雪とノコ

星野フレム

告白

 今日も夕飯だぁ。わーい、雪の夕飯だー。今日は、どんなのかなぁ? 雪って料理むっちゃ上手いもんね! 私じゃ勝てないのさぁ! さあ、雪ー雪ー愛しのマイ・ダーリンー今日のご飯は――

「何それ?」

「え? タケノコのパスタだけど」

「タケノコって何? ねぇ、雪頭どうかしたの?」

「真顔で言うな、このニート」

「うっ」

 そう。私、飯山ノコは、只今無職です。世間で言えばニートで御座います。でもさ、雪。タケノコとパスタってどうなの? 私ってそんなに小食家に見える? きっと雪は、調子が出ないんだ。そうだ! そういうことだ!

「絶対に食べろよ」

「何で!? 私なにかした!? 今日ちゃんと仕事探したよ!?」

「お前な。彼氏の食べ物が食べれんのか」

「いえ、すいません。発狂してました。食べます」

 私はモゴモゴとパスタを口に運んだ。あれ? 美味しいな……これ美味しいな! いけるよ!

「美味いだろ?」

「うん! タケノコの味がなんていうの? すごく自然だよね!」

「最近スーパーで売り出しててさ。旬の食べ物くらい食べて貰いたいと思って」

 雪はいい子だ! 私には雪がいい子すぎて勿体無いよ! でも誰にも渡さないぞ!

「それ食べたら、出かけるぞ」

「ふえ? 何処へ?」

「神社」

「えー」

「嫌ならパスタはお預け」

「行きます! 是非行かせて下さい!」

「宜しい」

 半ば軍師のような雪にいいくるまれた私は、外出の準備をする。雪はテキパキと用意して既に待っているが、服を選ぶのに三十分掛かって「うーん」となっていた。雪はじっと待っている。待っている。待っている?

「ノコ……?」

「ひゃい!」

 物凄い怒ってる! そりゃ一時間経ったもんね! そして、服を決めて私は雪と出かける。もう春だなぁ。あれから何年経っただろう? 雪と同居生活を始めて、もう何年だろう? 三年くらい? お互い社会人になったよね。

「まあ、私今ニートだけど」

「は?」

「あ、ごめんごめん」

「ノコは思ったこと直ぐ口にするからな」

「えへへ。ごめんごめん」

 雪は、神社の境内を指さした。

「ほら」

 通称桜神社。境内に桜の木をそのまま埋め込んで作ってある神社で、こういう所は珍しい。いつも雪と春になるとここに来る。そして、二人でお願いごとをする。後でどういうお願いごとか二人で言い合う。割りと楽しみなこと。

「……」

 雪がすごく真剣な顔をしている。なんだろう? 何願ってるのかな? ジーっと見る私。雪は、「何ぼーっと見てるんだよ」と言ってきたけど、あまりの真剣な雪の横顔に私はトキメキを感じてしまった。懐かしいな。いつもこうやって、キュンキュンできたらいいのにな。そうだ。これを願おう。ずっと雪とキュンキュンしてられますように……。

「よし、帰るか」

「帰ったら、言い合おうね!」

「嫌だ」

「え?」

「かなり真剣だったから、これは願うとかそんなじゃない」

 いきなりどうしたの? そんなに私のタケノコ拒否が嫌だったの? それとも待たせたから?

「なあ、ノコ」

「……ん?」

「俺達もう、一緒に暮らして、三年だよな」

「う……うん」

「考えたんだよ、今後の事」

 何だろう? 答えを聞くのが怖いなぁ。でも聞かなきゃ。私だって、雪の彼女だもん!

「結婚しよう」

「え?」

「だから、結婚だよ! 二度言わすなよ……折角いい雰囲気でカッコつけて言ったのに」

「あ、ごめん。じゃなくて、え? え? え!?」

「YESかNOか」

「い、YES」

「これからもずっと宜しくな! ノコ」

 うん。ずっと一緒だよ。お祖母ちゃんになっても、ずっとずっと一緒。嬉しいな。私は精一杯の笑顔で返事した。

「うん!」

 桜の舞う神社で、約束。もう! 雪のキザ! でも好きだな。そういう所。全部全部大好きだよ、雪!


おわり

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雪とノコ 星野フレム @flemstory

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