ファンタジーだけじゃない、主役二人の距離感が気になるもどかしい恋愛小説

最初からひたむきで健気な、強くて弱いリズミーに惹かれ、応援するような気持で読み進めてきました。
パトルシアンは冷静でかっこいいのですが、お酒に弱かったり、「ちょっと大丈夫なの?そんなのでリズミーを守れるの?」と思わせるようなところもあり、叱咤激励(?)するような気持で見守りました。
ファンタジーとしてもミステリーとしてもしっかりと練られていて、面白い作品ですが、わたしが一番惹かれたのは、リズミーとパトルシアンの絶妙な距離感です。友達でもなく恋人でもない、でも友達以上恋人未満でもない、そこには信頼と愛が確かにあるのに、そんな描写はほとんど見られません。
直接的な言葉を極力つかわず、読み手に少しもどかしい思いをさせながら、お話を進める宇城さんはSなんじゃないかと思いながら、最後まで楽しませていただきました。
《この先かすかにネタバレかもです》


最終回は、どうやって終わるのが本当に怖くて、楽しみにしていたのに読むのを躊躇しました。
でも大好きな終わり方で、お話自体もっと好きになり、最初から読み返して再び楽しませていただけました。
そしてエンディングの描写もすばらしく、脳内で映像が鮮やかに再生され、読了後はさわやかな気持ちになりました。
ファンタジー好きな方にも、ミステリー好きな方にも、そしてもどかしい恋愛小説が好きな方にも是非一度読んでいただきたいです。