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マツリやメグだけでなく、
「……マツリも学校来ないままだし、メグもいないし」
体育館裏。いづみはリョウと一緒に昼ご飯を食べながら呟いた。
「おまけに噂の転校生も来なくなったみたいだよー」
リョウが
「一体どうなっちゃうんだろうねぇ。これから」
「……そうね」
いづみは顔をしかめたが、どうすることもできないという現実に
夏休みは、もう、目前。
「はぁ」
同刻。一方で、
――楓はあの場所に強制的に連れ帰られた。
それが、あの少女の願望の正反対の状態であることは分かっている。だが、椎名にはどうすることもできなかった。権限的にも、人間的にも。
「
キーボードをタップしてマツリの名前を検索する。珍しくかけた眼鏡に光がはねる。
「……やっぱ……ねぇな」
ない。
――学校に住所も連絡先も、なんの個人情報もない。
マツリが過去の事件や特殊な事情によって、保護プログラム下の生徒である可能性はあった。けれど、そう言った生徒でも、情報が一切ないということはない。厳重なセキュリティ下に置かれているだけで、実際には学校側で管理されているはずだ。
けれど、どこをどう探してもファイル自体が存在しなかった。国光の特権を乱用して探してもノーデータ。
おかしい。奇妙な話だ。ありえない話だ。
答はひとつだ。
マツリに『存在しないこと』が許されている。国光レベルの権力で保護されているのだ。
「大蕗。…………大蕗?」
ひっかかった。
どこかで聞いたことがあるような気がした。今更だが、
「……どこだ……?」
椎名が
プルルルルルル! プルルルル!
「!」
――なんだ、一応動くのかこの固定電話。
今まで一度も鳴ることがなかったので、驚いてしまった。
少し
「はい。……はい。なんだ……あなたですか」
それは、国光――自分を管理する組織からの電話だった。
「珍しいですね、電話してくるなんて。何かあっ……えっ!」
立ち上がる。
「楓が逃げた……ッ!?」
***
「……メグ……」
窓の外の
頭に確かに何かがひっかかり、肩を抱く。
――本当は、なんとなく思い出しかけている。何かを見ないふりしていることに、気づいている。
けれど、きちんと
「あれ……」
ぽつっと零れた。
「……なんでだろ」
それは、涙だった。
――思い出したくないのはなぜ?
あの落下の感覚を、もう、味わいたくない。
これから起こる大きな衝撃に、波を打つ。
そんなあの日を、覚えてる。
第9話 終
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