第26話俺が川を見つけたならばっ!

「それにしてもクロノスさん。ドラゴンはまだここにはいないんですかね?」


 ロリコン疑惑の弁解を終えて、俺はクロノスさんに現状を聞く。索敵でも武術の才でも気配を感じない。


「ん、そうだな。今は巣穴にでも戻ってるのかもしれないな。だかまあ目撃証言もたくさんある。例え今はいなくてもそのうち来るだろう。だからみんなもテントの用意をしてくるのだ。」


「なるほど…じゃあまだしばらくは来そうにないんですね。」


 大討伐クエスト、正直さっさと終わると思ってたんだがな。ドラコンを見つけて殴って大団円、といきたかったんだけどな…


「クロノスさんはこれからどうするんですか?」


「そうだな…とりあえずどこかで私もテントを張るか、その辺を調査してドラゴンの痕跡でも探すよ。」


「そうですか…じゃあ俺はまた森の奥へ行きますね。また会いましょう、クロノスさん。」


 テントか…俺も持ってきておけば良かったよな…


「そうか、気をつけていけよ。ドラゴンが来るかも分からんからな。」


「はい、まあ来たところでどうにかしますよ。」


「ん…どうにか…する。」


『身体強化(フィジカルバースト)』と限界魔法を使えばなんとかなるだろ?


「実力に自信があるのだな。確かに、お前からは何かオーラのようなものを感じる気がする…今度手合わせを願いたいものだ。」


「あぁ、いいですね。また会えたら御願いします。その為にも早く終わらせましょう。」


「ああ、ではな。」


「はい。またですクロノスさん。」


「ん、また…」


 クロノスさんに別れを告げると俺はまた森の奥へ進んでいく。また新しい人と出会ったな。嬉しいことだ。異世界に来てから個性的な人に会うことが多い気がする。きてよかった。


「お前にも会えたしな…ティア。」


「ん…?どうした…の?」


「いやいや、なんでもないよ。あ!あそこにもスライム!殺す!」





「大分スライムを狩れたな。あとは世の中の女の子が救われることを願うのみだ…」


 しばらくスライムをサーチアンドデストロイを繰り返していた。たまに他のモンスターも出てくるが俺のヘイトはスライムにしか向いていない。


「スライムは…魔素から…うまれるから…ぜつめつしない…よ?」


 なん…だと…!?なれば俺が倒しても結局は意味がないのか…?


「どうしようもないじゃないか、そんなの。…それに魔素…?なんだそれ?」


 いや字面からして魔法に関する何かだとは思うけれど!


「ん…魔素…は…どこにでもある…それが…あるから…まほうが…使える」


「俺の世界にはそれがないから使えないのかな?」


「ん…わからない…」


 そりゃそうだな。わかったら驚きだ。


「ん?水の音だな…よし…いくぞティア。たぶん川だ。」


「ん…わかった。」


 今度は木々の向こうから水の流れる音が聞こえてきた。


「こっちだな…お!あったあった。」


 木々を通り抜けてるとやっぱり川があった。流れてる水はすごいきれいだ。穏やかな川で見ていて和む。


「まて、ティア。人がいる。見てくるわ…」


「ん…わかった…待ってる。」


 索敵に人が引っ掛かった。だが気配を感じない。索敵に引っ掛かっているのに気配を感じないということは気配を消しているということ。俺の武術の才でも感じれないということは…強いな…


「……」


 気配を殺して下流へ進んでいく…やっと気配を感じてきたが索敵にはもう50メートルくらいのところに反応がある。ここまで近づかないと分からないというのは初めてだ…


「ん?あれは…」


 あの緑の髪色をショートに揃えていて…あの小振りな胸は…!


「おーい!シエルー!」


「ッ!?誰っすか!?」


 シエルがこっちを見て目を見開いた。


「俺だよ、駿河さんだよ。お前もドラゴンを倒しに来たのか?」


「いやいやいや!?なに普通に話し掛けてきてるんすか!?自分今裸なんすけど!?」


 素っ裸のシエルがすごい目付きで睨み付けてきた。なにをそんなに叫んでいるんだ?


「そうだな、裸だな。良いからだしてるな~…」


 筋肉のつきかたが特に素晴らしい…軽く筋肉質なくびれもいい曲線美を作り上げている…


「なにじっくり見てんすか!?ぶっ殺すっすよ!?」


「おぉ!悪い!つい視線が勝手に…」


「向こう向いててくださいっす!!着替えるっすから!!」


「いてっ!」


 おもいっきり頬をビンタされた…痛い…心が痛い…





「まじ死んでくださいっす…駿河さん。」


「いやごめん、調子に乗りすぎた…」


 俺は今地べたに座り込んでシエルさんに叱られている。


「全く…変態の極みっすよ…」


「すまない、人の気配を感じて来てみれば小振りな胸が見えたからシエルだって思って…」


「判断するところが胸なんすか!?自分の胸が小さいからっすか!?やっぱり男は大きい方がいいんすか!?」


「そんなことはないぞ!!前も言ったが俺は巨乳も好きだが貧乳も好きなのだ!!両方大好きなんだ!!」


「貧乳って言うなっ!!」


「口癖を忘れるほどに怒ってらっしゃる!?」


 シエルには貧乳という言葉は禁句なようだ。やっぱりシエルをいじめるのは楽しいなぁ!

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