとどれくらい耐えられるか…


「大丈夫です。ボクに考えがあります。」


かばんさんがまっすぐセルリアンに向かう。


かばんさんは、セルリアンの横を通り過ぎ、自らセルリアンの視界に入る。


「かっ、かばんちゃん!?」


サーバルもその姿に気づいたみたいだ。


「サーバルちゃん!あと少し、我慢して!」


かばんさんはそう言うと、セルリアンに…


ばしゃぁっ!!!


思いっきり水を浴びせた。かばんさんはどうやらサーバルの後ろにまわって、バケツに水を入れていたようだ。


セルリアンの一部が硬い岩に変化する。

その衝撃に怯んだのか、サーバルが抑えていた触手の力が緩む。


「フェネック、アライさんたちも戦うのだ!」


アライさんが私の手を引く。なんでだろう、さっきよりも怖くない。


「…はいよー、アライさん!」


私たち二人もセルリアンに攻撃をする。セルリアンは先程のかばんさんの攻撃が堪えたらしく、混乱しているようだ。


サーバルも触手を振り払い、セルリアンに攻撃する。



しかし、セルリアンもやられっぱなしではない。また触手を増やして振り回し始めた。サーバルがひまわりを守ろうと、その触手を弾きかえす。


「サーバルちゃん!離れて!!」


かばんさんが叫ぶ。しかしサーバルはその制止を聞こうとしない。


「ダメだよ!ひまわりを守らなきゃ!!だってかばんちゃん、これまで大切に育ててきたじゃない!」


サーバルが、セルリアンの触手を弾き返しながら叫ぶ。


「この子はここから動けないから…私が守ってあげないと!!」


「サーバルちゃん!」


かばんさんがバケツを持って駆け寄る。しかし、セルリアンも同じ手は二度は受けない。かばんさんの方へ触手が伸びていく。


「かばんさん!」


アライさんと私もセルリアンの方へ走る。が、アライさんはセルリアンが振り回していた触手に当たり、跳ね返されてしまう。


「アライさん!!」


まずい。どうすれば…!



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