乗り遅れの女?
僕は
別に異世界に行った事はないし、魔法使いの友人がいる訳でもない。
周囲の仲間や家族も、皆普通の人間だ。
ある日の午後、僕は親友の鬼塚悠樹と町を歩いていた。
「暇だなあ」
悠樹が言う。僕も、
「そうだなあ。何か面白い事、ないかなあ」
と言った。その時だった。
「あの」
後ろから声をかけられた。
「はい?」
振り向くと、絶対同級生の女子にはいないと断言できるくらい可愛い子が立っていた。
セーラー服のお下げ髪。何か昭和な雰囲気を醸し出しているが、顔は超美少女だ。
「おおお!」
美少女マニアを自認する悠樹は、僕以上に驚いていた。
「姫神睦月さんですよね?」
「は、はい」
用があるのが僕とわかった瞬間、悠樹がボコッと僕の腹に右フック。
「グオオオ」
僕は苦しみながらも、彼女を見て、
「何でしょうか?」
「あの、これ」
その子が差し出したのは、ハート型の箱。リボンがかけられている。
これはもしや? でも今日はもう十六日だぞ。
「前から好きでした! 受け取って下さい!」
「???」
僕は危うく異世界に行ってしまいそうになった。
「はい!」
その子は僕の手に箱を渡すと、ダッと駆け出していなくなってしまった。
「誰だ、あの子?」
僕が言うと、悠樹が、
「何だ、知らないのか?」
「気味が悪いな」
僕は怖くなった。そして、
「悠樹、お前にあげるよ。欲しいんだろ?」
「いらねえって、そんなもの! お前が責任持って食え」
そういう会話をかわしたが、中身が何なのかはわかっていない。
「と、とにかく、開けてみろ、睦月」
「ああ」
僕は恐る恐るリボンを外し、包み紙を破った。
思わず唾を飲み込み、蓋に手をかける。
「お、俺は少し離れるから、ちょっと待て」
悠樹は非情な事を言って僕から遠ざかった。
「いいぞ、睦月。開けてみろ」
無責任な事を命じる悠樹。
もし、爆弾が爆発して死んだら、絶対化けて出てやるからな!
僕は震える手で蓋を取った。
……。
何も起こらない。
「うん?」
箱の中には、何かが書かれた紙が入っていた。
「何だ?」
僕はそれを取り出して声に出して読んだ。
「確定申告はお早めに」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます