秘密をリップに閉じ込めて
カゲトモ
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「あー、誰だっけこれ、なんか知ってる」
いつもの朝食を食べ終わってマグカップ片手にテレビに呟く。ワイドショーの合間に流れた見覚えのないCMに、どこかで見たことのある女優が映っていた。
『この美しさは、あなたにだけ知っていてほしい』
最後に紅い口紅を引いた唇をクローズアップしてそのCMは終わった。有名な化粧品会社の新作の口紅らしい。朝のワイドショーと言うより、深夜帯のドラマ枠に似合いそうな気がする。
黒い背景に、光沢のある黒いドレスを身に纏った女性。引かれた口紅はパッと目を引く真っ赤なものだ。少し伏し目がちな瞳も、魅惑的な唇も、CMと言うよりはどこか芸術チックだ。
「あー、ここまで出てる、喉まで出てる」
そのCMに出ている女優が、誰だったか思い出せない。最近テレビで見ていなかったけど、あー、誰だ、誰だっけ。んー!
「はっ! マユズミ カスミ!」
思い出した! とばかりに名前を口にしてから違和感。なんか違う気がする。そんな女優いたっけ?
「あ、違うわ。それ同級生」
ポン、と手を打って自己解決。うーん、最近こういうパターンが多い。歳か?
「そう言えばあの女優、マユズミに似てる気がする」
例えばショートカットの髪とか、切れ長な瞳とか、人を寄せ付けないオーラだとか、そんな感じ。美人とか、可愛いとか、そう言うことじゃなくて、独特の雰囲気を持っているって感じの。あの女優に良く似ている気がする。なんて、高校の同級生だった彼女をふと思い出した。
「今何してんだろ」
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