R15笑うあさこ
星野フレム
あさこは笑う
カーテンを閉める。そのカーテンは真赤な色だ。あさこは赤が好きだ。それを見ているだけで、昨夜あったことが思い出される。昨夜、友人を招いたあさこは、盛大なパーティをした。友人の誕生日を祝ったのだった。その友人とは二人きりで、あさこにとってその友人は特別な人だった。同性でありながら恋心を持ったあさこは、その友人のワイングラスに睡眠薬を入れて眠らせた。その数分後、友人はちょっと眠らせて欲しいと言って眠る。
眠った友人の鞄から、携帯の音が鳴り響く。そのディスプレイには、友人の家族の名前が映し出されていた。あさこは、友人の声とよく似ていて。そして、友人の家庭環境なども全て把握していた。そして、友人の声であさこは、友人の母親と話し、そしてこう言った。
「今日、あさこの家に泊まるから、遅くなるよ」
電話口の友人の親は、「ああそうなの」と言って、安心してそのまま電話を切った。
「……」
あさこは、友人を寝かせたベッドに入り、友人の体を気が済むまで見ると、そのままその友人の体に食紅の液体を掛けた。綺麗に赤く染まった友人の体で、友人の人間魚拓のようなものをとる。しかし、思いの外、やはり真赤だったその一枚の布は、ただの真赤に染まっただけの布だった。
「……」
あさこは、友人の体を洗うため、バスルームに友人を運んだ。そして、丹念に洗い、元の姿へと戻した。
「あ」
初めてあさこは、友人の着替えがないことに気がついた。まだ友人は眠っている。あさこは、自分の着ている服を脱ぐと、それを友人に着せた。裸になったあさこは、笑顔でそのままワルツのCDを掛けて踊った。カーテンは閉めきっている。ワルツだけが流れていた。そして、友人への薬の効果が切れる前に。友人の着ていた服を買い、そのまま着せて、自分も自分の着ていた服を着る。そして、一時間後――
「あれ? 眠ってたんだ……あさこー?」
「ん?」
あさこは、友人の眠るベッドで友人の頭を触っていた。
「何?」
「熱があるのかなと思って」
「あー、大丈夫。お酒だよー」
「そうだね」
その友人が帰る頃、あさこの部屋には、真赤なカーテンが敷かれていた。あさこは、それを観て笑っていた。
「またおいで。千代」
あさこに手を振る友人に、ただ微笑んでいたのだった。
終わり
R15笑うあさこ 星野フレム @flemstory
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