第04話 『商人との出会い』

村を出て、これからの方針が決まり、東方都市のタイタンへ向かう道中。



「歩いて10日って結構遠いよね」

 私の横を歩いてるお姉ちゃんがぼやく。


「10日も歩くとなると結構骨が入りそう。馬車とかあればいいのに」


「多く見積もってだ。荷物も少なくない上に、それに川沿いだし道も良くはない。休憩等を考えてこんなものだろう」


「ですね、慌てすぎも良くないからゆっくり行きましょう」


「はーい」






 ……お金はそこそこある、馬車なら5日も使えばたどり着くと思う、借りれる分のお金ははあると思うけど。



「衣服や防具がボロボロになってるし、買い替えないと」

 普通に冒険するだけならここまでボロボロにはならない、普通じゃない日だった。物凄い怖い思いをした。死ぬ思いだった。辛い思いをした。

 みんな疲弊しているはず、私もきちんと休みたいしお風呂に浸かりたい。


「だけどなるべく節約、だよね」


 お金を稼ぐ目途も経ってないし、落ち着くまでは節約するしかないがそれでも服は買ってしまう、不思議なのもだ。




 と川を越えた先で何かの音が聞こえる。川のせせらぎではない。



 これは……



「車輪の音? 何かが走る音…?」



「「 もしかして!? 」」

 目をキラキラ輝かせてお姉ちゃんと顔を見合わせる。



「「 ちょっと見てくる! 」」

 道を外れ、川へ入る。靴に水が入ってくる、気持ち悪いけど心地悪くはない。今はそんなのはお構いなしだ、急いで川を渡る。浅瀬で良かった、すぐに渡り切る。

 川を出て少し行くと馬車が通るような道が出来ていて、北に続いてる。その先を見ると馬車が走っていた。速度は出ていない、これならすぐに追いつけるだろう。



「おーい、止まってくださーい、出来れば乗せて下さーい!」



 徐々に馬車が速度を落とし、止まってくれた。馬車の手綱を握ってる人は50歳くらいの男性で柔和な顔つきをしてる。年齢の割に体系はがっしりしている。荷台見る限り農家の人だろう。



「すいません、少しよろしいですか?」


「はいはい、なにかな?」


「この馬車、荷物を見る限り商人ですよね? どちらまで行かれますか?」

 穀物がたくさん乗っている。米俵だろうか?結構重そうだ。


「東方都市タイタンの市場に売りに行くところだよ、ここから西に3kmくらいにある小さな村から来たんだ」


 小さな、村……。いえ、今は置いておく


「もし、よろしければ乗せて頂けないでしょうか? もちろん市場でのお手伝いとそこまでの護衛も致します」


「問題ないよ、護衛もしてくれるのかい? けど、女の子だけだけど大丈夫?」

 御尤も。女用心棒なんて殆ど居ないだろう、けれども。


「いえ、連れがいます、男性二人です」


「それは安心だ、ではお願いしようかな」

 ニコニコしてる、優しそうな笑顔だ。



「はい!ありがとうございます! 今連れてきますので少々お待ちください!」






   ――――――






 馬車の荷台に米と4人。


濡れた靴と靴下を乾かし、素足になった足をパタパタさせながら

「何とか足を確保しました!」


「って、セチアちゃんは何もしてなかったじゃない」


「ありがとう! レア!」

 むぎゅーと抱き付いてくる。



「あとな、お前らは人間を信用しすぎだ、彼からは悪意は感じないから良いが、これが盗賊とかだったらどうする? もう少し考えて行動しろ」

 次からは気を付けろ、とタクミはため息を付く。



「……にしても勝手に俺たちを使いやがって」


「それは、ごめん。けど交渉を円滑にするために、ね」


「そうだね、ただで乗せてもらう訳にもいかないし、僕らで良ければいくらでも使ってくれて構わないよ」


「それはそうだが、勝手にというのが気に食わん」

 ハイマーにまあまあと宥められてる。



「僕としてはタダでも良かったんだけどねぇ、次いでだったからさ」

 男性は手綱を握りながら振り向いて笑う。


「いえ、流石にそれは悪いです。急に頼んだのもありますし」

「何かあれば僕らに言ってください」


 ありがとう。と男は前を向く。




「それじゃ、さっそくで悪いんだけど」


 一呼吸置いて、行き先を指で示す。





「あのゴブリンを追い払ってくれるかな」


 ゴブリンが二体、道を塞いでこちらを威嚇してる。





 早速出番だ、乗せてもらう分働きますか。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る