住吉 良平 21
試合が終わってからは慌ただしく日々が過ぎていった。
試合の日、解散前に竜馬から間接だけは柔らかくするようにアドバイスを受け、連絡が来るまで1週間ほどひたすらトレーニングをしていた。
元々大して無かった貯金がどんどん減っていったが気にならなかった。
竜馬から電話の呼び出しを受け、地下2階の大通りで落ち合う。
久しぶりに見ると無精髭が生えていた。
余程忙しいのだろう。
テイクアウトのコーヒーを持って通りに面したベンチに座る。
しばらく自動車や人が通り過ぎるのを無言で眺めていた。
「劉一は弔ってやったよ。」
竜馬がポツリと言った。
「相手が手加減せずにぼこぼこにしたせいでスーツがほとんど再利用できなくてね。
手配に時間がかかってる。」
待たせて悪いな、という意味が込められていた。
良平も頷く。
竜馬が上を向いて顔をこすった。
「あと数日で色んなことが起こるから、試合はその後になるかな。」
予想はついていた。
ネットニュースでも今回のコロッセオが大々的に取り上げられ、さらに開催が暴力団主体だったことも取り上げられ今一番熱い話題になっていた。
ただ、こうなる事は予想していただろうし、次開催出来る算段もあるだろうと考えていた。
「多分これで会えるのは最後になるかもなぁ。
俺も一応暴力団の組員だからな、気楽に動けなくなる。」
飲み切った紙カップをクルクル回した後立ち上がった。
「新しい担当者が必ず連絡してくるからそれまで待っててくれ。」
じゃ、といって立ち去ろうとする竜馬に一つだけ聞いた。
「対戦するとしたら劉一さんが戦った相手ですか?」
「ああ、お前とあいつは特別扱いって感じかな。
やるならお前らだよ。」
なんとなく竜馬とあいつは知り合いだと感じた。
「知合いですか?」
「おうよ。俗にいう舎弟ってやつだ。
お前と同じ変わりもんだよ。」
肝が座っていたのは暴力団だったからなんだろうか?
あの快感を得続けるためにはまずあいつに致命傷を負わず勝たなきゃいけない。
竜馬が去ったあと紙カップを思いっ切りぐしゃぐしゃにしてコンビニ前のごみ箱の口に全力で投げつけた。
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