第17話:重複のヌメロウーノ
1
怖い。
触らないで。
冷たい手。
「そうか……。それで、
電話越しの
「あぁ」
メグは冷たく暗いリビングでひとり頷く。
「……か――――……。しばきてぇその
長い前髪をグシャリとかきあげながら、椎名は壁にドスッともたれかかった。
「ただ残念ながら、契の情報は少ないよ」
「なんでもいい」
「一昨年から施設を出たこと。化け物は健在だということ。それから、此処のプロジェクトの協力者だということ」
――プロジェクト。
そういえば、今日会ったあの男も計画がどうのと言っていた。
「なぁそのプロジェクト、かなり昔からある計画なのか?」
「あ? ……いや、そんなことはないだろ。でなきゃこんな即席で集めたメンバーでやらねぇよ」
「……そうだよな」
ため息。それは電話越しにも伝わる。
「マツリ寝たの?」
「おう。今はもう部屋で寝てる」
椎名は落ち着いたメグの声に、逆に違和感を覚えた。
「……なんか余裕だな。お前」
しかしメグは目を細めて数秒黙り込み、ポツリと呟いた。
「そんなもん、あるわけねぇだろ」
ぎゅうっと拳を握りしめる。手のひらには血の滲んだ
「だよなぁ……」
椎名はため息をついて、そんなメグを思い描いた。
通話を終えたメグは、静かにマツリの眠る部屋に入った。髪をほどかず、ベットに横たわる背中がぼんやり白い。寝息が順調にリズムを刻んでいて、眠りが深いのが分かる。
「…………」
メグは床に敷いてある自分用の布団を踏みつけ、ベッドに歩みより、マツリの顔を覗きこんだ。
寝顔は穏やかで、眠りに落ちた彼女に恐怖の感情は見られない。左手が大人しい。だけど首に滲む
「……余裕なんかあるわけねぇだろ」
メグはベッドに手をついてマツリに近づいた。触れることはせず、ただ眉間にしわを寄せたままベッドのばねを軋ませる。
「ごめんな」
メグは耳元で呟くと、静かにベットから離れた。そして自分の布団に入りこみ、マツリに背中をむけて眠りについた。
暗闇の中、静けさの中、マツリの閉じた
夢を見た。
怖い夢だった。
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