欠陥と超能力者

神蔵悠介

~ 変わりゆく日常編 ~

第1話 変わりゆく日常Ⅰ


 超能力、それは魔法の次に人が求める力の1つだろう。

 夢を叶えたり、自分自身が楽になったり、ヒーローにもなれる。

 しかしその中には人殺し、破壊を目的とした者もいる。

 何故、人は超能力や魔法を欲しがるのか? 答えは簡単だ。

 自分に無いものであり、架空の能力であるからだ。

 だが、1980年に超能力者が発見された。世界中がその超能力者に注目した。

 そして、科学者達は超能力に本格的に研究を始め、1992年に超能力の解明をする。

 科学者達は人間は本来力を抑え込んでいると言う。

 人間は自身でリミッターを掛けている。

 そのリミッターを外す事で人は超能力を扱えると言う。

 しかし、人間はリミッターを外してしまうと、身体を壊してしまう。

 だが、ある者はリミッターを外しても身体を壊す事は無かった。

 科学者は人類全てが超能力を使える訳では無いと分かった。そして、超能力を使えるかどうかのテスト。

 超能力カリキュラムを受けさせ、超能力を使えるか使えないかの適切審査を行い、能力者を誕生させる事に成功した。

 これにより、世界に超能力者を生みだすことが可能となり、超能力者(略称を能力者という)を養成する機関が設けられた。

 全世界で能力者育成に取り組みを始め、能力者同士の国際大会も作られた。

 各国は能力者育成に競って取り組んでいる、それが国の力となる存在でもあるからだ。

 何よりカリキュラムで分かった事が、一人一つの能力が付くという事。

 そして、超能力が浸透した2026年超能力者観測を目的とした都市が日本に作られた。


「――はい、次のワードを有原。ここの都市の名前を答えて答えてみて」

 大きな電子モニターに文字が並べられている。そして、現文(現代文)の先生は問題を出した。

「海上都市(かいじょうとし)ですね」

「正解、では次のページに」

 有原は淡々と答え、席に座る。それを後ろで見ていた男子生徒。

天月あまつき彰吾しょうご、超能力が浸透した世界で海上都市で学校に通う高校2年生。

「相変わらず、アイツは頭が良いな……」

 隣にいる、宮下みやしたしゅんが彰吾に小声で話を掛けてきた。

 宮下みやしたしゅん、天月とは高校に入った当初に友人となり、よく遊んでいる。

「ランクBだからな」

 ランク。それは、この時代においての自分の地位的な物だ。

 ランクはC~Sまで存在する。

 ランクが高ければ、科学者達がそのデータを取る為、その分の報酬金が手に入る。

 しかし、この報酬金システムはA+ランク以上からである。

 そして、ランクが高ければその分脳の発達が高い為、一般人よりも知能が高い。

 だが、それでも知能が低いものがいたりもする。

「小言でしゃべってないで勉強してくださいね??」

 話に気を取られ勉強に集中仕切れていなかった彰吾は、現文の先生の声で現実に引き戻された。

「――!」

「うお!?」

 彰吾と俊の二人は驚き、まずい! と思い、ゆっくりと正面を向くと。

「後で、職員室に来てくださいね??」

 二人は正面を向くと、現文の先生は二人を見ながら言う。

 満面の笑みで二人に言ったが、内面が笑っていないのがヒシヒシと伝わった。

「では、授業を再開します」




 

 授業後、現文の先生に言われ職員室に行き、注意を受けている。

 現文の先生が使った超能力は、反響声ボイス・エコー

 対象に声を乗せる事の出来る能力。

 ちなみに教員は能力者の者も入れば、普通の教員も入る。教員が能力者の場合、ランクは不問。

 ランクSであっても、教員は他と変わらぬ給料だ。

 あくまで、発展途上中の学生を対象にした報集金システムだからだ。

 ランクは学校を入学する時に超能力カリキュラムを受けさせる事で、ランク測定されている。

 能力者のみの学校は日本で全五校しか存在しない。

 いずれも入るには成績優秀か莫大なお金、もしくは能力に可能性があると判断された者のみが入学を許される。

 はっきり言えば、エリート校。

 一つが神奈川にある共学の第1東都高等学校。

 二つ目が京都にある共学の第2西都高等学校。

 三つ目が秋田にある共学の第3高等学校。

 四つ目が海上都市にある第4女学院、第4女学院は中等部から高等部のある学院である。

 最後に山口にある第5学園、この学園は小等部から高等部まであり、エスカレーター式の学園。

 彰吾と俊はそこらへんの一般の高校に通っている。

 超能力者オンリーの学校が五校しか無いだけで、別に超能力者でも他の高校は受けられる。

 超能力者オンリーの学校があるこの海上都市は、能力者だけじゃなく一般人も住んでいるのだ。

 そして、ランクがA以上であると免除申請が勝手に行われ、自分の行きたい五校の内どれかに行くことになる。

 基本、第一高校を略して1校と呼んでいる。

 他は2校、3校。 第4女学院は4女、第5学園は第5と呼ばれている。 

 などと、現文の先生が言い出した。

 説教はまだまだ、掛かりそうだ……。と思う二人だった。




「「失礼しましたー」」

 と、職員室を出る二人は、はぁ……と二人でため息をつく。

 こってり絞られたが彰吾は注意で終わりすぐだった。

 だが、俊は細々と注意され、最終的には全く関係の無いことまで注意された。

 昼休みを使って説教染みた注意を受けて、昼休みがつぶれるのが一番の悪夢。

 長引きそうだったので、彰吾は俊に助け舟を出して、現文の注意を終わらせた。

 そして、彰吾達は職員室を出ると、そのまま食堂に向かう。

 向かおうとすると廊下が生徒で埋め尽くされていた。

「おい、見てみろよ」

「うお! すっげ!」

「何でこの学校にいるのかしら?」

 前にいる生徒達が言う。彰吾と俊は何が何だか分からなかった。

「何が凄いんだ?」

 俊が前にいる生徒に聞く。

「来てるんだよ」

「誰が?」

「爆弾師(ボマー)が」

「「は?」」

 彰吾と俊はハモった。驚くのも仕方なかった。

 なにせ、Sランクの爆弾師ボマーがこんな所にいるのがおかしい。

 Sランクは全世界に56人、日本に8人しか居ないため、驚くなと言われても驚くだろう。

 しかし、通り名と噂、能力は知っているだけで当本人の顔を見たことが無かった。

「ちょっと見せてくれないか?」

 俊が前にいる生徒に言うと生徒は俊と彰吾に見れる様にその場をどいてくれた。

 そして、初の爆弾師ボマーを拝む。

 そこには美少女がいた。茶髪でロング、目が大きく、スタイルもかなり良い。

 これがあの爆弾師ボマーだとは思えない彰吾だった。

 爆弾師の能力は爆炎を生み出す能力。さまざまな物にその爆炎を付与する事が可能となっている。

 その為、自分の意思で好きな所に爆炎を生み出す事が出来る。

 先ほど言ったこれがあの爆弾師ボマーという理由。

 爆弾師ボマーは単身で人質のいる状態でテロリスト20人のみを爆破させたと言う、残虐性を持っている聞いた。

 理由は不明。 だが、傍から見ても解るぐらいの犯罪者嫌い。

 しかし、そんな人物が何故こんな所にいるのか彰吾には分からなかった。

「何で、爆弾師(ボマー)はこんな所にいるんだ?」 

 俊が彰吾に聞く、それが分かれば苦労はしないと思う彰吾。

 だが、何故こんな所にいるのか直ぐに分かった。

「私はここの学生の人に呼ばれて来たのですが、誰が呼んだか知りません?」

 と、爆弾師(ボマー)が言う。 辺りが沈黙した。

あれだけザワザワとしていた廊下が急に静かになる。爆弾師(ボマー)はそんなのお構いなしにいい続ける。

「こんな手紙が学生寮のポストに入っていたので」

 爆弾師(ボマー)が手紙を片手に言う。その手紙を見た生徒全員は思った。

 ラブレターだ……。

 ラブレターを見た瞬間、またザワザワし始める。

「これは、公開処刑……」「まさかの爆弾師(ボマー)に告白とか」「これは、当たって砕けろと言うより、当たって爆散しろだな」

 案外ここの生徒は面白いヤツもいるもんだなと思う彰吾。

「ん~、この学校ではなかった感じですかね……?」

 爆弾師ボマーはそういうと帰ろうとする。

「ま、待ってください!」

 彰吾、俊の後ろから聞こえた。その場に居合わせた生徒全員が声のする方を向く。

 そこには顔を真っ赤にして涙目になっている生徒がいた。岡野だ。

 岡野は野球青年だ、ボウスの。岡野は意を決した用に力強く一歩一歩、爆弾師ボマーに向かう。

 岡野の邪魔にならないように生徒達が廊下のはじにより、真ん中を岡野のためにあける。中にはこんな声も。

「頑張れ! 岡野!」「俺たちの分までいけ!」「爆破しろ」などと、応援の声が岡野だけに聞こえる様に小声で言う。 最後の除き。

 岡野はそこに居合わせた生徒全員に応援された状態で、爆弾師ボマーの前に立つ。

 不思議そうに爆弾師ボマーは岡野を見た。 

 見られた岡野はまた、顔を赤くする。

 深呼吸をする岡野、それを見ている爆弾師ボマー

 そして、岡野が言う。

「爆弾師(ボマー)さん! 僕と付き合ってください!!」

「無理です」

 笑顔で断る爆弾師ボマー。あたって砕け……いや、当たって爆散した。

「な、何故ですか? 僕が、ボウズだからですか?」

 岡野は何故自分が振られたのか気になり、爆弾師ボマーに聞く。

 もしかしたら、4女は交際禁止とかあったりするかと思う彰吾。

 周りも断った理由が聞きたいらしく、真剣な眼差しで爆弾師ボマーを見る。

「え、だって。人の名前を呼ばない人とは付き合いたくはありませんから」

 真っ当な、誰も言い返せない、誰もが黙る、ぐうの音も出ない、ぐう正論を爆弾師ボマーは発言した。

 それを聞いた瞬間女子から「確かに」「うわ、ないわ~」「人の名前ぐらい覚えろサル」

 確かにその通りである。さすがに、サルは言いすぎだが。

 これはさすがの男子全員が岡野から顔を逸らす。

 当然、彰吾と俊も含まれている。

「では、お名前を!!」

 岡野が言うと、またまた辺りは沈黙する。それはそうだろう、ここの生徒は爆弾師ボマー爆弾師ボマーとしか呼ばれているのしか知らない。

 だからこそ、ここにいる全員が彼女の爆弾師ボマーの本名を知りたかった。

 爆弾師ボマーは少しため息をつき、少し間を空け、

「東堂(とうどう)沙由利(さゆり)です。では、私はこれで」

 爆弾師ボマーは東堂沙由莉と名乗り、その場を去る。

 沙由莉の名前を聞いた生徒達、東堂沙由莉。

 それが爆弾師ボマーの、東堂沙由莉と言う名前だ。

 名前を知り、数分後チャイムが鳴る。

 そのチャイムを聞き、彰吾と俊は思い出す。

「あ、昼飯……」

「あ……」

 そして、次の授業をお腹を空かせながら授業を受ける事になった。





 全ての授業を終え放課後、やっとの思いで食べる事になった昼御飯。

 彰吾と俊は放課後も開いている食堂に行き、お昼御飯を食べている。

「それにしても……、あんな理由で来るとはね……」

「何が?」

「東堂沙由莉、爆弾師(ボマー)の事だよ」

 食べ物を口に含んだ状態で彰吾に話を掛けてくる。

 ハムスターやリスの様に頬がパンパンの状態で。

「ラブレターの用件だけで……来るなんて……いい子だよな」

「……、いや、多分、あれは……」

「ん? なんだ?」

 あの反応を見る限り、間違いないだろうと思う彰吾。

「多分だけど、東堂は手紙の事をラブレターだと思ってない」

「へ? それは……ないだろう」

「いや、東堂はラブレターを手紙と言ったからな」

「それは……ラブレターだと言わないで……遠まわしに言ったんだろ?」

 そう、そうだと彰吾も最初は思ったのだが。

「この学校では無かった感じって言ってただろ? あと、その前のここの学生の人に呼ばれてと。この時点で東堂はあの手紙をラブレターだと思ってないと分かった」

「なんでだ?」

「そもそも東堂がなぜ、生徒が一番集まる食堂付近にいたのかと言う事だ。ラブレターだと分かっていればあんな場所には来ない。ラブレターに書かれている場所に行くはずだ」

「場所が分からなかったとかは……?」

「それは無いだろうな」

「……、なんで?」

「ここの食堂は二階の奥だ、二階に来る必要はない。多分校内地図でも見たんだろう」

 でなければ、この二階の奥にある食堂までこれる筈が無かった。

「だから、岡野が息を荒くしながら現れたんだ」

「あ~……なるほど……」

 顔を真っ赤にしていたのはまさかの展開が起きたからだろう。しかも公開処刑だ。

 多分、岡野はラブレターに場所を指定したハズ、そこで告白する予定だったんだろう。

 しかし、沙由莉はラブレターだと思わず、人の集まる食堂付近に向かい、ラブレターの差出人を探した。

 そこで、岡野は校内が騒がしい事に気づき、校内を探すとそこにはなんと、想い人の東堂沙由莉がいる。

 最悪な事に、ラブレターを誰か聞いている。そして、帰ろうとした沙由莉。

 ここで帰ればもう二度と会えないだろうと思った岡野はここで告白。

 だから顔を赤くしていたのだろうと思った彰吾だった。

 味噌汁を飲みながら、彰吾は俊を見る。

「なぁ……彰吾……今日はオフ……?」

 まだ、口の中に物を入れハムスターみたいに頬を膨らませ、話している俊。

「わり、今日はこのあと買い物。時に俊」

「……ん? なんだ……?」

「さっきから、口に物入れて話さないでくれるか? 少し汚い」

「ごめん」

 こうして、遅い昼御飯を済まし彰吾と俊は一緒に下校する。

 彰吾と俊は家が近い為、帰りはだいたい一緒だ。

「はぁ……」

 深いため息をつく彰吾。なかなか疲れたのに戦果はゼロ、これはかなり痛かった。

「あら? 彰吾ちゃんじゃない」

 落ち込んでいると、突然誰かに話を掛けられた。彰吾はその声方を向く。

「どうしたの? 彰吾ちゃん?」

「いや、今日の日替わりの卵を取り損ねて…」

 そこにはいつもお世話になっている商店街の肉屋のおばちゃんがいた。

「あら、そうなの……、そうねぇー彰吾ちゃんならこれ、いる?」

 そう言うと肉屋のおばちゃんが今日の日替わりの卵を彰吾に差し出している。

「え!? 良いんですか!?」

「いいのよ。これお一人様一点でしょ? 今日娘が来れなくなって、卵を店員さんに返そうと思ってたから。はい」

「あ、ありがとうございます……!!」

「いいのよ! もう、彰吾ちゃんはいつもウチで買ってくれるからね! これくらいはもう安いもんよ!」

「だって! おばちゃんの肉屋のコロッケうまいんだもん!」

「ありがとうね、今度なんかあげるわ。それじゃ、彰吾ちゃん自炊しなくちゃだからおばさんはこの辺でね」

 そう言いながら肉屋のおばちゃんはまたね、と言ってその場を去った。

 何と素晴らしいタイミング。

 彰吾は買い物カゴに貰った卵を入れ、他のコーナーに向かった。

 そして、買い物が無事終了。少し後に俊も買い物を済ませ一緒に帰宅をする。

 いや、本当にラッキーだった、卵が手に入らないと落ち込んでいる所に救世主が現れたもんだ。

 そんなことを思っている彰吾だった。

 帰宅している最中にスーパーであったことを俊に話すと、「へぇ~そりゃあ、ラッキーだったな」といわれた。

「あ!」

 突然俊が立ち止まり言い出す。

「なんだ? どうした?」

「ごめん、今から銀行行っていいか? 今日夜に荷物届くんだよ」

「別に良いけど、何買ったんだ?」

「妹は何処(いずこ)へのDVDをな」

「あぁ、なるほど」

 俊はアニオタだ、特に『妹は何処へ』はかなりのオタ。

 去年の2057年の四月に放送されたブラコンアニメ。

 妹は常に兄の視界からいなくなり、兄に自分がどこいるのか探させるという何とも良く分からないアニメ。

 しかし、これが爆発的ヒットを起こした。

 どうやら、探させる間に兄の部屋にもぐり込み禁断の領域まで行きそうになるらしく、兄はそれを何とか堪えて妹を受け流していく。これがハマッたらしい。

 そして、『妹は何処へ~それはあなたの心~』と二期までやった。初めてタイトルを聞いた時にイラッとした彰吾。

 彰吾は俊に強く押され、最終的には俊が彰吾の家に来て一期を全26話を見せられた。

 そのせいで、妹は何処へは分かる。

 一応二期も見た彰吾だった。

 そんなことを思っていると銀行に着く、彰吾と俊はそのまま入り。

 俊はATMへ彰吾は近くにあったソファーに腰をかける。

「~♪」

 俊が鼻歌で妹は何処への一期の1クールのOPを歌っている。それほど、待ち遠しいのだろうと思う彰吾。

 17時でも何だかんだ人が多い銀行。

 しかし、黄色いジャンバーを着た男が突然立ちだし窓口に行く。

「どのような用件でしょうか?」

 笑顔で男に言う女性銀行員。だが――

「――ここに金を入れろ」

 男は突然銃を女性銀行員に突きつけた。

「へ……!?」

 困惑する女性銀行員に対し男は、銃を天井に向け発砲した。パーン! と銃声が銀行内を響かせた。

 そしてそのまま、銃を女性銀行員に突きつけた。

「金を入れろってつってんだろうが!!」

 男が激怒しながら女性銀行員に言う。

 後ろの男の銀行員が警報を鳴らそうとした瞬間、パーン!と彰吾の後ろから銃声が聞こえた。

 男の銀行員は肩を撃ち抜かれ、その場に倒れこんだ。

「次変なマネしてみろ! この婆さんを撃ち殺す!」

 隣にいた、おばあさんに銃を突きつける。

 そして、座っていた男が立ち上がり銃を持った黄色いジャンバーの男の隣に行く。

「おい、シヤッターを下ろせ」

「え……?」

「全入り口のシヤッターを下ろせって言ってんだよ」

「わ、わかりました……」

 男の言うとおりに女性銀行員はシャッターを下ろして貰うように指示した。

 入り口に立っていた男が窓口の近くに行き、話をしている。

「おい、ここにいる全員はこっちに集まれ」

 強盗犯のリーダーらしき存在が、銀行内にいる人全員をお客様窓口の方へ移動させられた。

 強盗犯は全員で三人。

 三人とも銃を一丁づつ持っている。

 これから何が起きるのか、分からないでいると外からサイレンの音が聞こえた。

『犯人に告ぐ、人質を解放し、すみやかに投降したまえ』

 外から犯人に向けての要求を言ってきた。

 間違いなく、外にいるのは警察とガーディアンだろう。

 ガーディアンとは、この海上都市内で起きた超能力に関する事件を解決するために作られた組織。

 警察とガーディアンの関係は、同じ部署ではあるが能力者が関わる事件には警察だけでは対応しきれぬため、出動する。

 だが、警察と違って逮捕する権利を持っていない。あくまで確保をして、警察に引き渡す仕組みになっている。

 ガーディアンは能力者に対抗することで、国に認められた能力者がそこに所属している。

「こいよ、ガーディアンと無能な警察。殺してやるよ……」

 そう言うと一人の男が銀行内にいた男性を立たせ、奥の部屋へ行ってしまった。

 いったい何が起きるって言うんだ、と思う彰吾。

 間違いなく、おぞましいことが起きる事は確実。

 強盗犯は殺してやると言った。警察とガーディアンの人たちを殺す気だ。

 そして、先ほど男性を連れて行った強盗犯だけが戻ってきた。

 戻ってくると仲間の強盗犯に首を縦に振った。

 多分、準備万端ということだろう。

 しかし、連れて行かれた男性が帰って来ないと感じた彰吾だった。




 銀行の外は警察とガーディアン。

 そして、報道陣達が銀行を囲っていた。

「犯人は三名で、奥の部屋に一人だけ移動させられました」

「それは間違いないか?」

「はい、感知地図(マッピングソナー)で感知しましたから」

 ガーディアン感知能力者の千道真弓せんどうまゆみ

 それを指揮する、新垣涼子あらがきりょうこ

「こんなの馬鹿の集団だ、機動隊を潜入させフラッシュバンからの拘束弾で拘束で終りじゃないか。何に躊躇する?」

 警察の機動隊リーダーが言う。

「相手に能力者がいたらどうするんですか」

「そんなもん拘束弾とフラッシュでどうにかなる。たかが三人、お前らのようなスキルドロップ共は見てろ」

 スキルドロップとは、能力者は基本的に企業、軍、能力者機関などにスカウトされるが、それすらも拒否された能力者の事。

 だが、ガーディアンの隊員は国から認められている能力者で、スキルドロップではない。

 これが、世界共通の超能力者に対する批判。

 ちなみに教師の場合のみスキルドロップとは呼ばれない。

 能力者が教師になる時は、能力者機関で認められなければ教師になれないからである。

「では、後学の為にその道のプロに教えてもらいます。一応、私達の班もつきますのでそこはあしからず」

「あぁ、見てろ。まぁ、何も出来ずに見てるだけに本当になるだろうけどな」

 機動隊のリーダーが高らかに笑う。それを涼子は機動隊リーダーに聞こえないように鼻で笑った。

 そして、機動隊が中の状態をカメラと銀行の間取り図を見ながら進入経路を探していた。

「涼子さん、アイツら本当にむかつきますね」

「そうね。でも、ちゃんと何かあった時はすぐにカバーしてあげて」

『了解』

 真弓はガーディアン各自にカバーに入るように指示を出した。

 指示をだすと、機動隊が進入経路を見つけ潜入の準備に掛かる。




 警察とガーディアンが着てから30分が立つと、強盗犯達が立ち上がった。

「そろそろだな……、おい」

「あいよ」

 そう言うと強盗犯達は一人残してまた奥へ向かった。今なら一人、倒してなんとか逃げるかと思った瞬間。

「うおおおおおおおおお!」

 一人のサラリーマンが犯人に突っ込んだ。そして、犯人に体当たりをしようとした。

 パーンと銃声が銀行内をまた響かせた。そして、その銃声がした方向を銀行内の全員が振り返る。

 そこには銃を持ち、片手に何かボタンのようなものを持っている共犯者がいた。

「ばっかだなぁ~、こんな人の多い所で一人にさせるわけ無いでしょ」

 サラリーマンは腹部を撃たれ血を流して倒れている。

『どうした?』

「ん? あぁ、正義ぶった馬鹿に鉄槌を食らわせた」

『そうか、では作戦どおり進めるぞ』

 銃声を聞いた強盗犯はトランシーバーを通じて会話した。その間にサラリーマンに近づいた女性。

「おぉい! なぁにうごいちゃってんのぉ~? 殺されたいの?」

「私は、看護師です……! このままでは、この人は死んでしまいます……!」

「んじゃ、応急処置だけね。それ以上やったら、殺すから」

 強盗犯が看護師に銃をつきつけられたまま、サラリーマンに応急処置を行おうとしたその時。

 奥の部屋の方から銃声が聞こえた。




 機動隊が準備完了した時、銀行内から発砲音が聞こえた。すぐさま、真弓は能力を発動する。

「状況は!どうなってんの!」

「……、犯人がもう一人お客に紛れていた模様……、誰か一人が撃たれました」

 真弓は言うと、それを聞いた機動隊リーダーは潜入作戦を決行した。そして、機動隊の潜入が始まった。

『こちら、A1隊倉庫室異常なし』

「了解、慎重に行動しろ」

『了解』

「なぜ、今潜入させたのですか」

 涼子はこのタイミングで潜入させる事が分からなかった。

「裏の倉庫室からこのオフィスは通気口を通っていけるからな、そこまで行き。フラッシュ投下、捕獲という事だ。おや、もしや、そちらのソナーは通気口に気づけなかったのかな?」

 機動隊のリーダーはそう言いながら真弓を見た。涼子は真弓を見えないように機動隊のリーダー目の前に立った。

「まぁ、みてろ。A1様子は?」

『こちらA1、異常な―誰か倒れているいます!』

「よし、犯人でないか確認しだい救助せよ」

『了解』

 A1機動隊は倒れていた男性を起こした。

『大丈夫ですか?』

『は、はい。 ありがとうございます』

『失礼ですが、あなたは?』

『ここでお金を下ろそうとした者です』

『救助しますか?』

「ああ、救助しろ」

『了解』

 倒れていた男性を起こし外傷が無いか確認し、隊の一番後ろに行かせた。

『あの、もしかして7人だけですか?』

「えぇ、そうです。 安心してください、お守りしますので』

『そうですか』

 突然男が喋りだすと隊の数を気にした、そして、

『殺しがいがあるじゃねぇか』

 突然男性が一番後ろにいた機動隊のひとりの首をナイフで切った。機動隊はすぐに男性に発砲する。

 しかし、銃弾は男性に当たらず寸前のところで曲がった。

 まるで弾が男性を避けていくように。

『弾が寸前で避けた!? 能力者か!』

 すぐに真弓は、何の能力か検索を掛けつつ感知をする。

『さぁて、何の能力でしょう~?』

『クッ……! 撃て!!』

 機動隊の隊長は、隊員の一人を殺した能力者に発砲をするが、弾は当たらずに、寸前のところで先ほどと同じ様に曲がった。

『やはり、弾が寸前のところで曲がるか……!』

「能力者検索でヒットしました! 相手のランクはCランク能力は衝撃装甲(ウェブラルアーマー)です!!」

 衝撃装甲(ウェブラルアーマー)の能力は、自分の体の上に薄いベールを纏う事で、何かの衝撃がベールに触れた際に発動する。

 これにより、何からしらの衝撃を受けた際に衝撃同士で相殺をする事が出来る。もしくは、衝撃を受けたときに、衝撃で石の軌道や銃の弾の軌道を変える事も可能。

「まずい……、カバーして!」

『了解!』

 涼子の指示に待機していたガーディアンがカバーするため、潜入した場所から入ろうとしたが、室内から突然二人組みの犯人が出て来て潜入した場所を撃ち、倉庫室に入れないでいた。

『くそ! これじゃ援護もできない!』

 ガーディアン、機動隊はただ見ている事しかできなかった。そして、銃声が聞こえなくなった時にガーディアンは突入を試みたが、

『突入しないで、無理よ。待ち構えている筈、一旦後退して態勢を立て直しましょう』

『了解……!』

 涼子は隊に指示を出し、後退させると、

『ハァ~ロォ~?』

「――!?」

 突然トランシーバーから知らぬ声が聞こえた。

『あれぇ~聞こえてますぅ~?』

「要求はなんだ……?」

『聞こえてたのねー良かった良かったー。え? 要求? そうだなー……』

 犯人かと思われる人物からの通話。要求を聞かれてると、犯人は悩むと。

『じゃあ、もっと人よこしてよ。殺したりないからさ』

 狂気に満ちた返答をされる。これを聞いた涼子は耐え切れず。

「何言ってるの……!! 人の命をなんだと思ってるの!!」

『ん? あんた誰?』

「私はガーディアン指揮官の新垣涼子(あらがきりょうこ)」

『あそ、人の命? そんなの一つしか無いじゃん、何言ってんの?』

「それが分かってて何故殺すの!」

『楽しいから、他に理由が欲しいなら言うよ? 人肉を切る感覚がたまらないから、必死に生きようと生き延びようとしてるヤツの最後の顔が見たいから』

「狂ってる……!」

『アッハッハッハ!! そうだね、狂ってる。でも、人生楽しいのが一番じゃん? 俺が楽しいと思うのは……あれ、まだ生きてる、ラッキー』

 犯人は機動隊の生き残りを見つけ、機動隊に向かっている。

「やめないさい!」

『はぁ~い、では、皆さんにぃ~……どぞ!』

 涼子の言葉なんか無視して犯人は機動隊にトランシーバーを近づけた。 はぁはぁと息遣いが荒いのがトランシーバーから聞こえた。

『た、たすけてください……』

『うん、いいよ』

『あ、ありがとうございます…!』

『はい』

 犯人がはい、と答えると同時にトランシーバーと銀行から銃声が聞こえた。 そして、ドサッという音がトランシーバーから聞こえた。

「なんで、何で殺したの!!! 助けるって言ったわよね!」

『助けるなんて一言も言ってないよ? 助けて、いいよ?と答えただけだよ。それに助けてあげたじゃん?』

「何を言ってるの……?」

『この世界から助けてあげたんだよ? 俺は、優しいじゃん?』

 この犯人は完全に狂っていた。もう、何を話しても意味がないと感じた涼子は黙るしか無かった。

 涼子との会話を聞いていた機動隊リーダーは呆然としながら震えている。

『まぁ、あと一時間でこの銀行爆破させるからよろしくね~。アハハハハハ!』

 犯人が最後に言い残すと、トランシーバーがブツンと音を立てノイズ音に変わった。

 機動隊は全滅させられたに違いない、あの狂気に満ちた犯人が生かすはずがない。もはや、手詰まり状態であった。

「どうしたんですか?」

「さ、沙由莉!」

「涼子さん、どうしたんですか?って大体見ればもう分かるんですけど……、強盗ですか?」

「そうだと思うのだけど…」

「どうしたんですか?」

 作戦本部に沙由莉が現れた。涼子は沙由莉に事情を話すと。

「……、私が処理します」

 目つきが変わった沙由莉。沙由莉はシャッターが下ろされている、正面口に立った。




「あー! 最高だった!!」

 奥にいた二人の男が帰ってきた。奥でかなり銃声がしていたが数分で銃声は聞こえなくなり、そのちょっと後に銃声が聞こえた。

 多分、突入部隊と銃撃戦をしていたに違いない。よく見ると一人は先ほど連れて行かれていた一般男性だった。

 そして、奥から現れた一般男性は先ほど連れて行った男性に近づくと顔を掴み、そのまま引っ張った。

 ビリビリと音を立て、顔がはがれた。そこには、先ほど連れ去られていたはずの一般男性がいる。

 奥から現れた一般男性の顔が溶け、そこからは強盗犯は現れた。

「二重複製(ディアルトレース)で顔を……」

 二重複製ディアルトレース姿を対象に映すようにする能力。

 これを使えば、ある人物の姿を壁に映し、デコイを作ることが可能としている。

 無論、対象に自分の姿を映し、相手の姿を自分に映すことも出来る。

 銀行員が強盗犯に向かって言う。強盗犯は「正解」と言って、銀行員に近づき首に何かを巻いた。

「はぁーい。では、今から一時間後にその首についている爆弾がドッカーンと爆発しまーす。ちなみに私達はその爆破に耐えられるようにしてあるので、あなた達が死んでも気にしませぇーん」

 強盗犯はいきなり言い出す、強盗犯の言葉を聴いた彰吾含めた人質の人達。彰吾は覚悟を決めた。

 彰吾は強盗犯三人を相手しようと考えた。すると、隣にいた俊が彰吾の肩を叩く。

 どうやら俊も彰吾と同じ考えのうようで、つくづく気が合う彰吾と俊。

 彰吾と俊は三人がある程度意識がそれた瞬間二人で強盗犯を倒す計画。

 そんな計画をしている中で、周りは爆弾の話を聞いてから大騒ぎになっている。

「し、しにたくない!!」

「くるな!」

「娘がいるんです!お願いします! 出来るだけ遠くにいってください!!」

 と、自分の身が一番の状態で爆弾をつけられた男性に言う。それに対し男性は。

「俺だって死にたくない!! 誰かこれを……、これをはずしてくれ!!」

 周りはパニック状態におちていた。これは彰吾、俊にとって好都合。

 周りが騒いでくれればそれだけ、相手に視界と音を防いでくれる。

 そして、彰吾と俊が行動しようとした瞬間。

 物凄い音と同時にとシャッターが爆発した。シャッター前にいた強盗犯の一人が吹っ飛ばされたシャッターに直撃する。

 煙が上がる中、煙の中から何かが投擲された。投擲された物は地面に当たると同時にものすごい音と共に光った。

 投げ込まれたのは、フラッシュバンだ。

 フラッシュバンによって視角と聴覚を奪われた銀行内にいる人達。

 だが、彰吾と俊はシャッターが爆発した瞬間目を閉じていた為、フラッシュバンから逃れる事が出来た。

フラッシュバンから逃れた彰吾と俊は強盗犯に突っ込む。

 俊は視角と聴覚を一時的に麻痺している強盗犯を殴る、殴られた瞬間強盗犯が吹っ飛んだ。

 俊は能力者だ。能力は衝撃波バースト、衝撃波を放つことの出来る能力。

 衝撃波バーストを使えば、大ジャンプや一瞬で最高速度までする事が出来る。だが、俊はランクがCで低い為、相手を殴った時の衝撃を利用した衝撃波を放つことしか出来なかった。

 ランクが低ければ、本来の力をしっかり出すことが出来ない。本来なら、近づかなくとも衝撃波を放ち、そのまま相手を吹き飛ばせる。

 これがランクCの実力。

 彰吾は残り二人を自身の能力、重力グラヴィトンを使い、相手を地面に伏せさせる。

 重力グラヴィトン、重力操作を扱う能力。

 重力を自由に操作できる能力者。重力グラヴィトンを使えば、自身の周りだけを無重力空間を作ることができ、飛行可能とする事が出来る。

 飛行可能とする能力は、全ての能力の中で重力系能力と風系能力の二つしか使えない。

 しかし、彰吾もランクCである為、対象に重力の負荷を掛ける以外は出来なかった。

 三人を彰吾と俊で制圧すると、煙の中から沙由莉が出てきた。

「あれ? 倒されてる……あなた達がこの三人を?」

「えぇ、まあ……」

 沙由莉は彰吾に近づき、すぐに状況を理解すると彰吾に言う。それを彰吾は答えた。

 まさか、ここで東堂に会うとは……と思う彰吾。

 そして、沙由莉は気づいた。

「あれ? その制服は今日、行った学校の生徒さん?」

「そうです」

「なぜ、こんなところに?」

「いや、まぁ……友人が金を下ろすって事でいたら」

「巻き込まれたって事ですか、なるほどです」

「アハハ……東堂さんは何故ここに?」

「騒がしかったので、大ごとになる前に潰しておこうかと」

「なるほど……」

 沙由莉と何だかんだ、会話した彰吾。

 それにしても、騒がしかったから来てそれで潰すって、怖いなこの人と思った彰吾。

「あの、犯人グループは四人と聞いたのですが、もう一人は?」

「あぁ、それなら――」

「――うごくんじゃねぇぞ!!!!」

 シャッターに吹っ飛ばされた犯人が出てきた。

「ちくしょう! いってぇな、くそが!! そこの男ごと殺してやるよ!!!!」

 犯人は男性の首に巻いた爆弾の爆破ボタンを持っていた。

 それを見た沙由莉は片手を犯人に向けると、犯人が持っていた爆破ボタンが突然爆破した。

「あああああああああああああ!!!!」

 突然犯人の持っていたナイフが爆発するのを見る彰吾。

『これが、東堂沙由莉の……、爆弾師(ボマー)の能力か』

 犯人は断末魔を叫びながら片手を押さえている。犯人は片手を押さえながら沙由莉を見た。

「殺す、ころおおおおおす!!」

 犯人はポケットからナイフを出し、もう一つの片手でナイフを持って沙由莉に向かって走った。

 彰吾は犯人自体に重力負荷を掛ける。そして、沙由莉は犯人をゴミを見るような目で、

「ほんと、何であなたみたいのが生きて他が死ぬの?」

 と小さい声で言った。先ほどと同じ様に犯人の持っていたナイフがまた爆発した。

 先ほどよりも強めの爆破。爆破を受けた衝撃で倒れている犯人。

「あ、悪魔めぇ……」

 沙由莉は犯人がもう動けない様にする為に、手を振り払うと、犯人の真上に小さい爆風を起こした。

 爆風を直に受けた犯人はそのまま気絶する。沙由莉は彰吾のほうへ向く。

「重力負荷ありがとうございます。おかげで完璧にナイフだけを爆破できました」

「いや、俺がやらなくとも狙えたと俺は思うんだけど」

「どうでしょう? もしかしたら手ごと爆破させてたかもしれません」

 笑顔で言う沙由莉、彰吾は何も聞かず沙由莉を見ていた。

「あの、お名前宜しいでしょうか?」

「俺か? それともあっち?」

 彰吾は親指で後ろにいる俊に指した。それを見た沙由莉は笑う。

「面白いですね、フフフ。お二方です」

「俺は天月彰吾、後ろにいるのが宮下俊」

「天月さんに宮下さんですね。覚えました、今度お茶にでもお誘いさせて下さい。この事件のお礼として」

「ん、まぁ……、はい」

「フフ、では、また」

 そして、沙由莉は自身で吹っ飛ばしたシャッターから出て行った。

 沙由莉が出ると、その後に機動隊、ガーディアンが入ってきて犯人確保をする。

 全員の救助が終わり、彰吾と俊は事情聴取を行われた後に機動隊、ガーディアンから激励を頂いた。

 彰吾と俊は現場用意されていた椅子に座っていた。

「いや、まぁハチャメチャな一日だったな。彰吾」

「ああ、確かに」

「あーあ、妹は何処へのDVDとっくに来て、帰ったんだろうなー」

「だろうな、俺はこっから飯を作らないと……―――あああああ!!」

 突然彰吾が叫びながら立ち上がる。それに驚く俊。

「な、なんだよ」

「今日苦労して手に入れた卵が……」

 彰吾が指を指す、その方向にはボロボロになった銀行を指していた。

 彰吾はガーディアンの人に中に買い物袋があるか確認して貰うと、予想通りのボロボロ。卵が全てつぶれていた。

 それを見たガーディアン指揮官の涼子は「えっと、今から卵買ってきますけど大丈夫ですか?」といわれ何とか、卵を仕入れることに成功した。

 そして、事件は終わり彰吾と俊はガーディアンの人達に家まで送って貰い、帰宅した。

 自分の部屋の前に着き、鍵を出し扉をあける。

「ただいまー」

 誰かいるわけも無く、ただいまと言う。

 彰吾はさすがに疲れ、軽くシャワーを浴びてカップラーメンを食べてベットに横になった。

 ベットに横になるとすぐに睡魔に襲われ、そのまま眠った。




 第4女学院の学生寮、東堂沙由莉は自分の部屋にあるベランダに出ていた。

「天月彰吾に宮下俊か……、面白い人達 日程を早く決めて誘おうっと」

 沙由莉はつぶやきながら、部屋に戻りベランダのドアを閉めて寝た。




 つづく

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