元勇者の出戻り奮闘記
水戸 千代子
プロローグ
日の差さない暗雲立ちこめる荒野の崖の上に、巨大な廃城があった。
城の城壁は巨大なヒビが入り、所々爆撃にでもあったかのように粉砕され、今にも崩れそうな有り様だ。
そんな無惨な城の謁見の間には、片手に身の丈ほどある漆黒の大剣をもつ少女が一人、血に濡れた酷い様相で立っていた。
彼女の纏う漆黒のマントは破れ、煤だられとなり、軽量な装備を好むのか、質の良さそうな鎧は血にまみれ、所々ヒビが入っていた。
少女は一人、ぼんやりと無機質な瞳で一点を見つめている。
そこには眩いばかりに光輝く宝石のような珠が浮かんでいた。
《汝…何を願うか…?》
突然問いかけてきた、低く深みのあるその声に、少女は戸惑いなく口を開いた。
「私は────────」
《──承った》
答えた少女の声は聞こえない。
少女の声に短く返した、低く深みのある声が少女に答えると、血に濡れた謁見の間に強い旋風が巻き起こる。
《我は宝玉、汝の願いを叶えるものなり。汝が願い、しかと承った。》
宝玉と名乗った声がそう告げると、旋風とともに眩い光に包まれた。
そんな光に少女は闇色の瞳を思わず瞑る。
暫くして、旋風と光が収まると、底には物言わぬ石と化した宝玉と名乗った石だけが取り残されていた。
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