第5話
としょかんで過ごすようになってから何日か経って、私たちは午前中の掃除を要領よくこなせるようになっていた。
私はこの日、としょかんの倉庫から固くて平べったい、よく分かんない形のものを見つけて、お昼ご飯の時にかばんちゃんに見せてみた。それは「ふらいぱん」っていうらしくて、料理の道具なんだって。かばんちゃんはさっそくそれを使って晩ご飯を作ると言って、午後からはとしょかんで料理の本を読んでる。
私たちはいつも通り外で遊ぶ。しばらく追いかけっこをしてから、フェネックが休憩しようって言った。私も喉が渇いてたからみんなで水を飲みに行ったの。
でも、その日はいつも通りじゃなかった。
水を飲んで木陰で休んでたら、どこからか、どことなく不気味な足音みたいなもの音が聞こえてきた。それは不気味でも何でもなかったのかもしれない。けど、私はそれを本能で不気味だと感じた。
ドシン…ドシン……
最初は私の大きな耳を澄ませば聞こえるくらいに小さい音だったのに、その音は今はアライグマでも聞き取れるくらい大きい音になっている。
「これって…」
最初に口を開いたのはアライグマだった。
うん…これは……
「セルリアン、だねー…それも普通のサイズじゃないみたいだよ」
足音を鳴らすくらいの大きさ。フェネックの言う通り、近づいてくるそれは見なくても想像がつく。少なくとも私たちより大きいことは確かだ。
「ど、どうしよう…今は博士も助手もいないよ!」
足音はどんどん近づいてくる。
そして、ついに林の中から姿を現した。
「サーバル、フェネック、逃げるのだ」
アライグマが二人の手を掴んで走り出す。幸い向こうには気づかれてないようだ。私たちはセルリアンの死角へ逃げ込んだ。
「どうする?」
「あんなでっかいのとは、戦えないよー。ハンターにも、自分より大きな相手とは戦うなって言われてるしー…」
「ハンターは来るのか??アライさんたちはいつまで逃げたらいいのだぁ…」
「と、とにかくかばんちゃんに伝えないと!知らないで出てきて鉢合わせになったら大変だよ!!」
かばんちゃんがこのセルリアンに気づいているかは分からないが、1人にしておくのは危険だ。
「そうだねー、じゃあとしょかんの中に入らないと」
そう言ってフェネックはセルリアンをこっそり観察する。
「あの様子だと、南の方向かってるみたいだねー。反対側からこっそり行けば…」
ドクン。
心臓が跳ねる。南側。方角はよく分かんないけど、確かかばんちゃんは……
「としょかんの南側に花壇を作ったんだ。」
体が勝手に動いていた。ダメ、そっちに行ったらダメ!!私はセルリアンの方へ走り出した。
「うぇえ!?サーバル!?!?」
突然の行動に、アライグマとフェネックは驚いている。そうだよね、私もなんでこんなことしてるのかわかんないもん。
でもね、ダメなんだ
そっちに行ったら、ダメなの。
だってそこには……
「ひまわりがっ…!」
私はセルリアンの前に立ちはだかった。近くで見ると、よりその大きさが分かる。
「あっ…あっちに行って!!」
声が震える。怖い。逃げたい。
セルリアンの大きな目が私の姿を捉える。
大きい。怖い。怖い。怖い。
でもこれ以上セルリアンをここへ近づけさせてはならない。
だって
「ひまわりは、かばんちゃんの、ううん……私たちの、“フレンズ”なんだから!!!」
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