第十一章 闇黒の聖典 -3-
別に、難しいことをするわけじゃない。
元々、やったことがあることを転用するだけだ。
これを循環させて
だが、
そして、ただ魔力を多く取り入れても、
これは、クリングヴァル先生にも、言われていたことだ。
だから、すでに圧縮しておいた魔力を使って、丹田から取り入れた魔力を一気に圧縮する。
更に、重要なのは魔力の制御だ。
同じ間違いは、もうできない。
だから、すでに循環させている魔力を、強化から制御に切り替える。
一緒に流すことで、暴れ馬を巧く道筋に乗せてやるのだ。
これが、ぼくの新しい力。
「
発動と同時に、体が力で溢れ返る。
額の
黒装束がゆっくりと右拳を突き出してくるのを右手で絡めとり、左足を敵の足の後ろまで踏み込んで左肘を入れる。
倒れる黒装束に、
喉を貫かれ、絶命する黒装束。
すると、興奮して棍棒を振り回していた
ま、
両足が輝き始め、
周囲が止まっているように感じる中、フラガラッハを抜いて飛び上がり、
「おま……それを初めからやれよ!」
息も絶え絶えなイグナーツは、随分余裕がなかった。
結構、必死で耐えていたみたいだな。
「ごめんよ、ちょっと試したいことがあってさ」
「後でやれ!」
ごもっとも。
でも、あの黒装束レベルにどの程度通用するか確認したいじゃないか。
イグナーツに謝りつつ、上空に上がる。
眼下を見下ろすと、第三集団は、すでにハーフェズたちに駆逐されようとしていた。
第一集団に目を転じると、こっちはもう存在してなかった。
ショスハルデンフリートの丘から攻め下った
魔物はムンディゲン村に追い詰められており、大規模な魔法ではなく接近戦に移行したようであった。
建物を破壊してもまずいからな。
「アラナン! おれはもう行くぞ! 市内でも作戦遂行中のはずだからな」
イグナーツが下から怒鳴ってくる。
そういや、それで警備隊や冒険者を動かさなかったんだっけ。
「わかった! 有難う、助かったよ!」
礼を言うと、イグナーツは照れたように頭を掻きながら走っていった。
何だかんだいって、よく働いているなあ。
第二集団の
さぼっているアンヴァルと、サポートに回っているファリニシュ以外のみなは、駆け回りながら
学院の上位が揃っているだけに、
特にぼくが手出しをしなくても終わりそうだったが、逃げ出しそうな
こいつを実戦で使ったことなかったしな。
試し撃ちにちょうどいい。
狙いをつけ、神銃の引き金を絞る。
反動も音もなく、弾丸が発射される。
そして、
障壁を持たない
射程は百五十フィート(約四十五メートル)くらいが限界かな。
銃身が短いせいか、あまり長距離は得意じゃないみたいだ。
いきなり降下したので、ちょっと驚いているみたいだ。
「アラナン・ドゥリスコル──
「え、ああ、そっちですか。オニール学長に禁止されているんですよ。学院に関係することで使用しちゃいけないって。まずは、魔法の基本を鍛えろってことだと思いますが」
それで、ぼくはイグナーツの助力を得ながら、
「
ノートゥーン公の後継として、ノートゥーン伯の爵位を仮にでも名乗っていただけのことはある。
「元々エルは、ミズラヒ王国の神だった。だが、ミズラヒ王国がパールサ人のアールヤーン王国に滅ぼされたとき、エルは
へえ、
「かつて東方のステップを支配したカラーグの王家アセナ。カラーグがトクズ・オグズに滅亡させられたときに西方に逃げ、ハザール海の北でサビル人を支配した。彼らがサビル人にエルへの改宗を行ったことになっているが、実のところ、アセナ氏が信仰していたのは別な神だ。その名も、戦いと豊穣の女神アシュタルテー」
んん、聞いたことのない神だな。
「ルウム教会では大悪魔として扱っている神だ。かつては、セイレイスやイスタフルの辺りで大きな信仰を集めていたらしい。その女神を奉じている者たちこそ、
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