銭湯の壺湯に知らない人と入る

スーパー銭湯によくある大きな壺が置いてあるやつ。追ってる人がそこに入ってたから思い切って俺も入る。もちろん、相手の人が俺でも大丈夫っぽいことはそれまでの経緯でほぼ確信している。声をかけるのでも、いきなり触れるのでもなく、黙って壺湯に相席する。二人の関係を知っている人が見たら目を丸くするだろう。でも、ほとんどの人はおっさん二人が狭い壺に入っていても気にする様子はない。そんなものだ。そして、わざわざ湯の中を覗き込んだりもしない。大事なのは表情だ。湯の中でしてることがことだけに神妙な顔つきになってしまいそう。しかし、友だち同士で入っている設定なので、朗らかな表情で親しげな雰囲気を装う。


最初は驚いて固まっていた相手もだんだんのってくる。人が通る方に背を向けて壺の縁に腰掛けさせる。俺はよく観察するのが好きだ。皮の感触、緩み加減、硬さや反りなども目と手で丹念に確認する。ああ、すばらしい。


相手が縁から降り、次は俺に座れと促す。俺は自分の目的を果たしてもう興味がなくなっている。彼の手を握りありがとうと言う。湯から立ち上がり彼の目の前に差し出す。彼が触る。俺は壺から出て次の相手を探しに行く。

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スマホで書く日記 のぶしろ @x4q

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