8月29日は 初めての意思疎通記念日
8月29日
取引先からの依頼でコイツを引き取って5日目。ドッグが言っていた通り、こちらの言っていることは、多少理解出来るだけの知能はありそうだ。利便上ではあるが名付けた名前を呼ぶと、ちらりと瞳でこちらを追ったり尻尾をふって反応くらいはしてくれる。
「おい、リンドウ」
「……」
「眼で追うなら返事をしろ返事を」
「……」
「ドックの野郎が言ってたぞ?
「…ゥア…ゥ…」
「はぁ、駄目だこりゃ…」
俺の記憶が正しければ、確かに
そんな俺にとって戦争の
「こいつ、お前の好みなのか?」
「…ッゥ…」
「つうか、お前の性別はなんだよ?オスか?それともメス?」
「…………ウゥ…」
「わからんなら、首を振れ首を」
「…ゥ?」
「あぁー…こう。」
「…」
言葉での意思疎通が出来ねぇならせめて動きで何とかならんものか…とふと思い悩みの種に直接尋ねれば、“なんのことだ?”とでも言いたげな表情を浮かべてやがる。まぁ‥こうなるわなっと予想してた訳で、えぇっと‥目ぇみながらだったか?とりあえず、『違うならこう…んで。正しいならこうだ。』と試しに首を縦横に振る。俺一人でそんな事をやっているのは、だいぶシュールな光景だが背に腹だ。意思疎通が出来なきゃこの先どうにもならん。教えられてる方はというと、とりあえず動きを真っ赤な瞳で追ってはいる…な。
「いいか。しゃべれねえならコレくらいしろ?」
「……ゥ」
「こういう時に振るんだよ。理解できたなら縦。出来ないなら横だ。」
「……ウ!」
「おぉ、やりゃできんじゃねぇか。偉いぞ。リュウタ」
「…?」
「あぁー愛称だ愛称。リンドウ、イコール、リュウタ。いいな?」
「……ゥ」
「よし、物分りがいいじゃねぇか。流石、
とりあえず、首を振って是非を問えるそして意思を読み取る…ということはこれから出来そうだ。のみこみも早いのかそれともまぐれなのか、一応は俺の質問に対して首を振り反応する。確か、上手く出来たら褒めるんだったか?とりあえず、頭でも撫でれば良いのか?
「褒めるっつってもなぁ‥」
「………」
「リュウタ、頭だぜ」
「…ウ」
「・・・あぁー…カシコイ キメラダナァーリュウタハ」
「…ウゥー」
「じゃあ、今日の飯は魚でいいな?」
「……ゥ゛ゥ゛~~~~~」
「んだよ、嫌かよ」
「…ウ!」
「……ハァ…。」
こりゃあコレで面倒そうだな…意思疎通が取れるというのは相手にとっても同じな様でこちらの都合の良く解釈できない様になってしまったみたいだ。新たな悩みの種が増えてしまった。魚食いてぇな。此処の所ずっと肉だ‥つうか
「わかったよ…今日も肉だ」
「……ゥゥア!」
「あぁー良かったな」
「……ウ!」
バタンバタンとソファの上を転げ回るその様を横目に溜息をつきながら、興奮し半人獣型にコンバートしたソイツの頭を再度撫でてやる。そうすると、以外にも大人しくなりグルグルと喉を鳴らしている。喜んでるのか嬉しいのかはわからんがとりあえず、暴れたら撫でてみよう。とまたひとつ新たな発見に喜びつつ、2人分の安くて大分量のレパートリーの少ない肉料理を考えるのであった。
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