第12話 『中央都市エンデ』

ゆっくりと体を休めた。調子はとても良い。


 寄り道してしまったので早々に村を出発しようと皆で出口へ向かう。


 いざ出ようとしたとき、筋肉さんを見かける。


「筋肉さーんお世話になりましたー!」


「俺はロイだー! またなー!」声を張り上げて、腕も大きく振ってる。



「いつの間に仲良くなったの?」やっぱり筋肉好きなの?とぼやく


 昨日言われたことを思い出しながら答える。

「えっと、『面白い奴だ、気に入った』と言われて名刺貰いました」


「用心棒…なるほどあの体力はそこから来てるんだね」裏を見たり、表を見たりしてる。


「さっさと行くぞ、思ったよりゆっくりしてたみたいだしな」


 荷物抱えて馬車に乗り込む。





 そしてアイナ村を出発する。


 変わった出会いだったけどまた会えるといいな。


 ソフィ、筋肉さん。








 それから3日、野獣に襲われることも無く、エンデに着きそうだ。



「これエンデじゃないの?」


 予定してたところじゃない場所へ出てきてしまい、戸惑う。


 だけど、この大きさは東方都市タイタンより大きい。それほどの大きさなら恐らくエンデ以外ないだろう。遠くに人もちらほら見かけるようになってきた。


 一応、確認のためにまた馬車の上に上り、見てみる。今回は視覚強化の【遠眼】スキルも使って人の流れ、人相、門の様子を一通り見る。変な人もいなさそうだし、検問もしっかりしてるように感じる。


「やっぱりエンデじゃないかな?」

 自分の居場所が分からなくなるのはとても不安になる。


 昔、森で遭難をしたことあるがあれは怖かった。暗くなって霧も出てきて動くに動けなくなって、獣の遠吠えか何かの地響きか闇夜に響き渡る。風で草木が擦れる音一つ一つですら不気味に思えた。何かが迫って来ている、見られている、襲われるんじゃないかで一晩中びくびくして気も休まらなかった。それからだろうか、仲間の事を特に大切に思うようになったのは、一人じゃ何もできないって思った。


 しばらくして門へ着き、検問も難なく通り抜ける。検問中に聞いたがやはりエンデで合ってたみたいだ、良かった。


 しかしこれは……


 でかい、これはまた広い。

 入り口の見取り図を見るに、基本のつくりはタイタンと同じ。タイタンは全体が平面なのに対してエンデは外壁部こそ平面だが、中央が立体だ。丘のようになっている。その中央部にはお城の様な建物が立っている。恐らく貴族やお偉いさんが住んでいるのだろう。


 北欧風の家が城を囲むように円状に並んでいて、途中途中に城方面へ向かう階段がある。


「なんだか別世界ね」レアが物珍しそうに見渡す。全く持ってその通りだと思う。路地一つ間違えたら違う世界へ行きそうだ。




 それから見取り図で宿を確認して荷物を置きに向かう。今回も二人部屋だ。白くてシックな部屋で、綺麗で素敵。



 荷物を置いて必要な物だけ持って早々に合流する。


 向かう場所は役所だ。見取り図では平面部の北側にあった。特に何かあるわけでもないのでそちらへ行く。歩いてる途中に警備兵のような人を数名見かける。


「ねえ、あの人って警備兵だよね?」タクに耳打ちをしてみる。


「恐らくな、だがタイタンで見た警備兵より何だか……小綺麗というか……」

 言わんとすることは分かる。雑兵というよりは指揮官というべきか、何だか雰囲気が大分違う、強そうな感じではあるのだが……。


「タイタンの警備兵のが強そう」 あぁぁこの子ぶっちゃけちゃったよ……。


「ほら余りそういうことは言わない方が……」 慌てて注意を促すマーくん、珍しくあたふたしてる。


「まあ、確かに」 それは思った。筋肉の付き方とか戦士のタクのより、狩人のわたしや魔術師のマーくん寄りの筋肉の付き方に近い感じはする。


 あまりちらちら見ない方がいいだろう、怪しまれる。特に疚しい事なんてないのだけども。



 役所らしき建物が見えてきた。来る道にあった住人が済んでる家をいくつもくっつけたような建物。窓がたくさんある。人もそこそこいるようだ、恐らくここが役所で間違いない。そのまま中へ入ると、天井からいくつか看板がつるされてるのが目に入った。総合相談口や保険、各種手続きなどがある。

 わたしたちのは各種手続きでいいのだろか、一先ずそちらへ向かう。


「あの、すいません賞金稼ぎについて何ですけど…」 窓口に居る中年の男性に話しかける。男性はわたしたち四人をざっと見てから、少し枯れ気味な声で答える。 「それなら兵士関連の方だね、中央に騎士団があるからそちらへ行くといいよ」 と簡単に道案内をしてくれた。


「マーくん役所って言ってなかったけ?」


「あぁそういってたんだけどなぁ……違う情報だったのかな?」


「まあいいさ、騎士団とやらはそう遠くない、この階段を昇るだけだ」


 さっきから思ってはいたが階段が多い。お年寄りとかは苦労しそうだ、と思っていると横をお年寄りがヒョイヒョイと通り抜けていく。


「昔から街に鍛えられているのかな」

 理由はどうあれ元気なことはいいことだ。ここに住んで老後も健康に!なんて馬鹿なことを考えてみた。悪くないかもしれない。一応都市だし何でもあるだろう、何とでもなりそう。



 長い階段を上りようやく城の門へと着く、ホント大きなお城だ、王様でも住んでいるのだろうか。


 門に居る警備兵にここまで来た旨を伝え通してもらう。


 案内された受付所にて賞金稼ぎになりたいと伝える。


 サイン等を済ませ色々な説明する時間まで間があるので待合室で待っててくれとのことだ。



 と、その前にアイナ村で貰ったカードについて聞いてみた。


「あの、このカードなんですが……」 受付人の表情が一変する。慌てた様子で奥へ行ってしまった。何なんだろうか……?


 受付人の姿が消えてから少し待つと、右から左から後ろから、警備兵がぞろぞろと集まってきて剣先や槍先を此方へ向けて威嚇してくる。


 「あの……」 と訳もわからず全身の力が抜けポカンとしてると、一人の警備兵が一歩前へ出てこう言い放つ。






「手を上げろ、抵抗するな、さもなくば命は無いと思え」



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