住吉 良平 23

 昼過ぎに知らない番号から電話がかかってきた。

”こんにちは、住吉さんですか?”

男にしては少し高い声で愛想のよい話し方だ。

そうですが、と答えるとさらに相手の声が高くなった。

”すいません、申し遅れました。私池田信二と申します。

住吉さんがコロッセオに出場するための手続きを担当させていただきます。”

やはり竜馬さんの言っていたことは本当だったのか。

しかしあの発表が気になる。

「あのニュース観たんですが、やれるんですか?」

”あー、大丈夫です。今後正当な興行としてやりますんで。

え~と、今日の午後三時から、テレビ観てみてください。”

どうやら聞かれることは予想していた様だ。

”それで、早速明日、ナカ自動車工場に午前10時に来て下さい。

午前の10時ですよ。”

そう言うと失礼致しますと言って電話を切られた。

竜馬とは全く違う本当にビジネスの喋り方だ。

白い何もない壁を眺めながらしばし呆然とする。

コロッセオを取り巻く環境が信じられないくらいのスピードで変わっていっている。

一度行われただけで人気と分かるとここまで色々と状況が変わるものなのだろうか。

自分は竜馬に出ることだけは保証されているからその点だけは安心だ。

もっと人が集まるところで…。

ゾクゾクする。

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