うるうる音楽詩編集
やましん(テンパー)
第1話 『ピアノ三重奏曲イ短調 「偉大な芸術家の思い出のために」』 チャイコフスキー
最初から、うつろな背景に乗って、もうこれでもか、という悲しい美しい旋律が現れます。
チェロ・ヴァイオリン・そうしてピアノと引き継がれながら、連綿と繰り返される慟哭の歌。
お友達だった、ニコライ・ルービンシュテインさんが1881年に亡くなったことに端を発して作曲されたとのことであります。
ニコライさんは、チャイコ先生のピアノ協奏曲第1番に関して、当初この作品を拒絶した事で有名ですが、結局仲直りをして、第2番の献呈もされたとのこと。
しかし、病気で若くして(45歳)亡くなってしまいした。
第2主題は、割と、はつらつとした音楽ですが、展開部に入ると、再び、もうどうしようもなく落ち込みます。
長調と短調が入り混じった、まるで天国を彷徨うような不思議な旋律に変身します、そうして、やがて、またまた悲しい悲しい第1主題の再現。型通りの再現部にはなりますが、気力は何となく落ちてしまい、あとはもう、ただ涙にくれるのであります。
なんとお気の毒な。
第2楽章は、変奏曲ですが、ここはお葬式で故人の思い出の映像が次々に流れては消えて行く、そういう趣向だと思います。
ニコライさんは、当時、お兄さん(アントンさん)と並んで、非常に有名なピアニストさんでした。
そこで、ここでは楽しい思い出が、いっぱい、行き交います。
故人の演奏は、豪快な演奏のお兄さんとは違った、伝統的な演奏様式だったといいます。
その演奏をしのびつつ、時にはちょっとショパン風になったりもしたり・・、様々な趣向を凝らした音楽たちが、どんどん交代しながら現れます。
ああ、あんなこともあった、こんなこともあった。喧嘩もしたなあ・・・
色々な、思い出が、ぐるぐると巡ってゆくのです。
そうして、最後、再びあの悲しい主題が帰ってきます。
けれど、もうこんどは、本当に最後のお別れです。
もうどうしようもないくらい、泣き叫んで、泣いて・・・
最後には、泣き疲れてしまって、消えるように、終わるのです。
でも、こんな曲を書いてくれる人がいたなんて、本当に、幸せな事ですね。
1882年に完成されて以来、今日にいたるまで、多くの世界中の人が追悼してくれるのですから。
ところが、それから、そう間もないうちに、チャイコフスキー先生ご自身が、これと同じ形の曲で、永遠に送られることになるのです。
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